肝海綿状血管腫(cavernous hemangioma)
- 肝の良性腫瘤性病変の中で最多。
- 中年以降の女性に多い。
- 健診の腹部超音波検査やCTで偶然発見されることが多い。
- 無症状で臨床的に問題となることはない。
- ただし、サイズが大きい巨大血管腫の場合、新旧の血栓形成により血小板が過剰に消費されてしまい、血小板減少や出血傾向などのDIC症状を伴うことがある。この場合は治療の対象となる。
肝血管腫のCT、MRI画像所見
- 通常5cm以下の単発性腫瘤として発見される。
- ダイナミックにおいて辺縁から造影され、造影効果は徐々に中心部に広がっていき(progressive centripetal fill-in)、平衡相から遅延相でも遷延する造影効果(prolonged enhancement)を認める。
- T1強調像およびT2強調像では嚢胞と類似した画像。拡散強調像では高信号を呈する。
典型的な肝血管腫(30歳代男性例)
海綿状血管腫(非典型例)
- 小さく、早期濃染の強い(全体が濃染される)ものもあり、これらはAP-shuntを伴うことがある。(染まりの早い血管腫。早期濃染→肝細胞相だけではなく、平衡相でも抜けることがあるので注意。peudo washout sign。(Kyung Won Doo,et al,AJR 2009)
症例 70歳代男性 肝血管腫(AP-shuntを伴う)
肝臓ドーム下S8に周囲に造影効果を伴い、動脈相にて著明に造影される結節あり。
AP-shuntを伴う血管腫を疑う所見です。
症例 60歳代男性 肝血管腫(AP-shuntを伴う)
肝臓S4に周囲に淡い造影効果を呈し、著明に造影される腫瘤あり。
AP-shuntを伴う肝血管腫を疑う所見です。
動画でチェックする。
- 平衡相で初めてdot状の染まりを呈する染まりの遅い血管腫もある。この場合、乏血性の腫瘍(転移など)との鑑別が問題となるが、T2WIで血管腫の場合は高信号となる点で鑑別可能。
- 腫瘍の近くに脂肪肝の取り残しが見られる場合があり、悪性腫瘍と紛らわしいことがある。
- 肝表の陥凹を認めることがある。
- 早期の濃染が腫瘍の中心に出現するものがある。
- 内腔が血栓化し、染まりの悪いものもある。
- その血栓が石灰化していることもある。
- 妊娠や出産を契機に大きくなるものがある。
EOB-MRIにおける血管腫の注意点
①サイズが小さく動脈相で全体的に濃染される血管腫は、遅延相で肝実質よりも低信号となり、HCCと紛らわしいことがある。→これは、EOB-MRIではダイナミック撮影の平衡相に相当する遅延相で正常肝細胞相へすでに造影剤の取り込みが始まっており、相対的に背景肝が造影され、血管腫部分が低信号として描出されるためと考えられている。
②早期相で血管腫の辺縁にわずかな点状の造影効果(bright dot signとも呼ばれる)が細胞外液性造影剤と比較して不明瞭であることがある。→これはEOBでは細胞外液性造影剤と比較してGd含有量が少ないためである。
海綿じょうしょう血管腫でAPシャントが頭に出来ると脳そくせんの原因となることがあるのでしょうか。