浮腫性胆嚢壁肥厚(edematous wall thicking of the GB)とは?
・胆嚢壁は漿膜下層が最も結合組織が疎であり、浮腫が起こりやすい。
・内膜の肥厚ではなく、漿膜下の肥厚によるため、胆嚢炎とは異なるので注意。
・炎症がなくても、胆嚢壁が肥厚することがあるということを知っておく。
・機序としては静脈うっ血による浮腫。
(※胆嚢静脈は胆嚢床周囲の肝実質に還流するため、肝類洞圧が上昇→胆嚢静脈の鬱滞→漿膜下壁肥厚と成る。)
胆嚢壁が肥厚する機序
- 炎症による→急性胆嚢炎
- 静脈鬱滞による→漿膜下浮腫
・右心不全、低蛋白血症、急性肝炎、肝硬変などにより、胆嚢壁の浮腫性を認めることがある。
・胆嚢静脈は胆嚢床周囲では、肝実質内に直接流入する。
- 流入先の圧が上昇=肝類洞内圧が上昇→胆嚢静脈のうっ血
- アルブミン産生低下などで血漿膠質浸透圧が低下して、むくむ。
といったことが原因で生じる。
浮腫性胆嚢壁肥厚(漿膜下浮腫)の画像所見
・CTでは肥厚した部位は、壁の外で、水の吸収値を示す。胆嚢炎のように周囲に脂肪織濃度上昇や毛羽立ちは認められない。
・心不全や急性肝炎などによる場合は、肝内にperiportal collarも認められることがある。
▶症例 60歳代男性 右心不全による胆嚢漿膜下浮腫
動画で学ぶ右心不全による胆嚢漿膜下浮腫
急性胆嚢炎との鑑別は?
問題となるのが急性胆嚢炎との違いです。
急性胆嚢炎の場合は、
- 胆嚢頸部に結石が嵌頓する。
- 胆嚢内部に浸出液が溜まる。
- びまん性の腫大を認める。
といったことが多く、また漿膜下が厚くなることはあまりない。
これに対して、漿膜下浮腫は、
- 胆嚢はむしろ虚脱している。緊満感を欠く。
- 漿膜下の浮腫が著明。
- periportal collarを伴うことがある。
といった画像所見や、臨床所見から鑑別していく。
参考記事)periportal collar signの画像診断
質問させていただきます。
このような胆嚢壁の浮腫性肥厚はモリソン窩に限局した覆水と区別が付くのでしょうか?
胆嚢の漿膜がCT上ほとんど見えないので難しいと思いました。
よろしくお願い致します。
ご質問頂きありがとうございます。
モリソン窩に限局した覆水とは区別はつくと思いますが、特に腫大がある場合は、胆嚢炎との鑑別に悩むこともあります。
ご回答ありがとうございます。
もう少し勉強します!
症例は80代男性、CT画像はまさに上記画像に一致しています。が肝機能上昇、アルブミン3.7と低下、貧血ありです。胆石はあるのですが、胆嚢腫脹は認めません、急性胆嚢炎か浮腫性肥厚かどちらでしょうか。
教えていただけませんか
それだけでは何とも言えないですが、胆嚢腫脹を認めていないならば、肝機能障害に伴う浮腫性肥厚ではないでしょうか。