
先に結論:尿道損傷が疑われたら、まずRUGで「尿道の外へ造影剤が漏れるか」と「膀胱まで通るか」を見ます
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 後部尿道 | 主に骨盤骨折で起こる。骨盤骨折の5〜25%に後部尿道損傷を伴う(Patel 2023) |
| 前部尿道 | またがり損傷(会陰部の打撲)、貫通、医原性など(Patel 2023) |
| 疑うサイン | 尿道口の出血、排尿できない、会陰・陰茎の血腫。出血の量は損傷の程度を表さない(Patel 2023) |
| 検査 | RUGがゴールドスタンダード。CTは合併損傷の評価に役立つが、RUGの代わりにはならない(Patel 2023) |
| 分類 | Goldman分類(1997年)とAASTの臓器損傷スケール(1992年)が代表的。膀胱損傷の確認はCT膀胱造影 |
尿道損傷とは:前部と後部で原因が違う
男性の尿道は、会陰膜(尿生殖隔膜)を境に、手前の前部尿道と奥の後部尿道に分けます。前部尿道は約15cmで、外尿道口・舟状窩・陰茎部・球部からなります。後部尿道は約3cmで、膀胱頸部・前立腺部・膜様部からなります(Patel 2023)。
| 項目 | 前部尿道損傷 | 後部尿道損傷 |
|---|---|---|
| 主な原因 | 自己挿入、貫通、またがり(straddle)損傷、圧挫、医原性など | 骨盤骨折、強い減速や骨盤の圧迫 |
| 起こり方 | 表層の上皮が海綿体のすぐ上にあるため、上皮が破れやすく、血尿などが出る | 骨盤輪の破綻に伴う圧迫力で起こる(骨盤骨折尿道損傷:PFUI) |
| 疑うきっかけ | 会陰部を強く打った、尿道口の出血 | 骨盤骨折、尿道口の出血、排尿できない |
(Patel 2023)
尿道損傷は泌尿生殖器外傷の約4%で、ほとんどは鈍的外傷(最大90%)によります。鈍的外傷の主な原因は交通事故、蹴られる、転落です(Patel 2023)。骨盤骨折の原因・分類は骨盤輪骨折の画像診断と骨盤骨折の分類にまとめています。後部尿道損傷の機序は、尿道に付く靭帯が切れることが典型的とされています(Alwaal 2015)。
どんなときに疑うか
骨盤骨折の男性で尿道損傷を疑う最も特徴的なサインは、尿道口の血液です。後部尿道損傷の37〜93%でみられますが、出血の量は損傷の程度を表しません(Patel 2023)。報告によって頻度の幅は大きく、Alwaal 2015は20〜100%と整理しています。直腸診で前立腺が高い位置にある所見は、感度が低いとされます(Patel 2023)。
| RUGを行うかどうかの目安 | 内容 |
|---|---|
| RUGを考える | 男性で尿道口に血液がある、会陰や陰茎の血腫、排尿できない・しにくい、またがり型(straddle)の骨盤骨折を伴う(Patel 2023) |
| 骨盤X線の手がかり | 恥骨結合の開きが1mm増えるごとに、尿道損傷のリスクが約10%高くなる(Patel 2023) |
| 女性 | 尿道損傷はまれ(骨盤骨折の最大6%)。外陰部の腫れや膣口の血液があれば尿道鏡で評価する(Patel 2023) |
血液が尿道口にあるときは、RUGを行ったうえで、泌尿器科医が1回だけ慎重にカテーテルの挿入を試みる、という流れがガイドラインとして紹介されています。EAUとAUAのガイドラインは、尿道損傷が疑われる全例でRUGをゴールドスタンダードとしています(Patel 2023)。
逆行性尿道造影(RUG)のみかた
RUGは、尿道口から水溶性の造影剤を入れて、尿道を斜めの方向から撮影する検査です。撮影の前に単純X線(scout film)で体位を確認します。目的は、尿道の周囲に造影剤が漏れていないかと、尿道の輪郭が連続してなめらかかを見ることです(Patel 2023)。
| RUGの所見 | 意味 |
|---|---|
| 尿道の連続した滑らかな輪郭で膀胱へ流入する | 尿道損傷を示す所見なし |
| 尿道の外へ造影剤が漏れる | 尿道損傷。漏れの位置が損傷の部位を示す |
| 漏れがあり、膀胱へ造影剤が入る | 部分断裂(AAST III) |
| 漏れがあり、膀胱へ造影剤が入らない | 離断(尿道が2つに分かれた状態。AAST IV・V) |
(Patel 2023、Alwaal 2015)。部分断裂と離断の区別は、後述のとおり確実ではありません。
RUGの限界
RUGは損傷の重症度を正確に測る検査ではありません。瘢痕の密度、前立腺の偏位、陰茎海綿体の剥離、周囲の軟部組織損傷は評価できず、尿道の欠損が長い場合は、造影剤が十分に満ちないため短く見積もられることがあります(Patel 2023)。また検査は術者に左右され、実際に治療する泌尿器科医が読んだ場合と、独立した読影では結果が違うことがあると報告されています(Patel 2023)。
CTとMRIの役割
CTでは、合併する骨盤内の臓器損傷を調べられます。尿道損傷を示唆するCT所見として、尿生殖隔膜の脂肪層の乱れや消失、前立腺や球海綿体筋の輪郭の乱れ、坐骨海綿体筋や内閉鎖筋の血腫があります。ただし、CTでRUGを置き換えることはできません(Patel 2023)。MRIは、後部尿道損傷の86%で、尿道の欠損の長さと瘢痕の程度がRUGより正確に分かったと報告されており、手術前の評価に役立つ可能性があります(Patel 2023の引用)。貫通外傷では、下部尿路の評価にRUG、造影CT、CT膀胱造影がいずれも適切で、補い合うとされています(ACR 2026)。
症例 40歳代男性 骨盤骨折(open book型)に伴う尿道損傷

引用:Radiopaedia(Open book pelvis fracture with traumatic urethral injury)
恥骨結合の離開と両側の坐骨・下恥骨枝の骨折、左仙腸関節のわずかな開大があり、症例ページでは「open book」型の骨盤骨折に合致するとされています。骨盤バインダーが装着されています。

引用:Radiopaedia(Open book pelvis fracture with traumatic urethral injury)
同じ症例のX線尿道造影(救急外来の移動型X線装置で撮影)です。症例ページでは、尿道から造影剤が漏れ、後部尿道が写っておらず、外傷性の尿道損傷に合致すると記載されています。先に行ったCTの造影剤が、一部しか写っていない膀胱を満たしています。
分類:Goldman分類とAASTスケール
尿道損傷の分類は複数あり、報告によって使うものが違います。代表的な2つを示します。
Goldman分類(1997年)
鈍的な尿道損傷を、解剖で整理する分類です。従来のColapinto・McCallum分類との対応も示されています(Goldman 1997)。
| 型 | 内容 |
|---|---|
| I | 後部尿道は保たれるが、引き伸ばされている(Colapinto I型) |
| II | 尿生殖隔膜より上で膜様部が裂ける、後部尿道のみの部分断裂または離断(Colapinto II型) |
| III | 尿生殖隔膜の破綻を伴う、前部と後部を合わせた部分断裂または離断(Colapinto III型) |
| IV | 膀胱頸部の損傷が尿道に及ぶ |
| IVA | 膀胱底の損傷で尿道周囲に漏れがあり、IV型に似る |
| V | 前部尿道のみの部分断裂または離断 |
(Goldman 1997)
AASTの臓器損傷スケール(尿道)
損傷の場所でなく、損傷の程度で分けます。1992年のAAST臓器損傷スケールの尿道の等級は次のとおりです(Moore 1992。内容はAlwaal 2015の表による)。
| 等級 | 内容 |
|---|---|
| I 挫傷 | 尿道口の出血。尿道造影は正常 |
| II 伸展損傷 | 尿道が引き伸ばされるが、造影剤の漏れはない |
| III 部分断裂 | 損傷部で造影剤が漏れ、膀胱にも造影剤が入る |
| IV 離断 | 損傷部で造影剤が漏れ、膀胱に入らない。尿道の離開が2cm未満 |
| V 離断 | 尿道の離開が2cmを超える、または前立腺や膣に及ぶ |
(Moore 1992、Alwaal 2015)
どの分類にも弱点があります。Alwaal 2015は、既存の分類は部分断裂と離断を確実に区別できないと指摘しています。報告によって離断の割合は6%から97%まで幅があります(Alwaal 2015)。また、EAUのガイドラインの表(2010年)ではI型とII型の定義が入れ替わっており、V型は膀胱頸部・直腸・膣の損傷を伴うものを指します(Alwaal 2015)。分類名だけで話をせず、「造影剤が膀胱へ入るか」「損傷の位置」を書き添えると、読む人に伝わります。
膀胱損傷との区別:CT膀胱造影
骨盤骨折では、尿道だけでなく膀胱も損傷されることがあります。Goldman分類のIVA型のように、膀胱底の損傷が尿道周囲の漏れとして現れ、尿道損傷に似ることもあります(Goldman 1997)。
膀胱損傷の評価にはCT膀胱造影(膀胱に造影剤を満たしてCTを撮る検査)を使います。膀胱損傷のリスクがある鈍的外傷の患者で、CT膀胱造影は従来の膀胱造影と同等の診断能でした。212例の前向き研究では、膀胱破裂19例で、CT膀胱造影も従来の膀胱造影も感度95%、特異度100%でした。CT膀胱造影のみを行った283例では、破裂27例で感度・特異度とも100%でした(Quagliano 2006)。別の234例の検討では、陽性18例の内訳が腹膜外破裂11例、腹膜内破裂5例、両方2例で、冠状断・矢状断の再構成が破裂部位の同定に役立つとされています(Chan 2006)。
| 検査 | 主な対象 | 見るもの |
|---|---|---|
| 逆行性尿道造影(RUG) | 尿道 | 尿道外への造影剤の漏れ、膀胱への流入 |
| CT膀胱造影 | 膀胱 | 膀胱周囲の造影剤(腹膜外・腹膜内) |
| CT(造影) | 骨盤内臓器・出血 | 骨盤骨折、血腫、合併臓器損傷。尿道の評価はRUGで行う |
外傷の腹腔内の評価はFASTや腸管・腸間膜損傷のCTと合わせて進めます。
初心者向けチェックリスト
- 骨盤骨折の写真では、恥骨結合の開きと恥骨枝の骨折を見て、尿道損傷の可能性を意識する。
- 尿道口の出血、排尿できない、会陰の血腫があれば、カテーテルより先にRUGを考える。
- RUGでは「尿道の外へ漏れるか」「膀胱へ造影剤が入るか」の2点を見る。
- CTの骨盤内血腫や尿生殖隔膜周囲の乱れは、尿道損傷のサインになる。ただしCTだけで除外しない。
- 膀胱損傷が疑われるときはCT膀胱造影で膀胱周囲の造影剤を確認する。
- 報告書には、分類名に加えて漏れの位置と膀胱への流入の有無を書く。
よくある疑問(Q&A)
Q. 尿道口から血が出ていたら、すぐにカテーテルを入れてよいですか?
A. 尿道損傷が疑われるときは、RUGを行ったうえで、泌尿器科医が1回だけ慎重にカテーテル挿入を試みる流れが紹介されています。自己判断せず、医療機関の指示に従ってください(Patel 2023)。
Q. CTで尿道損傷は分かりませんか?
A. CTは骨盤内の合併損傷の評価に役立ち、尿道損傷を示唆する所見もありますが、RUGの代わりにはなりません(Patel 2023)。
Q. 女性でも尿道損傷は起こりますか?
A. まれですが、骨盤骨折の最大6%に伴うとされます。外陰部の腫れや膣口の血液があれば尿道鏡で評価します(Patel 2023)。
Q. 分類の等級が分かれば治療が決まりますか?
A. 治療の方針は泌尿器科が全身状態や合併損傷とあわせて決めます。分類は部分断裂か離断かの区別に限界があるため、画像の所見と合わせて判断されます(Alwaal 2015)。
参考文献
- Patel AB, Osterberg EC, Satarasinghe PN, et al. Urethral injuries: diagnostic and management strategies for critical care and trauma clinicians. J Clin Med. 2023;12(4). PubMed
- Alwaal A, Zaid UB, Blaschko SD, et al. The incidence, causes, mechanism, risk factors, classification, and diagnosis of pelvic fracture urethral injury. Arab J Urol. 2015;13(1):2-6. PubMed
- Goldman SM, Sandler CM, Corriere JN Jr, et al. Blunt urethral trauma: a unified, anatomical mechanical classification. J Urol. 1997;157(1):85-89. PubMed
- Moore EE, Cogbill TH, Jurkovich GJ, et al. Organ injury scaling. III: chest wall, abdominal vascular, ureter, bladder, and urethra. J Trauma. 1992;33(3):337-339. PubMed
- Quagliano PV, Delair SM, Malhotra AK. Diagnosis of blunt bladder injury: a prospective comparative study of computed tomography cystography and conventional retrograde cystography. J Trauma. 2006;61(2):410-421. PubMed
- Chan DP, Abujudeh HH, Cushing GL Jr, et al. CT cystography with multiplanar reformation for suspected bladder rupture: experience in 234 cases. AJR Am J Roentgenol. 2006;187(5):1296-1302. PubMed
- Expert Panel on Urologic Imaging, Costa DN, Bass M, et al. ACR Appropriateness Criteria Penetrating Trauma-Abdomen and Pelvis: Update 2026. J Am Coll Radiol. 2026;23(8):1666-1674. PubMed
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