アーチファクト 病気に見える偽像の見分け方

CTやエコーで「影がある」と言われたのですが、アーチファクトという言葉も聞きました。病気とは違うものですか?
アーチファクトは、検査の仕組みや体の動き、金属などのせいで画像にできる「偽の像」です。このほかに、正常な構造が病変に見える「偽病変」もあります。どちらも病気と間違えやすいので、検査別・部位別に、読むと役に立つ記事を案内します。

先に結論:偽像と偽病変は「別の断面・別の撮り方・過去の画像」で確かめる

項目 ポイント
アーチファクトとは 装置の原理・撮影条件・患者さんの動きや金属が原因で、実際にはない像やゆがみが画像にできる現象
偽病変とは アーチファクトではなく、正常な構造や正常変異が、腫瘍や骨折などの病変に見えるもの
見分けの基本 別の断面・別の撮り方・過去の画像で同じ所見が再現するかを確かめる
最初に読む記事 CT・エコー・MRIの順に、下の検査別の項で案内

アーチファクトと偽病変は何が違うのか

画像診断では、画像に写った影がすべて体の中の病気とは限りません。大きく分けると、次の2つがあります。

用語 意味 代表例
アーチファクト(偽像) 検査の仕組みや撮影のしかたが作る、体に実在しない像・ゆがみ 金属のまわりの筋状の影、動きによるぶれ、エコーの多重反射
偽病変(pseudolesion) 実在する正常構造・正常変異・生理的な変化が、病変に見えるもの 腎臓のBertin柱、胸腔内結石、PETの生理的集積

CTのアーチファクトは、原因によって、データを集めるときの物理的な過程によるもの、患者さんの動きや金属によるもの、装置の不具合によるもの、らせん状の撮影や多列検出器の再構成で生じるものに分けられます(Barrett 2004)。MRIでは、動き、磁化率、磁場の不均一、折り返し(aliasing)、化学シフト、信号の打ち切りなど、多くの種類が整理されています(Morelli 2011)。超音波では、アーチファクトが組織の性質を知る手がかりになることもあります(Feldman 2009)。つまり、アーチファクトは「ただ邪魔なもの」ではなく、原因を知ると読み方が変わる所見でもあります。

このページは、当サイトの関連記事を、検査別と部位別に並べた入口です。気になる記事から読み始めてください。

検査別:アーチファクトの基本

CT

CTでは、ビームハードニング(X線の性質が変わることで生じる暗い帯や筋)、金属、体動、部分容積効果(スライスの厚みで構造が混ざること)が基本の4つです。まずCTのアーチファクトで、見え方と病変との見分け方を確認します。個別の話題は次の記事です。

記事 何が分かるか
胸骨骨折に見える呼吸性アーチファクト 息止めが不十分なときに、胸骨が骨折のように段差を持って見える理由と見分け方
大動脈解離に見えるもの(mimic) 心臓の拍動による偽の解離像と、大動脈内の索状構造など、解離に見えるもの
腎嚢胞の偽造影効果 腎嚢胞が造影CTで実際より濃く測れる現象と、ビームハードニングの関係
MPR・MIP・MinIP・VR 再構成画像の特徴と、MIPやVRで隠れてしまう所見などの落とし穴
人工関節・プレート・スクリューのレントゲン 金属の周りを順に見る方法と、CT・MRIでの金属アーチファクトの扱い

MRI

MRIのアーチファクトは種類が多く、「どの方向に出るか」「どの条件で出るか」を知ることが見分ける近道です。画像診断機器の原理とMRIアーチファクトまとめに、折り返し・磁化率・化学シフトなどの原因と対策の表があります。部位別の記事は次のとおりです。

記事 何が分かるか
脳脊髄液の流れ(CSF flow)によるMRIアーチファクト 脳脊髄液の流れが作る信号の乱れと、flow voidとの違い
MRCPにおける胆汁の流れによるアーチファクト 胆汁の流れで信号が落ち、総胆管結石と紛らわしくなる例
MRCPにおける右肝動脈による胆管狭窄の偽病変 右肝動脈が胆管を横切る位置で、狭窄に見える偽病変

超音波(エコー)

エコーのアーチファクトは、音波の進み方の前提(まっすぐ進む、速さが一定)が崩れることで生じます。音響陰影や後方エコー増強のように、石灰化や嚢胞を見分ける手がかりになるものと、多重反射やコメットテールのように「ないものが見える」ものがあります(Feldman 2009)。超音波(エコー)のアーチファクトで、症例とともに整理しています。基本の操作や用語はエコー(超音波)検査の基礎も参考になります。

X線(レントゲン)

レントゲンは重なりの画像なので、皮膚のしわ、乳頭、衣服、電極などが病変に見えることがあります。また、仰向けで撮ると空気の位置が立位と変わります。

記事 何が分かるか
胸部レントゲンで結節に見える肺外の影 乳頭陰影・皮膚のできもの・骨島・電極を結節と取り違えない見分け方
気胸に見える線 皮膚のしわや肩甲骨の線を気胸と間違えない見方と、巨大なブラとの違い
臥位のfree airと気胸の見落とし 仰向けの写真での遊離ガスや気胸のサイン、気胸に見える胸膜外気腫

核医学(PET・シンチ)

核医学では、正常な臓器にも薬が集まるため、生理的な集積を病変と取り違える間違いが問題になります。装置による像の乱れも含めて、次の記事で整理しています。

記事 何が分かるか
FDG-PETの生理的集積とアーチファクト 脳・心筋・腸管・褐色脂肪など、がんと間違えやすい正常な集積
FDG-PETの偽陽性 骨・リンパ節・肝臓で転移に見える集積(造血髄、サルコイド様反応など)
PET以外の核医学の生理的集積と偽陽性 PSMA、ソマトスタチン受容体、MIBG、MIBI、131Iシンチの偽陽性
骨シンチの見方と偽陽性 骨転移の典型像と、骨折や関節症など転移以外の集積
負荷心筋血流シンチ(SPECT)の見方 負荷像と安静像の比べ方と、アーチファクトに注意する点
131Iによる星型アーチファクト(star sign) 甲状腺癌のシンチで見える星型の像

部位別:アーチファクトではない「偽病変」

次は、装置のせいではなく、体の正常な形や変異が病変に見えるものです。「正常変異」を知っていると、不要な追加検査や心配を減らせます。

部位 記事 何が分かるか
胸部 胸部CTの偽病変 胸腔内結石・胸壁の筋肉・心膜陥凹・蛇行肺静脈を、結節やリンパ節と間違えない見方
肝臓 肝細胞癌・肝転移に見える偽病変 多血性過形成結節・偽リンパ腫・化学療法後の結節など、肝癌や転移に似るもの
肝臓 肝臓の多血性偽病変の鑑別診断 THAD、APシャント、third inflowなど血流の違いで濃く染まる部分
腎臓 腎臓の腫瘍と言われたけど正常? ひとこぶらくだのこぶ・癒合部の切れ込みなど、腫瘍に見える腎臓の形
腎臓 Bertin柱の肥大と腎葉異型 腎腫瘍と間違えやすい正常変異のCT・エコー所見
頭部 pseudo-SAH(偽性くも膜下出血) CTでくも膜下出血に似て見える原因と鑑別
頭部 後頭乳突縫合 頭部CTで骨折線と紛らわしい縫合線
頭部 小脳片葉・後四角小葉 小脳橋角部の腫瘍に見える正常の小脳
膝 半月板断裂と誤診しないための偽病変 膝横靭帯や半月大腿靭帯など、断裂に見える正常構造

部位をまたぐ「正常変異」の探し方は、骨のレントゲンの見方としては骨のレントゲンの見方も参考になります。

偽像かもしれないと思ったときの確認手順

画像に不自然な所見があるとき、次の順に確認すると取り違えを減らせます。

手順 確認すること
1. 形と並び方 体の構造に沿っているか。臓器の境界を無視して直線や放射状に走っていないか
2. 別の断面 CTやMRIなら、横断だけでなく冠状断・矢状断や元画像でも同じ所見があるか
3. 周囲の構造 骨・皮膚・血管など周囲にも同じ段差やずれがないか
4. 撮り直し・別の方法 撮影条件を変える、別の検査(エコー、MRIなど)で再現するか
5. 過去の画像 前回の画像で同じ所見があったか。比較読影で変化を確かめる
6. 見落としのクセ 一つ見つけると他を見落としやすい。読影の見落としはなぜ起こる?で手順を確認

迷ったときに「アーチファクトだろう」と決めつけるのも、「病変だろう」と決めつけるのも危険です。再現性を確認し、必要なら放射線科医に相談することが大切です。

学ぶ順番の提案

  1. 自分が毎日見る検査から始めます。CTならCTのアーチファクト、エコーなら超音波のアーチファクトです。
  2. 次に、MRIの全体像としてMRIアーチファクトまとめを読み、原因と出る方向を表で覚えます。
  3. 部位別の偽病変は、自分の領域(胸部、腹部、頭部、骨関節)から読みます。
  4. PETやシンチを読む場合は、生理的集積の記事を先に読み、病変かどうかの判断はあとにします。

よくある疑問(Q&A)

Q1. アーチファクトがあると、検査はやり直しになりますか?

多くは、原因を知れば画像のまま判断できます。CTでは、患者さんの位置決めや撮影条件の選び方がアーチファクトを避ける大切な要素とされています(Barrett 2004)。診断に支障があるほど強い場合は、撮り直しや別の検査が検討されます。判断は検査を行った施設と主治医が行います。

Q2. 「偽病変」と言われたら、心配いりませんか?

偽病変は「病気ではない正常な構造」を指しますが、本当に偽病変かどうかは、画像の所見と症状、過去の画像を合わせて判断します。気になる症状があれば、医療機関に相談してください。

Q3. アーチファクトは新しい装置で減りましたか?

現代のCTには、一部のアーチファクトを抑える設計が入っており、ソフトウェアで部分的に補正できるものもあります(Barrett 2004)。ただし、体動や金属など患者さん側の要因は残るため、読む側が見え方を知っておく必要があります。

参考文献

  1. Barrett JF, Keat N. Artifacts in CT: recognition and avoidance. Radiographics. 2004;24(6):1679-91. PubMed
  2. Zhuo J, Gullapalli RP. AAPM/RSNA physics tutorial for residents: MR artifacts, safety, and quality control. Radiographics. 2006;26(1):275-97. PubMed
  3. Morelli JN, Runge VM, Ai F, et al. An image-based approach to understanding the physics of MR artifacts. Radiographics. 2011;31(3):849-66. PubMed
  4. Feldman MK, Katyal S, Blackwood MS. US artifacts. Radiographics. 2009;29(4):1179-89. PubMed

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →