胆管内ガス(pneumobilia)を見たらまず確認すべきこと

肝内胆管に沿って分岐状に空気が分布している所見は、pneumobilia(胆管内ガス)を示唆します。これは病的所見のこともあれば、手術や処置後に生理的にみられることもあります。

まず以下のような既往歴・手術歴を確認することが重要です:

  • 胆管空腸吻合後
  • 乳頭切開(EST)後
  • 胆嚢摘出(胆摘)後

これらの術後では、乳頭括約筋やバリア機構が破壊されているため、腸管ガスが胆道に逆流しやすくなっています。

また、左右の肝葉に均等にガスが分布しているかもチェックポイントとなります。(していないこともあります。)

手術歴がない場合は瘻孔形成に注意

手術歴や処置歴がない場合には、胆道-消化管瘻の存在を疑います。特に慢性胆嚢炎に伴う十二指腸穿通や、胆石性イレウスのような背景がないか確認が必要です。

CTやMRIでは、胆嚢壁の連続性や周囲の腸管との接触、瘻孔の存在を丁寧に検索する必要があります。

pneumobiliaが「見えなくなった」ときも要注意

pneumobilia(胆管内ガス)は、通常であれば術後や処置後にしばらく残存し、胆管空腸吻合後や乳頭切開後には慢性的に見られることもあります。しかし、これまで定常的に観察されていたpneumobiliaが突如として消失した場合、それは単なる自然消退とは限りません。

特に注意すべきは、吻合部や胆道ステントの閉塞、あるいは胆道感染による内圧上昇が原因で、腸管ガスの流入が遮断された状態です。このようなとき、pneumobiliaが「消えた」という事実そのものが、通過障害や感染悪化のサインである可能性があります。

実際の臨床報告でも、pneumobiliaの消失がステントの機能不全や膿瘍形成に先行して認められたケースがあり、画像所見の経時変化を注意深く観察することの重要性が示唆されています[1]

「かつて存在したairが見えなくなったから安心」と判断してしまうと、通過障害や重症感染の初期所見を見逃してしまうリスクがあります。“なぜpneumobiliaが見えなくなったのか”という視点で、背景病態や臨床症状と照らし合わせて評価することが不可欠です。

このように、pneumobiliaは「ある・ない」だけでなく、「どう変化したか」が診断と治療の鍵となる動的所見であることを忘れてはいけません。

pneumobiliaと門脈内ガスの鑑別

肝の中心部に分布 → pneumobilia辺縁部に分布 → 門脈ガス(portal venous gas)が基本ですが、末梢まで広がるpneumobiliaもあるため、分布の中心とairの連続性を丁寧に評価する必要があります。

Radiopaediaでもこの鑑別についてmnemonicが紹介されています[2]

症例① 70歳代男性 胆管癌術後(胆管内ガス(pneumobilia))

pneumobilia

肝の中枢に連続するガスを認めており、pneumobiliaを疑う所見です。

胆管内ガス(pneumobilia)でも以下の症例のように肝のかなり末梢まで認められることもありますので、末梢=門脈ガスと判断しないようにしましょう。

症例② 80歳代男性 乳頭切開術の既往あり。

pneumobilia1

この症例も肝門部付近からairを認めておりpneumobiliaですが、末梢まで連続しています。

pneumobiliaであっても肝の末梢もしくはそれ近くまでairを認めることはありますので、末梢にairを認めたら即門脈内ガスと判断しないように注意が必要です。

症例③ 70歳代男性 胆摘後

pneumobilia2

こちらの症例もかなり末梢までairを認めており、一見門脈内ガスと思いがちですが、中枢に追うと肝門部胆管と連続性を確認できた症例です。これも門脈内ガスではなくpneumobiliaであると判断できます。

まとめ

  • 胆管内ガスを見たら、まず手術歴・処置歴を確認。
  • 手術歴がなければ、瘻孔形成や感染によるガス産生を考える。
  • 過去に見えていたpneumobiliaが消失した場合にも注意。
  • 門脈内ガスとの鑑別では、分布の中心や連続性を重視する。

関連記事:門脈内ガスと胆管内ガスの鑑別はこちら。

 

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