腹部CTで肝内に分岐状のガスを認めた場合、まず考えるべき所見の一つが胆管内ガス(pneumobilia)です。

胆管内ガスとは、胆道内に空気が存在している状態を指します。

胆管内ガスは、胆管空腸吻合後や乳頭切開後など、術後・処置後に生理的あるいは慢性的に見られることがあります。一方で、手術歴や処置歴がない場合には、胆道消化管瘻、感染、胆管炎、胆石イレウスなどの病的背景を考える必要があります。

また、胆管内ガスは門脈内ガスと紛らわしいことがあります。門脈内ガスは腸管虚血や腸管壊死など重篤な疾患に伴うことがあるため、両者の鑑別は非常に重要です。

今回は、胆管内ガスを見たときに確認すべき既往歴、原因、門脈内ガスとの鑑別、そして「以前見えていた胆管内ガスが消えた場合」の注意点についてまとめます。

胆管内ガス(pneumobilia)とは?

胆管内ガスとは、肝内胆管や肝外胆管の中に空気を認める状態です。

画像上は、肝内胆管に沿った樹枝状・分岐状の低吸収域として描出されます。

CTでは空気は非常に低吸収で黒く見えるため、肝内のガスを認識すること自体は比較的容易です。しかし、問題はそのガスが胆管内ガスなのか、門脈内ガスなのかを判断することです。

胆管内ガスを見たらまず確認すべきこと

肝内胆管に沿って分岐状に空気が分布している所見は、pneumobilia(胆管内ガス)を示唆します。

これは病的所見のこともあれば、手術や処置後に生理的、あるいは慢性的にみられることもあります。

まず以下のような既往歴・手術歴を確認することが重要です。

  • 胆管空腸吻合後
  • 胆道再建後
  • 膵頭十二指腸切除後
  • 乳頭切開(EST)後
  • ERCPなど胆道処置後
  • 胆道ステント留置後
  • 胆嚢摘出後

特に、胆管空腸吻合後や乳頭切開後では、乳頭括約筋や胆道と腸管のバリア機構が変化しているため、腸管ガスが胆道内へ逆流しやすくなります。

そのため、これらの既往がある患者さんでは、胆管内ガスは比較的よく見られる所見です。

ただし、胆嚢摘出後のみで慢性的な胆管内ガスを説明できるとは限りません。胆摘後とされている場合でも、乳頭切開、胆道ステント、胆管空腸吻合、胆道再建などの詳細な既往がないか確認することが大切です。

胆管内ガスの原因

胆管内ガスの原因としては、以下が挙げられます。

  • 胆管空腸吻合などの胆道消化管吻合
  • 乳頭切開後、乳頭括約筋機能不全
  • ERCP、胆道ステント、胆道ドレナージなどの処置後
  • 胆道消化管瘻
  • 胆石イレウス
  • 気腫性胆嚢炎、気腫性胆管炎などのガス産生性感染
  • 胆道閉塞に感染を伴う状態
  • 外傷後

日常診療では、術後・処置後に見られる胆管内ガスが多いですが、手術歴や処置歴がない場合には、病的な胆道消化管交通や感染を疑う必要があります。

手術歴がない場合は瘻孔形成に注意

手術歴や処置歴がないにもかかわらず胆管内ガスを認める場合には、胆道消化管瘻の存在を疑います。

特に慢性胆嚢炎や胆石症を背景として、胆嚢十二指腸瘻、胆嚢結腸瘻などを形成することがあります。

胆石が瘻孔を通って腸管内へ落下し、腸閉塞を来した場合には胆石イレウスとなります。

CTでは、以下を丁寧に確認します。

  • 胆嚢壁の肥厚や萎縮
  • 胆嚢内ガスの有無
  • 胆嚢と十二指腸・結腸など周囲腸管との接触
  • 胆道と消化管をつなぐ瘻孔の有無
  • 腸管内に迷入した胆石の有無
  • 腸閉塞の有無

胆管内ガスを単なる偶発所見と判断せず、既往歴がない場合には胆道消化管瘻を検索することが重要です。

胆管内ガスと門脈内ガスの鑑別

胆管内ガスで最も重要な鑑別は、門脈内ガス(portal venous gas)です。

基本的には、以下のように分布で鑑別します。

所見 胆管内ガス 門脈内ガス
分布 肝門部寄り、中枢側優位 肝辺縁、末梢側優位
走行 胆管に沿う 門脈枝に沿う
連続性 肝門部胆管・総胆管方向に追えることがある 門脈枝方向に追える
背景 胆道手術・乳頭切開・胆道ステント・瘻孔など 腸管虚血、腸管壊死、腸炎、腸管拡張など
臨床的重要性 既往によっては良性・慢性所見のことがある 緊急性の高い病態を伴うことがある

一般的には、肝の中心部に分布するガスは胆管内ガス、肝の辺縁部に分布するガスは門脈内ガスと考えます。

ただし、これはあくまで基本です。

胆管内ガスであっても、症例によっては肝の末梢近くまでガスが伸びることがあります。そのため、「末梢にあるから即、門脈内ガス」と判断するのは危険です。

重要なのは、ガスの分布だけでなく、肝門部胆管との連続性、門脈枝との連続性、既往歴、臨床症状、腸管所見を総合的に判断することです。

門脈内ガスを疑う場合に確認すべき所見

門脈内ガスを疑う場合には、腸管虚血や腸管壊死を示唆する所見がないかを必ず確認します。

  • 腸管壁の造影不良
  • 腸管壁内気腫
  • 腸管拡張
  • 腸間膜血管の閉塞
  • 腹水
  • 腹腔内遊離ガス
  • 腸間膜脂肪織濃度上昇
  • ショック、乳酸上昇、腹膜刺激症状などの臨床情報

門脈内ガスは、必ずしもすべてが腸管壊死を意味するわけではありませんが、重篤な病態を伴うことがあるため、背景所見の確認が重要です。

pneumobiliaが「見えなくなった」ときも要注意

胆管内ガスは、胆管空腸吻合後や乳頭切開後、胆道ステント留置後などでは慢性的に見られることがあります。

そのため、過去画像でいつも見えていた胆管内ガスが、ある時点で急に目立たなくなった場合には注意が必要です。

「胆管内ガスが消えたから改善した」と単純に判断してはいけません。

特に注意すべきなのは、以下のような状況です。

  • 胆道ステント閉塞
  • 胆管空腸吻合部狭窄
  • 胆道ドレナージチューブの閉塞
  • 胆管炎による胆道内圧上昇
  • 胆道の通過障害

胆道と腸管の交通がある状態では、腸管ガスが胆道内へ流入するため、胆管内ガスが見られます。

しかし、胆道ステントや吻合部が閉塞すると、腸管側から胆道側へのガス流入が減少し、これまで見えていた胆管内ガスが減少・消失することがあります。

つまり、過去に定常的に存在していたpneumobiliaの消失は、胆道通過障害や胆道感染の悪化を示すサインとなることがあります。

過去画像との比較で「胆管内ガスがあるか」だけでなく、以前より減っていないか、消失していないかを確認することが重要です。

胆管内ガスを見たときの読影手順

胆管内ガスを認めた場合には、以下の順に確認すると整理しやすいです。

  1. 本当に胆管内ガスか、門脈内ガスではないかを確認します。
  2. 肝門部胆管・総胆管方向への連続性を確認します。
  3. 胆管空腸吻合、乳頭切開、ERCP、胆道ステントなどの既往を確認します。
  4. 手術歴・処置歴がなければ、胆道消化管瘻を疑います。
  5. 胆嚢炎、胆石、胆石イレウス、気腫性胆管炎などの所見を確認します。
  6. 門脈内ガスが疑わしい場合は、腸管虚血・腸管壊死の所見を確認します。
  7. 過去画像と比較し、pneumobiliaの増減・消失を確認します。

症例① 70歳代男性 胆管癌術後(胆管内ガス(pneumobilia))

pneumobilia

肝内に分岐状のガスを認めます。

ガスは肝門部側の胆管に連続するように見られ、胆管内ガス(pneumobilia)を疑う所見です。

胆管癌術後であり、胆道再建や胆管空腸吻合などの既往がある場合には、腸管ガスが胆道内へ逆流することで胆管内ガスを認めることがあります。

胆管内ガス(pneumobilia)でも以下の症例のように肝のかなり末梢まで認められることもありますので、末梢=門脈ガスと判断しないようにしましょう。

症例② 80歳代男性 乳頭切開術の既往あり。

pneumobilia1

この症例も肝門部付近からairを認めており、pneumobiliaと考えられます。

ただし、胆管内ガスが肝の末梢近くまで連続しています。

胆管内ガスであっても、このように末梢までairを認めることがあります。そのため、末梢にairを認めたからといって、すぐに門脈内ガスと判断しないように注意が必要です。

症例③ 70歳代男性 胆摘後

pneumobilia2

こちらの症例も、かなり末梢までairを認めています。

一見すると門脈内ガスのように見える可能性がありますが、中枢側へ追うと肝門部胆管との連続性を確認できます。

このように、末梢にairを認める場合でも、連続性を丁寧に追うことで胆管内ガスと判断できることがあります。

胆管内ガスを見たときの注意点

  • 胆管内ガスは、術後・処置後では慢性的に見られることがあります。
  • 手術歴や処置歴がない場合には、胆道消化管瘻や感染を考えます。
  • 胆管内ガスと門脈内ガスは、分布だけでなく連続性で判断します。
  • 胆管内ガスでも末梢まで伸びることがあります。
  • 門脈内ガスを疑う場合には、腸管虚血や腸管壊死を示唆する所見を確認します。
  • 過去に見えていたpneumobiliaが消失した場合には、胆道ステント閉塞や吻合部狭窄を疑います。

まとめ

  • 胆管内ガス(pneumobilia)は、胆道内に空気を認める所見です。
  • 胆管内ガスを見たら、まず胆管空腸吻合、乳頭切開、ERCP、胆道ステントなどの既往歴・処置歴を確認します。
  • 手術歴や処置歴がなければ、胆道消化管瘻、胆石イレウス、ガス産生性感染などを考えます。
  • 門脈内ガスとの鑑別では、肝中心部か辺縁部かという分布に加えて、胆管・門脈との連続性を確認することが重要です。
  • 胆管内ガスであっても、末梢までairを認めることがあります。
  • これまで見えていたpneumobiliaが消失した場合には、胆道ステント閉塞、吻合部狭窄、胆道感染などを疑います。
  • 胆管内ガスは「ある・ない」だけでなく、「なぜあるのか」「以前と比べてどう変化したのか」を評価することが重要です。

関連記事:門脈内ガスと胆管内ガスの鑑別はこちら。

参考文献

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  6. Radiopaedia. Pneumobilia. Radiology Reference Article.
  7. Radiopaedia. Pneumobilia versus portal venous gas. Radiology Reference Article.

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