陳旧性心筋梗塞は、多くは胸部単純CT検査で偶発的に見つかることが多く、壁菲薄化や脂肪変性、石灰化といった所見が特徴的です。
造影CTでは持続性造影欠損や心室瘤形成など、瘢痕範囲の評価が可能となります。
今回は陳旧性心筋梗塞のCT画像所見についてまとめました。
先に結論:陳旧性心筋梗塞とは・CTでわかること
- 陳旧性(ちんきゅうせい)とは「時間がたった・古い」という意味で、陳旧性心筋梗塞は発症から時間がたち(一般に1か月以上)、傷んだ心筋が瘢痕(きずあと)に置きかわった状態です
- CTでは、梗塞を起こした冠動脈の領域に一致して心筋の壁が薄くなる、脂肪に置きかわる(低吸収)、石灰化、心室瘤(壁が外にふくらむ)が見られ、ほかの目的の胸部CTで偶然見つかることもあります
- 造影CTでは、早期相で瘢痕部が造影不良(黒っぽい)、遅延相では逆に遅れて白く染まる(遅延造影)ことで範囲を評価できます。心電図・心エコー・心臓MRIとあわせて診断します
陳旧性心筋梗塞の単純CTで認められる所見
- 心筋壁菲薄化: 冠動脈支配領域に沿って心筋壁が菲薄化し、健常心筋とのコントラストで明瞭に描出される。
- 脂肪変性(低吸収域): 瘢痕部が心筋より低い吸収値(マイナスのCT値=脂肪濃度)を示し、脂肪組織への置換を示唆する。64列CTの検討では、左室心筋内の脂肪は心筋梗塞の既往例の62%にみられ(対照群3%)、そのほぼ全例が責任冠動脈の支配域、94%が心内膜下に位置していました。発症から3年以上の例では89%に脂肪がみられた一方、10か月未満の例ではみられず、脂肪変性は時間の経った梗塞を示す所見です。
- 石灰化: 長期経過例では瘢痕部に局所的または層状の高吸収域が認められる。
- 心室瘤形成: 壁菲薄化部位が外側へ膨隆し、無収縮または逆行性運動を伴う局所的な逸脱像を呈する。
症例 40歳代男性 心筋梗塞でPCI後

心臓の心室中隔から左室壁に沿って脂肪濃度を認めています。

冠動脈を見ると、前下行枝および回旋枝にステントが留置されていることがわかります。
このような心筋の脂肪変性は、陳旧性心筋梗塞後や心筋梗塞に対する血行再建術後に見られることが報告されています。
陳旧性心筋梗塞の造影CTで認められる所見
- 早期相(冠動脈相)における持続性造影欠損: 早期相で瘢痕部が周囲心筋より低吸収(造影不良)に見える。
- 遅延相での遅延造影: 造影剤注入後5~10分で撮影した遅延相では、瘢痕部に造影剤がとどまり、周囲心筋より高吸収に染まる(MRIの遅延造影と同じ考え方。デュアルエナジーCTのヨードマップで見やすくなる)。
- 心内膜輪郭の陥凹: 瘢痕化に伴う壁菲薄化部で心内膜側が局所的にへこむ。
- 石灰化の強調描出: 造影によって周囲組織との差が強調され、瘢痕部の石灰化がより明瞭となる。
急性心筋梗塞との画像上の相違点
- 壁の厚さ: 急性期も遅延相で染まることがあるが、急性期は壁の厚さが保たれ(むくみで厚くなることも)、陳旧性では壁が薄くなる。
- 心筋浮腫の有無: 急性期は心筋浮腫に伴う水分貯留で低吸収域が広範囲にみられることがあるが、陳旧性では浮腫は消失し、むしろ脂肪変性や石灰化が主体となる。
- 微小血管閉塞(MVO): 急性期には早期相で中心部に微小血管閉塞を反映した中心性の低吸収域が周囲の増強域と対比されるが、陳旧性では瘢痕部全体が均一に低吸収となる。
- 壁運動異常: 急性期では虚血領域で収縮低下や壁運動不全がみられるが、一部は時間経過で改善する場合がある。陳旧性では瘢痕化部の運動は永久に消失し、心室瘤形成を伴うことがある。
- 石灰化の有無: 急性期では石灰化は認められないが、陳旧性では長期経過に伴う石灰化が特徴的である。
参考文献・出典
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