先に結論:ヘモクロマトーシスとヘモジデローシスの違い
- どちらも体に鉄がたまりすぎる状態(鉄過剰症)です。一般に、臓器に鉄がたまって肝硬変・糖尿病・心不全・皮膚の色素沈着などの障害を起こしたものをヘモクロマトーシス、鉄がたまっているだけで臓器障害がはっきりしないものをヘモジデローシスと呼び分けます
- 原因は、遺伝性(腸から鉄を吸収しすぎる)と、頻回の輸血・鉄剤の過量・溶血性貧血など(二次性)に分けられます。日本では輸血による二次性が多く、全国調査では鉄過剰症の93.1%が輸血後でした(Ikuta 2017)
- 画像では、単純CTで肝臓が白っぽく(CT値が高く)見え、MRIでは鉄のため肝臓が黒く(信号低下)なります。T1強調像でin-phaseのほうが黒くなる(脂肪肝とは逆)のがポイントで、脾臓・骨髄にもたまっていれば輸血など二次性を考えます
ヘモクロマトーシス(Hemochromatosis)
- 遺伝性疾患の鉄過剰症(腸粘膜からの鉄の過剰吸収)をヘモクロマトーシスとし、その他は二次性鉄過剰症とされる。
- 二次性鉄過剰症の原因は、頻回輸血、過剰な鉄剤投与、無効造血を伴う貧血(サラセミアなど)、血管内溶血など。
- 鉄過剰症は、多臓器(肝、脾、骨髄、膵、腎臓、心臓、関節、皮下、精巣、下垂体など)に鉄沈着を来す。
- いずれも肝硬変、糖尿病、皮膚色素沈着、心不全の原因となる。
- 鑑別:無セルロプラスミン血症など
ヘモクロマトーシスとヘモジデローシスの違い(比較表)
| 遺伝性ヘモクロマトーシス | 輸血などによる二次性(ヘモジデローシス) | |
| 原因 | 腸からの鉄の吸収が増える | 頻回の輸血、鉄剤の過量など |
| 鉄がたまる場所 | 主に肝臓の実質(肝細胞) | 肝臓に加えて脾臓・骨髄 |
| MRIでの脾臓 | 信号が保たれることが多い | 脾臓も黒くなる(信号低下) |
- 輸血による鉄過剰症では脾臓が低信号になる一方、遺伝性に似たパターンでは脾臓は正常信号でした(Yoon 1994)。
- そのため、「肝臓だけ黒い→遺伝性」「肝臓と脾臓・骨髄が黒い→輸血など二次性」が読影の目安になります。
ヘモクロマトーシスの診断の進め方(診断基準)
- 欧州肝臓学会(EASL)の指針では、HFE遺伝子のp.Cys282Tyrホモ接合の人で、トランスフェリン飽和度(TSAT)と血清フェリチンが高い(女性:TSAT 45%超かつフェリチン200μg/L超、男性と閉経後女性:TSAT 50%超かつフェリチン300μg/L超)ときにヘモクロマトーシスと診断できます(EASL 2022)。
- それ以外の遺伝子型では、MRIか肝生検で肝臓の鉄過剰を確かめます(EASL 2022)。
ヘモクロマトーシスの画像所見
- 単純CTで肝臓CT値の上昇(肝臓が白っぽく見える)。
- MRIではT2WI(T2*WI)の肝臓の信号低下。鉄沈着の分布は原発性(遺伝性)と二次性で異なるため、多くの例でMRIで両者を区別でき、MRIでは肝鉄濃度を非侵襲的に推定して生検を減らすこともできます。
- 鉄沈着は脂肪と逆でout of phaseからin phaseにかけて信号低下を認める。肝鉄濃度の定量には、肝臓と筋肉の信号強度比法、R2緩和時間測定法、R2*緩和時間測定法などがあり、かつての基準だった肝生検に代わって、MRIが鉄沈着の検出・重症度判定・治療効果の評価に広く使われている。信号強度比法は簡便だが、基準にする筋肉が正常であることを前提としている。
- 原発性と二次性では鉄の沈着分布が異なり、多くの例で画像により区別できる。
- 下垂体にも鉄が沈着し、輸血による鉄過剰症では下垂体の鉄沈着と萎縮が性腺機能低下症の予測因子でした(Noetzli 2012)。
症例 60歳代 男性 ヘモクロマトーシスでフォロー

Out of phaseからIn phaseにかけて、肝臓の低信号がびまん性に増強している(全体的に黒くなっている)。肝臓にびまん性の鉄の沈着を示唆する所見であり、ヘモクロマトーシスに矛盾しない所見です。
(脂肪肝の場合はIn phaseからOut of phaseにかけて信号低下を来す。)
よくある疑問:肝ヘモジデローシスとは?
肝臓に鉄(ヘモジデリン)がたまった状態で、輸血などによる二次性に多く見られます。MRIで肝臓が黒くなり、脾臓・骨髄も黒ければ二次性を考えます。
※皮膚の色の変化やフェリチン高値などが気になる場合は、医療機関に相談してください。
関連記事:ヘモジデリンとは?脳表ヘモジデリン沈着症(superficial siderosis)の症状・原因とMRI画像
参考文献
- Queiroz-Andrade M, Blasbalg R, Ortega CD, et al. MR imaging findings of iron overload. Radiographics. 2009;29(6):1575-89. PubMed
- Labranche R, Gilbert G, Cerny M, et al. Liver Iron Quantification with MR Imaging: A Primer for Radiologists. Radiographics. 2018;38(2):392-412. PubMed
- Siegelman ES, Mitchell DG, Semelka RC. Abdominal iron deposition: metabolism, MR findings, and clinical importance. Radiology. 1996;199(1):13-22. PubMed
- Ikuta K, Hatayama M, Addo L, et al. Iron overload patients with unknown etiology from national survey in Japan. Int J Hematol. 2017;105(3):353-360. PubMed
- European Association for the Study of the Liver. EASL Clinical Practice Guidelines on haemochromatosis. J Hepatol. 2022;77(2):479-502. PubMed
- Yoon DY, Choi BI, Han JK, et al. MR findings of secondary hemochromatosis: transfusional vs erythropoietic. J Comput Assist Tomogr. 1994;18(3):416-9. PubMed
- Noetzli LJ, Panigrahy A, Mittelman SD, et al. Pituitary iron and volume predict hypogonadism in transfusional iron overload. Am J Hematol. 2012;87(2):167-71. PubMed
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