腹部単純CTで肝臓がびまん性に高吸収を示している(びまん性にいつもより白く見える)場合、鑑別の一つとしてアミオダロンの肝沈着を考える必要があります。

アミオダロンは抗不整脈薬の一つで、ヨードを含有する薬剤です。長期内服により肝臓に蓄積すると、単純CTで肝実質が高吸収を示すことがあります。

このような所見は、しばしば「アミオダロン肝」あるいは「アミオダロンによる肝高吸収」と呼ばれます。

今回は、アミオダロン肝とは何か、なぜCTで肝臓が高吸収になるのか、画像診断で注意すべき点についてまとめます。

アミオダロンとは?

アミオダロンは、主に頻脈性不整脈に用いられる抗不整脈薬です。

  • 上室性不整脈や心室性不整脈に対して使用されます。
  • Naチャネル、Kチャネル、Caチャネル遮断作用を持ちます。
  • β受容体遮断作用も併せ持ちます。
  • 非常に脂溶性が高く、分布容積が大きい薬剤です。
  • 体内からの消失が遅く、長期間組織内に残存することがあります。

アミオダロンは有用な薬剤ですが、肺障害、甲状腺機能異常、肝障害、角膜沈着、皮膚症状など、さまざまな副作用が知られています。

画像診断で有名なのは、アミオダロン肺アミオダロンによる肝高吸収です。

アミオダロン肝とは?

アミオダロン肝とは、アミオダロンの長期内服により、肝臓にアミオダロンやその代謝産物が蓄積し、CTで肝実質がびまん性に高吸収を示す状態を指します。

アミオダロンは分子内にヨードを含んでいます。そのため、肝臓に沈着するとヨード成分を反映して、単純CTで肝実質のCT値が上昇します。

ただし、ここで重要なのは、CTで肝臓が高吸収だからといって、必ずしも肝障害を意味するわけではないという点です。

肝高吸収はアミオダロンの沈着を反映する所見であり、肝障害の有無は肝酵素、臨床経過、他疾患の除外などを含めて総合的に判断する必要があります。

なぜCTで肝臓が高吸収になるのか?

アミオダロンはヨードを含有する脂溶性薬剤です。

長期内服により、アミオダロンおよび代謝産物であるデスエチルアミオダロンが肝臓に蓄積します。ヨードはX線吸収が高いため、肝臓に蓄積するとCTで高吸収として描出されます。

そのため、単純CTで肝臓の吸収値が脾臓より明らかに高く、びまん性に白く見える場合には、内服歴を確認することが重要です。

CTでの画像所見

アミオダロンによる肝沈着では、CTで以下のような所見を認めます。

  • 単純CTで肝臓がびまん性に高吸収を示します。
  • 肝実質のCT値が上昇します。
  • 肝臓が脾臓よりも明らかに高吸収に見えることがあります。
  • 肝内に局所性腫瘤を形成するわけではありません。
  • 造影CTではなく、単純CTで評価することが重要です。

典型例では、単純CTで肝臓全体がびまん性に高吸収となります。症例報告では、肝実質のCT値が90HU以上、あるいは100HU前後まで上昇する例も報告されています。

通常の単純CTでは、肝臓は脾臓と同程度、あるいはやや高吸収を示します。しかしアミオダロン沈着では、肝臓が脾臓よりも明らかに高吸収となることがあります。

症例 60歳代女性 アミオダロン常用

amiodarone-induced liver damage CT findings

肝臓はびまん性の高吸収を認めています。

肝実質のCT値は平均約100HUと高値です。

アミオダロン内服歴があることから、アミオダロンによる肝沈着を疑う所見です。

ただし、肝高吸収のみで肝障害の程度を判断することはできません。肝機能障害の有無や臨床経過を合わせて評価する必要があります。

症例 70歳代女性 アミオダロン常用

amyo

この症例でも、肝臓はびまん性の高吸収を示しています。

肝実質のCT値は平均約101HUと高値です。

アミオダロン内服歴と単純CTでのびまん性肝高吸収から、アミオダロンによる肝沈着を疑います。

びまん性肝高吸収を見た場合には、ヘモクロマトーシスなどの鉄沈着性疾患も鑑別になりますが、アミオダロン内服歴がある場合には本所見をまず考慮します。

「肝高吸収=肝障害」ではありません

アミオダロン内服中の患者さんで肝臓が高吸収に見えると、アミオダロン肝障害を疑うきっかけになります。

しかし、画像上の肝高吸収はあくまで薬剤沈着を示唆する所見です。

肝障害の診断には、以下を合わせて確認する必要があります。

  • AST、ALT、ALP、γ-GTP、ビリルビンなどの肝胆道系酵素
  • 内服期間と累積投与量
  • 肝炎ウイルス、アルコール、脂肪肝、うっ血肝など他の原因
  • 腹水、脾腫、肝萎縮、肝表面不整など慢性肝障害を示す所見
  • 薬剤中止後の肝機能やCT値の変化

つまり、単純CTで肝臓が高吸収であることは、アミオダロン内服歴を確認する重要な手がかりですが、それだけで重篤な肝障害と断定することはできません。

アミオダロンによる肝障害

アミオダロンは肝臓に蓄積し、薬剤性肝障害を起こすことがあります。

軽度の肝酵素上昇にとどまる場合もありますが、まれに脂肪肝炎様変化、線維化、肝硬変様変化、重篤な肝不全に至る例も報告されています。

病理学的には、リン脂質症、脂肪肝炎様変化、Mallory-Denk体、線維化などが報告されています。

画像上は肝高吸収が目立つ一方で、脂肪肝炎を合併すると脂肪沈着によりCT値が低下する方向に働くことがあります。そのため、肝障害があっても画像上の肝高吸収だけでは評価が難しい場合があります。

鑑別診断:びまん性肝高吸収を来す疾患

単純CTで肝臓がびまん性に高吸収を示す場合、アミオダロン以外にも以下のような疾患・状態が鑑別に挙がります。

  • ヘモクロマトーシス
  • 輸血後鉄沈着、ヘモジデローシス
  • Wilson病による銅沈着
  • 金製剤沈着
  • グリコーゲン蓄積症
  • トロトラスト沈着
  • 造影剤の影響、撮影条件の影響

このうち、日常診療でアミオダロン内服中の患者さんに遭遇する機会は比較的多いため、びまん性肝高吸収を見た際には内服薬の確認が非常に重要です。

アミオダロン肺との関連

アミオダロンは肺にも蓄積し、アミオダロン肺と呼ばれる薬剤性肺障害を来すことがあります。

胸部CTでは、浸潤影やすりガラス影、器質化肺炎様所見、間質性肺炎様所見を示すことがあります。また、アミオダロンはヨードを含むため、肺病変の一部が高吸収を示すこともあります。

腹部CTでアミオダロンによる肝高吸収を認めた場合には、胸部CTで肺病変の有無にも注意するとよいです。

アミオダロン肺のCT画像診断

参考文献

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