脂肪肝とは
- 肝細胞に中性脂肪が沈着しているものの総称。
- 病理標本で脂肪滴を伴う肝細胞が30%以上に認められることで脂肪肝は診断される(最近では5%以上とする考えもある)。
- それが原因で肝障害をきたしたものは脂肪肝性肝疾患(fatty liver disease)と呼ばれる。
脂肪肝の原因
代謝性
- 糖尿病、高脂血症
- 肥満、高カロリー輸液
- 低栄養、腸管吸収不全
- ステロイド
- 急性妊娠脂肪肝
- 糖原病
- Reye症候群
- うっ血肝
肝毒性
- アルコール
- 四塩化炭素
- リン
- アミオダロン
- 化学療法(タモキシフェン)
- テトラサイクリン
※脂肪肝の原因のほとんどは中性脂肪合成亢進であり、その原因は肥満、糖尿病、アルコール多量摂取、薬剤など。この場合は一般的に可逆的であるが、進行すると非可逆的。
※まれであるが、Reye症候群や、テトラサイクリン中毒、急性妊娠脂肪肝など中性脂肪分解障害によるものもあり、重篤である。
脂肪肝の画像診断
脂肪肝のCT所見
脾臓と比較する。
- 肝のCT値が脾のCT値より10HU以上低下している。
- Liver to Spleen attenuation ratio=肝のCT値/脾のCT値<1.0→つまり、脾臓の方が肝よりも明るかったら(白かったら)脂肪肝。
肝のCT値を測る。
- 肝臓のCT値が40HU以下。
症例 40歳代男性
単純CTで肝臓のCT値が20HUと低下しています。40HU以下ですので脂肪肝と診断されます。
症例 30歳代男性 びまん性脂肪沈着(diffuse deposition)
この症例では脾臓と肝臓を比べると、脾臓の方が高吸収であり、また肝内の血管よりも肝臓の実質は低吸収となっています。いずれも脂肪肝を示唆する所見です。
脂肪肝のMRI所見
- 脂肪抑制により信号低下を認める。
- Chemical shift imagingにて、in phaseに比べてout of phaseで信号低下を認める。
- MRS(MR spectroscopy):最も正確かつ鋭敏に脂肪の存在を検出できる。
症例 30歳代女性
In phaseからout of phaseにかけてびまん性に肝臓は低信号になっています。脂肪肝を示唆する所見です。
症例 40歳代男性
この症例でも上の症例と同様にIn phaseよりOut of phaseで肝はびまん性に低信号になっています。脂肪肝を示唆する所見です。
脂肪検出の感度、特異度
- 超音波:感度60-100%、特異度80-95%。
- CT:感度50-95%、特異度90%。
- MRI(Chemical shift imaging):感度80%、特異度100%。
脂肪肝の分布による分類
- びまん性脂肪沈着(diffuse deposition)
- 限局性脂肪沈着(focal deposition)
- 限局性非脂肪沈着(focal sparing)
- 区域性脂肪沈着(Segmental deposition)
- 多結節性脂肪沈着(multifocal deposition)
限局性脂肪沈着(focal deposition)
- 区域性脂肪肝:区域性に広がる。
- まだら脂肪肝:不均一な地図状などに広がる。
- 限局性脂肪肝:肝内の一部に限局した脂肪沈着。非脂肪沈着の好発部位である右胃静脈灌流域やSappey’s vein流入域に生じることがある。前者は、胃癌術後などに多く、胃切除に伴う血管処理が肝流入血流に変化を与えたためと考えられる。
症例 40歳代男性 まだら脂肪肝
症例 40歳代男性 検診で肝腫瘤を指摘。限局性脂肪肝(focal fatty liver)。
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限局性非脂肪沈着(focal sparing)
- 限局性非脂肪沈着は、肝左葉内側区(S4)背側部、や胆嚢周囲、S4鎌状間膜付着部周辺、肝左葉外側背側部などの部位に生じやすい。
- この部位は偽病変の出現部位と一致しており、通常の肝動脈や門脈以外の肝流入血流(third inflow)の存在が関与している。
- これらの流入血は、門脈本幹からの血流と比較してインスリンなどのホルモンや栄養分に濃度差があるため、脂肪沈着の不均一を引き起こすと考えられている。
- また、同様の非脂肪沈着はA-P shunt部や腫瘍の周囲にも生じることが知られているが、これらも相対的な門脈血流低下が原因と考えられる。
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うっ血肝はCTでどのような所見を呈するのでしょうか。肝静脈・下大静脈の拡張と肝機能異常、右心系の異常⇒うっ血肝疑いといった診断でいいでしょうか?
コメントありがとうございます。
それ以外にperiportal collarを認めることがありますね。