肝区域は立体的に配置され、画像上での識別には複数の解剖学的指標を組み合わせる必要があります。
肝臓の病変を画像で評価し、その位置を区域として示すことは、
- 画像による評価や経過観察
- 治療計画の検討
に関わります。
Couinaud分類では、肝臓をS1からS8までの8区域として扱います。
ここでは、CTなどの断層画像と対応させながら、肝区域の基本的な解剖をどの指標で区分し、どのように整理するか、図と画像の流れに沿って解説します。
順番に確認しましょう。
先に結論:肝区域(クイノー分類)の覚え方
- 肝臓はクイノー(Couinaud)分類でS1〜S8の8区域に分けます。S1は尾状葉で、そこから時計回り(正面から見て)にS2→S3→S4→S5→S6→S7→S8と番号がつきます
- 左右の境目=カントリー線(Cantlie line):胆嚢と下大静脈を結ぶ線で、ここに中肝静脈が走ります。右側が右葉(S5〜S8)、左側が左葉(S2〜S4)です
- 縦の境目は3本の肝静脈(右肝静脈:前区域S5/S8と後区域S6/S7の間、中肝静脈:左右の間、左肝静脈:左外側区域のS2とS3の間、頭側ではS4とS2の間)、上下の境目は門脈の左右の枝の高さ(上がS4a・S7・S8、下がS4b・S5・S6)です。左外側区域はS2が背側・頭側、S3が腹側・尾側です
- 肝鎌状間膜は肝臓を腹壁につなぐ膜で、その下の端に肝円索(胎児期の臍静脈の名残)があり、左葉の内側区域(S4)と外側区域(S2/S3)を見分ける目印になります
実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの腹部CTの正常解剖ツールで、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。全体の見方は腹部CTの解剖にまとめています。
肝臓のCT画像で区域をどう見る?
記事の内容を動画でも確認できます。
まず全体像をつかみたい場合は、こちらをご覧ください。
肝区域を理解する際は、肝静脈による垂直方向の区分と、門脈枝による上下方向の区分を分けて考えると整理しやすくなります。
最初に、胆嚢窩と下大静脈を指標として左右を確認します。
肝臓の右半肝と左半肝
図で胆嚢窩と下大静脈の位置関係を確認してください。

下大静脈を後方の指標、胆嚢窩を前方の指標として通る仮想線がCantlie線です。この線には中肝静脈が含まれ、右半肝と左半肝を分けます。

Cantlie線を基準に、
- 解剖学的な右側が右半肝
- 解剖学的な左側が左半肝
となります。
肝臓の区域を分ける指標は?
右半肝は、右肝静脈を境として、
- 前方の右前区域
- 後方の右後区域
に分けられます。
図で位置関係を確認しましょう。

右前区域と右後区域の境界を考える際は、右肝静脈を指標にします。

左半肝は、肝鎌状間膜〜肝円索の位置(臍裂)を境に、左内側区域(S4)と左外側区域(S2・S3)に分けます。肝円索はS3とS4bを分ける目印です(Sharma 2018)。

肝静脈が見える頭側の断面では、左肝静脈を境として、
- 右寄りが左内側区域(S4)
- 左寄りが左外側区域(S2)
となります。Couinaudの解剖では、左肝静脈は「左門脈裂」を走り、S2とS3・S4を分けます。左外側区域(S2・S3)と左内側区域(S4)という分け方は、Brisbane 2000の用語によるものです(Agostini 2020)。
続いて、肝静脈を指標にした区分を確認します。
図は次のとおりです。

- 左肝静脈(LHV:left hepatic vein)
- 中肝静脈(MHV:middle hepatic vein)
- 右肝静脈(RHV:right hepatic vein)
の位置関係を追うと、垂直方向の区域境界を把握しやすくなります。
肝静脈は、肝臓を左右方向に区分する指標です。
図では、それぞれの肝静脈の走行をたどってください。

右半肝では、
- 右肝静脈が右前区域と右後区域を分けます
。
同様に、
- 中肝静脈を含むCantlie線が右半肝と左半肝を分けます。
- 左肝静脈は、頭側ではS4とS2の間、左外側区域の中ではS2とS3の間を走ります。

ここまでが、肝静脈を主な指標として区域を左右方向に整理する方法です。
次に、「S4」「S7」のように番号で表すCouinaud分類を確認します。
この分類では、肝臓を8つの区域として扱います。
Couinaud分類(クイノー分類)
Couinaud分類では、肝区域をS1からS8までの番号で示します。
ここでも、左右方向の区域と上下方向の区域を分けて整理します。

図に示す対応は、
- 左内側区域がS4
- 左外側区域がS2、S3
- 右前区域がS5、S8
- 右後区域がS6、S7
です。
S4は、上方のS4aと下方のS4bに分けて示されることがあります。なお、8区域のCouinaud分類は病変の位置を伝える共通言語としての「簡略化」で、実際の門脈の2次分枝は平均約20本あり、区域の形には個人差があります。また、区域切除・亜区域切除などの定義は、Brisbane 2000を更新したTokyo 2020 terminologyで新たに加えられました。
肝区域S1(尾状葉)とは?
S1は尾状葉です。左右両側から血流を受け、静脈血が下大静脈へ直接流出する区域として説明されています。
肝区域S2とS3の違い・境界は?

左外側区域のS2とS3は、上下だけでなく前後にもずれて並びます。
- 背側・頭側がS2
- 腹側・尾側がS3
となります。横断像では図のように、後ろ(背側)がS2、前(腹側)がS3に見えます。
境界の考え方も確認しましょう。
Couinaudの解剖では、左肝静脈はS2とS3の間(左門脈裂)を走ります(Agostini 2020)。S2だけを切除する手術でも、S2とS3の境目で肝臓を切ると、切り口に左肝静脈が出てきます(Urade 2022)。
ただし、日本人の肝臓61例を調べた解剖の研究では、肝静脈が区域の境目をきれいに走らないものが23.4%あり、S2とS3への門脈枝がはっきり2本に分かれないものも23.0%ありました(Ishibashi 2001)。左肝静脈だけで決めず、門脈の臍部(umbilical portion)から出るS2への枝(P2)とS3への枝(P3)もたどって確かめましょう。
一方、左内側区域(S4)と左外側区域(S2・S3)の境目の目安は、肝鎌状間膜〜肝円索の位置(臍裂)です。
画像でも確認してみましょう。
門脈枝は、上区域と下区域を分ける水平面を把握するための指標です。
次の図では、S2、S3、S4へ向かう門脈枝と周囲の区域との対応に注目してください。

肝区域S5・S8とS6・S7の違い・境界は?
右半肝では、
右肝静脈を境として、
- 前方の右前区域がS5とS8
- 後方の右後区域がS6とS7
に対応します。
では、それぞれを上下に分ける指標は何でしょうか。
上下区域の境界は、門脈枝が走行する水平面を目安にします。
- 上区域がS7とS8
- 下区域がS5とS6
です。
下区域では、図のように、
- 前方がS5、後方がS6
となります。

上区域では、図のように、
- 前方がS8、後方がS7
となります。

右半肝は、下区域の前方から後方へS5、S6、続いて上区域の後方から前方へS7、S8とたどると、番号の配置を整理できます。

下区域では、前方から後方へS5→S6と進みます。

上区域では、後方から前方へS7→S8と進みます。
まとめ
Couinaud分類による肝区域と、画像上での基本的な見分け方を整理しました。
要点は、肝静脈を左右方向の区分、門脈枝を上下方向の区分の指標として捉えることです。右半肝と左半肝は、中肝静脈を含み胆嚢窩と下大静脈を結ぶCantlie線で分けます。
S2は背側・頭側、S3は腹側・尾側で、両者の間を左肝静脈が走ります。左内側区域(S4)と左外側区域(S2・S3)の境目は肝鎌状間膜〜肝円索です。右半肝では、下区域がS5・S6、上区域がS7・S8となります。
図とCT画像を往復しながら、肝静脈、門脈枝、下大静脈、胆嚢窩を順に確認してみてください。
腹部CTで肝臓を見る際の基本事項はこちらです。→腹部CTにおける肝臓の基本的見方、わかることまとめ
肝臓の区域をCTで見分けるときのよくある疑問(Q&A)
Q. CTで引いた肝区域の境界は正確ですか?
A. 肝静脈や門脈を目印にCT上で引く肝臓の区域境界は、あくまで目安です。肝臓の血管鋳型をCTで撮影し、実際の門脈の支配域と比べた研究では、肝臓の上端・下端に近い断面で平均約17%、左右の門脈枝に近い中央部の断面では平均約52%の面積が誤った亜区域に割り当てられていました(Fasel 1998)。区域の境目にある病変は「S5/S8境界付近」のように幅をもたせて伝えるのが安全です。
Q. 門脈の分かれ方には個人差がありますか?
A. 200例の造影CT(MDCT)では、典型的な門脈本幹の分岐は64.5%で、左枝・右前枝・右後枝に3分岐するものが9.5%、左枝と右前枝が共通幹をつくるものが23.5%でした(Atasoy 2006)。1384例の検討でも、門脈の変異・異常は27.4%にみられました(Koç 2007)。上下の区域を門脈で考えるときは、まず分岐の形を確認しましょう。
Q. 腹部エコー(超音波)でも同じ考え方で区域がわかりますか?
A. はい。目印はCTと同じで、肝静脈(右・中・左)で左右方向、門脈の枝で上下方向を分けます。エコーでは、右の肋骨弓の下からあてて3本の肝静脈が下大静脈に合流するところを出すと縦の境目が、門脈の右枝・左枝(臍部=umbilical portion)を追うと上下の境目やS2/S3/S4への枝がつかみやすくなります。胆嚢と下大静脈を結ぶ線(カントリー線)が左右の境目になる点も同じです。ただし、一断面で全体が見えるCTと違い、プローブを動かしながら血管をたどって立体的に組み立てる必要があります。
Q. 肝区域はなぜ8つなのですか?
A. 門脈鋳型25例の解析では、左右の門脈枝から出る枝は8本ではなく平均20本(9〜44本)でした。Couinaud分類の8区域は、それらの支配域をまとめた実用的な区分と考えられています(Fasel 2010)。
参考文献
- Germain T, Favelier S, Cercueil JP, et al. Liver segmentation: practical tips. Diagn Interv Imaging. 2014;95(11):1003-16. PubMed
- Strasberg SM. Nomenclature of hepatic anatomy and resections: a review of the Brisbane 2000 system. J Hepatobiliary Pancreat Surg. 2005;12(5):351-5. PubMed
- Wakabayashi G, Cherqui D, Geller DA, et al. The Tokyo 2020 terminology of liver anatomy and resections: Updates of the Brisbane 2000 system. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2022;29(1):6-15. PubMed
- Majno P, Mentha G, Toso C, et al. Anatomy of the liver: an outline with three levels of complexity–a further step towards tailored territorial liver resections. J Hepatol. 2014;60(3):654-62. PubMed
- Fasel JH, Selle D, Evertsz CJ, et al. Segmental anatomy of the liver: poor correlation with CT. Radiology. 1998;206(1):151-6. PubMed
- Atasoy C, Ozyürek E. Prevalence and types of main and right portal vein branching variations on MDCT. AJR Am J Roentgenol. 2006;187(3):676-81. PubMed
- Koç Z, Oğuzkurt L, Ulusan S. Portal vein variations: clinical implications and frequencies in routine abdominal multidetector CT. Diagn Interv Radiol. 2007;13(2):75-80. PubMed
- Fasel JH, Majno PE, Peitgen HO. Liver segments: an anatomical rationale for explaining inconsistencies with Couinaud’s eight-segment concept. Surg Radiol Anat. 2010;32(8):761-5. PubMed
- Agostini A, Borgheresi A, Floridi C, et al. The role of imaging in surgical planning for liver resection: what the radiologist need to know. Acta Biomed. 2020;91(8-S):18-26. PubMed
- Sharma M, Somani P, Rameshbabu CS, et al. Stepwise evaluation of liver sectors and liver segments by endoscopic ultrasound. World J Gastrointest Endosc. 2018;10(11):326-339. PubMed
- Urade T, Kido M, Kuramitsu K, et al. Standardization of laparoscopic anatomic liver resection of segment 2 by the Glissonean approach. Surg Endosc. 2022;36(11):8600-8606. PubMed
- Ishibashi Y, Sato TJ, Hirai I, et al. Ramification pattern and topographical relationship between the portal and hepatic veins in the left anatomical lobe of the human liver. Okajimas Folia Anat Jpn. 2001;78(2-3):75-82. PubMed
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医学部学生です。
編集、大変だと思いますが、ありがとうございます!
とてもわかり易くて、ありがたいです!
画像の勉強って中々独学だと難しくて。。本当にお世話になっております。
コメントありがとうございます。
是非動画を活用して覚えてみてください。
カントリー線の走行と重なるのは「中肝静脈」ではないでしょうか。図は正しいと思いますが、文章が「左肝静脈」になっています。
コメントありがとうございます。
誤植のご指摘ありがとうございます。修正しました。
いつも貴サイトで勉強させていただいております医師です。
「ここから下の図のように肝S2,3,4の門脈であるP2,3,4が分岐します。」
の下のCTに記載があるP2とP3は逆の可能性ありますでしょうか。腹側がP3で背側がP2になるのかなと思いました。
よろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。
誤植のご指摘ありがとうございます。修正しました。