健診のエコーで「肝血管腫」と言われました。がんではないですか?
肝血管腫は血管が集まってできた良性のかたまりで、肝臓の良性の腫瘤では一番多いものです。典型的なものなら治療はいりませんよ。

先に結論:肝血管腫とは

  • 細い血管が集まってできた、肝臓の良性のかたまり。肝臓の良性腫瘤で最も多いものです
  • 中年以降の女性に多く、多くは5cm以下・症状なしで、健診のエコーやCTで偶然見つかります
  • がんになることはなく、ふつうは治療不要。
  • エコーだけで判断しにくいときは、造影CT・MRIの染まり方(ふちから少しずつ染まる)で、肝がんや転移と見分けます
  • とても大きい・痛みがある・急に大きくなる場合は、専門医に相談します

肝海綿状血管腫(cavernous hemangioma)

  • 肝の良性腫瘤性病変の中で最多。
  • 中年以降の女性に多い。
  • 健診の腹部超音波検査やCTで偶然発見されることが多い。
  • 無症状で臨床的に問題となることはない。
  • ただし、サイズが大きい巨大血管腫の場合、新旧の血栓形成により血小板が過剰に消費されてしまい、血小板減少や出血傾向などのDIC症状を伴うことがある。この場合は治療の対象となる。
  • 経過でサイズが増大したり、縮小することがある。

肝血管腫のCT、MRI画像所見

  • 典型的には、通常5cm以下の単発性腫瘤として発見される。
  • 典型的には、ダイナミックCTやMRIにおいて、早期相で点状の強い増強(globular enhancement)が見られ、辺縁から造影され、造影効果は徐々に中心部に広がっていき(progressive centripetal fill-in)、平衡相から遅延相でも遷延する造影効果(prolonged enhancement)を認める。
  • MRIではT1強調像低信号、T2強調像では高信号となり、嚢胞と類似した画像。拡散強調像では高信号を呈する。

海綿状血管腫(cavernous hemangioma)の画像診断における造影増強パターン

1. 典型的パターン

以下の3つは、海綿状血管腫として最も一般的に認められる増強パターン。

  • 辺縁の結節状増強と完全な内部濃染(Peripheral globular enhancement with complete fill-in)
  • 辺縁の結節状増強と不完全または不均一な内部濃染(Peripheral globular enhancement with incomplete or heterogeneous fill-in)
  • 完全で急速かつ持続的な増強(染まりが早い)(Complete rapid and persistent enhancement (high flow))

2. やや非典型的パターン

典型例からは外れるものの、海綿状血管腫で観察される増強パターン。

  • 遠心性の増強パターン(Centrifugal enhancement pattern)
  • 染まりが遅い(Slow-flow)

3. 非典型的パターン

  • 硬化性血管腫(Sclerosed hemangioma)

肝転移や胆管癌など、他の悪性腫瘍との鑑別診断が必要となることがある。線維化を反映してT2WIで高信号になりにくいので鑑別が難しいことがある。

症例 30歳代男性

CTにおいて動脈優位相で辺縁から造影効果を認め、平衡相ではほぼ均一(一部造影効果を認めていない部位あり)に造影されています。

MRIではT2WIで高信号、T1WIで低信号、DWIで高信号を示し、造影パターンやMRIの信号パターンはいずれも典型的な肝血管腫の所見に合致します。

動画でチェックする。

海綿状血管腫(非典型例)

  • 小さく、早期濃染の強い(全体が濃染される)ものもあり、これらはAP-shuntを伴うことがある。(染まりの早い血管腫。早期濃染→肝細胞相だけではなく、平衡相でも抜けることがあるので注意。pseudo washout sign。(Kyung Won Doo,et al,AJR 2009)

症例 70歳代男性 肝血管腫(AP-shuntを伴う)

hepatic-hemangioma-with-AP-shunt-CT-findings

肝臓ドーム下S8に周囲に造影効果を伴い、動脈相にて著明に造影される結節あり。
AP-shuntを伴う血管腫を疑う所見です。

症例 60歳代男性 肝血管腫(AP-shuntを伴う)

hemangioma

肝臓S4に周囲に淡い造影効果を呈し、著明に造影される腫瘤あり。

AP-shuntを伴う肝血管腫を疑う所見です。

動画でチェックする。

 

  • 平衡相で初めてdot状の染まりを呈する染まりの遅い血管腫もある。この場合、乏血性の腫瘍(転移など)との鑑別が問題となるが、T2WIで血管腫の場合は高信号となる点で鑑別可能。
  • 腫瘍の近くに脂肪肝の取り残しが見られる場合があり、悪性腫瘍と紛らわしいことがある。
  • 肝表の陥凹を認めることがある。
  • 早期の濃染が腫瘍の中心に出現するものがある。
  • 内腔が血栓化し、染まりの悪いものもある。
  • その血栓が石灰化していることもある。
  • 妊娠や出産を契機に大きくなるものがある。

EOB-MRIにおける血管腫の注意点

①サイズが小さく動脈相で全体的に濃染される血管腫は、遅延相で肝実質よりも低信号となり、HCCと紛らわしいことがある。→これは、EOB-MRIではダイナミック撮影の平衡相に相当する遅延相で正常肝細胞相へすでに造影剤の取り込みが始まっており、相対的に背景肝が造影され、血管腫部分が低信号として描出されるためと考えられている。このような高流速血管腫は、T2強調像での明瞭な高信号、動脈相優位の濃染、サブトラクション像で等〜軽度高信号を示すことから診断できるとされています。

②早期相で血管腫の辺縁にわずかな点状の造影効果(bright dot signとも呼ばれる)が細胞外液性造影剤と比較して不明瞭であることがある。→これはEOBでは細胞外液性造影剤と比較してGd含有量が少ないためである。Gd-EOB-DTPA造影3T MRIの検討では、血管腫の91%が肝細胞相で低信号を示し、肝細胞相だけでの血管腫の診断は感度76%・特異度81%にとどまった。ダイナミック相を合わせると感度97%・特異度88%に向上したため、肝細胞相の低信号だけで転移と判断せず、T2強調像やダイナミック相の染まり方と合わせて評価する。

▶ ほかの所見も調べる:健診・人間ドックの画像検査で言われやすい所見一覧

参考文献

  1. Vilgrain V, Boulos L, Vullierme MP, et al. Imaging of atypical hemangiomas of the liver with pathologic correlation. Radiographics. 2000;20(2):379-397. PubMed
  2. Doo KW, Lee CH, Choi JW, et al. “Pseudo washout” sign in high-flow hepatic hemangioma on gadoxetic acid contrast-enhanced MRI mimicking hypervascular tumor. AJR Am J Roentgenol. 2009;193(6):W490-496. PubMed
  3. European Association for the Study of the Liver (EASL). EASL Clinical Practice Guidelines on the management of benign liver tumours. J Hepatol. 2016;65(2):386-98. PubMed
  4. Goshima S, Kanematsu M, Watanabe H, et al. Hepatic hemangioma and metastasis: differentiation with gadoxetate disodium-enhanced 3-T MRI. AJR Am J Roentgenol. 2010;195(4):941-6. PubMed

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