肝硬変とは?
- あらゆる慢性進行性肝疾患の終末像(肝細胞の壊死をおよび持続する炎症の結果生じる)。
- 肝臓全体に線維化と再生結節がみられる状態で、原因は肝炎同様にさまざま。
- 高度の肝機能低下、門脈圧亢進、肝内外の短絡(シャント)が形成される。
- 肝硬変を呈する肝臓からは高率に肝細胞癌が出現してくるため、MRI撮像にはEOBガドリニウム造影を追加する必要がある。
肝硬変の原因は?
- 肝炎ウイルスの慢性感染(わが国では70%がこれ!そのうち50%強がC型、20%強がB型)
- アルコール性肝障害(欧米では最も多い)
- 原発性胆汁性肝硬変(胆汁うっ帯による)
- ウィルソン病(銅の代謝異常)
- ヘモクロマトーシス(鉄の代謝異常)
- うっ血肝(にくずく肝、高度心機能低下)
- 自己免疫性肝炎(ルポイド肝炎)
- 薬剤性
肝硬変の病理は?
- 広範な線維化
- 肝細胞の結節状再生肥大
- 肝固有の小葉構造の改築(偽小葉)
- 門脈系の系統的吻合
- 再生結節
大結節性 9mm以上:B型肝硬変、PSC
小結節性 3-9mm:PBC
慢性肝炎〜肝硬変の形態の変化は?
- 肝の形態は時間経過とともに変化する。初期には腫大、進行すると変形、萎縮がみられる。
- 代償期の肝硬変では左葉内側区と右葉の萎縮および尾状葉の代償性腫大をきたす。
- 非代償期には肝全体が萎縮傾向となる。
- 門脈圧亢進を反映し、脾臓の腫大、腹水、胆嚢壁肥厚、門脈側副路の発達がみられる。
- 再生結節の出現を認める。多段階的に肝細胞癌へ発展する。
- 再生結節はCTでの検出率は低いが、MRIでは鋭敏に検出できる。
- 再生結節のMRI信号は一般的にT1強調画像で高信号、T2強調画像にて低信号を呈する。肝細胞癌とは逆である。鉄の沈着や細胞密度が高いためとされる。
- 線維化は網目のようにT2強調像高信号に描出され、造影では平衡相にて周囲の肝実質よりも濃染する。
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症例 70歳代男性
左葉および尾状葉(S1)の腫大を認めている。
また側副血行路として傍臍静脈の発達を認める。
症例 80歳代男性
肝は全体的に凹凸不整で辺縁が鈍となっている。
脾腫を認め、側副血行路として傍臍静脈の発達を認める。
また肝障害などで認める胆嚢の漿膜下浮腫を認めている。
代償期にはなぜこうなるか?
→線維化および門脈血流増減が関与。
→肝硬変が進行すると肝内胆管の門脈に線維化がおこり狭窄を来す。
→肝内において右葉、左葉、尾状葉には門脈供血の特異性がある(平等ではない)。門脈右枝では肝門部から直接肝右葉内に入るのに対し、左枝では肝外である肝鎌状靭帯部を通ってから肝左葉に入る。このため線維化の影響が少なくて済む。
→左葉への門脈血流が相対的に増える。肥大。
肝硬変症の最も初期に起こる形態変化→肝門部の門脈周囲腔の拡大
- 肝硬変の最も初期に起こる形態変化として肝門部の門脈周囲腔の拡大所見(enlargement of hilar periportal space)=門脈右枝の腹側域の脂肪の増加、が知られている。
- これは肝左葉内側区の萎縮が肝硬変の最も初期に起こる形態変化であることを示唆している可能性がある。
胆嚢周囲腔の拡大(GBF sign)
- 肝硬変の形態変化をみるにあたり、簡易的かつ客観的に視覚的評価が可能である胆嚢周囲腔の拡大所見[expanded galbllader fossa(GBF)sign]を理解することが臨床上重要。
- 通常、胆嚢は肝右葉と左葉内側区の間に存在する胆嚢窩に収まっており、周囲に脂肪組織はほとんど存在しない。
- 肝硬変症では胆嚢窩が拡張して脂肪組織が入り込み、いわゆるGBFsignを示すようになる。
- このサインは、左葉内側区の萎縮、尾状葉の腫大、右葉(特に前区域)の萎縮、左葉外側区(特に頭尾方向)の腫大による変化と考えられている。
肝右葉後区域背側の切れ込み像(RPHN sign)
- 通常、肝右葉後区域背側には右腎による圧排で スムーズな弯曲がみられる。
- 肝硬変症では、しばしば肝右葉後区域背側に鋭い切れ込み像を認める。right posterior hepatic notch (RPHN)signとよばれる。
再生結節 regenerative nodules in liver cirrhosis
- 肝硬変症において肝表面の不整像がしばしば見 られる。これは、再生結節に伴う変化で特 徴的な形態変化である。
- 肝左葉外側区で見られることが多い。
- アルコール性:3mm以下の小さな再生結節。
- ウイルス性:3mm以上の大きな再生結節。
症例 40歳代男性 アルコール性肝硬変
肝は辺縁鈍で凹凸不整。MRIにてサイズの小さな無数の再生結節あり。CTよりもMRIで再生結節はわかりやすい。
塊状線維化巣(confluent fibrosis)
- 肝硬変症の進行に伴い、非代償期や終末期では強い線維化が肝全体に及び、しばしばconfluent fibrosisとよばれる限局した線維化巣を認めることがある。
- 典型的には、肝左葉内側区や右葉前区に楔状の線維化を呈する。MRIではT1強調像で低信号、T2強調像で高信号を呈することが多い。
いつも利用させていただいてたいへん助かっております。最近、巨大脾腫に梗塞を生じた症例を経験しました。
まれではありますが内科の先生の間では、有名な病態だそうです。