
先に結論:「早期濃染+washout」でも、背景と経過が合わなければ偽病変を考える
| 病変 | こんなときに疑う | HCC・転移との違いの手がかり |
|---|---|---|
| 多血性過形成結節(HHN、FNH様結節) | アルコール性肝硬変 | 小さい(16mm以下)・DWIで低〜等信号・washoutなし・肝細胞相で等〜高信号 |
| 偽リンパ腫(反応性リンパ過形成) | 慢性肝疾患のない人の単発結節 | 結節周囲の濃染(perinodular enhancement)・CTAPで周囲にも欠損 |
| 化学療法後の限局性類洞障害 | オキサリプラチン投与中・後 | 新出病変でも転移と即断しない。画像だけでは区別できないこともある |
| AFP産生胃癌の肝転移 | AFP高値だが慢性肝疾患がない | HCCに似た多血性の多発肝腫瘍。胃を見直す |
| 肝紫斑病として経過観察中の病変 | 新たな腫瘤形成・急速な増大 | 血管肉腫が隠れていることがある。再生検を検討 |
なぜ偽病変が問題になるのか
肝細胞癌(HCC)や肝転移と読んだ結節が、良性の結節や別の腫瘍の転移だと、治療方針が大きく変わります。動門脈シャントなどの多血性偽病変は肝臓の多血性偽病変の鑑別診断、肝の血流異常(third inflow・AP shunt)で扱っているので、この記事ではそれ以外を中心に見ていきます。
アルコール性肝障害の多血性過形成結節(HHN)
アルコール性肝硬変には、動脈相で濃染する良性の多血性過形成結節(hypervascular hyperplastic nodule:HHN、FNH様結節とも呼ばれる)が生じることがあり、HCCに似ます(Kim 2020)。
MRIでの見分け方
アルコール性肝硬変でHHN 28結節と3cm未満の多血性HCC 29結節を比べたEOB-MRIの検討では、次の3つがHHNを示す独立した因子でした(Kim 2020)。
- 大きさ16mm以下
- 拡散強調像で低〜等信号
- 門脈相・移行相でwashoutがない
3つすべてを満たすと特異度は100%でした。HHNは肝細胞相でもHCCより信号が高い傾向がありました(Kim 2020)。
病理で確かめたHHN 10結節とHCC 9結節の比較では、T1強調像でHHNの7結節が高信号だったのに対しHCCはすべて低信号、T2強調像ではHHNの8結節が等〜低信号、HCCは8結節が高信号でした(Kobayashi 2007)。ただし高分化HCCとは所見が重なりうるため、臨床とMRIでHHNを疑い、針生検で確かめる流れが示されています(Kobayashi 2007)。
肝偽リンパ腫(反応性リンパ過形成)
肝偽リンパ腫は、リンパ球が結節状に増える良性病変です。病理で確かめた10結節の検討では、超音波で低エコー、単純CTで低吸収、T1強調像で低信号、T2強調像で高信号でした。造影CT・MRIの濃染の程度はさまざまで、動脈優位相や平衡相に結節周囲の濃染(perinodular enhancement)が見られることがありました(Yoshida 2013)。
経動脈性門脈造影下CT(CTAP)では結節に加えて周囲の肝実質にも門脈血流の欠損があり、病理では周囲の門脈域へのリンパ球浸潤による門脈枝の狭窄・消失が対応していました。結節内に門脈域が残っていることもありました(Yoshida 2013)。画像所見の詳細は偽リンパ腫とは?肝偽リンパ腫のCT・MRI画像所見もご覧ください。
化学療法後に出てくる結節(類洞閉塞症候群など)
消化器癌の化学療法中には、化学療法による肝障害(類洞障害・脂肪化)や腫瘍に伴う好酸球性膿瘍が、転移に似た限局性病変をつくることがあります(You 2017)。
オキサリプラチンによる類洞閉塞症候群(SOS)は、通常は画像で限局性病変をつくりません。しかし、大腸癌術後のオキサリプラチン併用補助化学療法中に尾状葉へ新たな1cmの低吸収域が出現し、MRIやPET-CTでも転移と区別できずに切除され、SOSと診断された報告があります(Choi 2016)。オキサリプラチン投与歴がある患者の「新出病変」は、限局性の類洞障害も鑑別に入れます。
AFP産生胃癌の肝転移
AFP産生胃癌はまれで進行の速い胃癌の亜型です。慢性肝疾患のない患者で、多発肝腫瘍が画像でHCCを示唆したものの、胃生検と肝生検で肝様分化を示す低分化腺癌と判明した報告があります(Kimura 2024)。
AFPが高くHCCに見える肝腫瘍でも、背景に慢性肝疾患がなければ、胃をはじめとする原発巣を探すことが大切です(Kimura 2024)。
症例 90歳代女性 胃の肝様腺癌(AFP産生胃癌)の肝転移

引用:Radiopaedia(Metastatic hepatoid adenocarcinoma of the stomach)
肝右葉を大きく占める不整な腫瘤があり、辺縁が早くから造影され、中心は広く壊死して低吸収になっています。症例ページでは血清AFPが高く、遅い相でwashoutを示して肝細胞癌に似ていましたが、胃と肝臓の生検で胃原発の肝様腺癌の肝転移と確定したと記載されています。
肝紫斑病と思っていたら血管肉腫
多発肝病変が経皮・腹腔鏡下生検で肝紫斑病と診断されたものの、その後に明らかな腫瘤が新たに出現し、再生検で肝血管肉腫と判明した報告があります(Kitsugi 2023)。血管肉腫は早期診断が難しく、肝紫斑病を伴うことがあります(Kitsugi 2023)。肝紫斑病として経過を見ている病変が増大・腫瘤化した場合は、再評価を考えます。
読影のときに確かめること
- 背景肝:アルコール性か、ウイルス性か、慢性肝疾患がないか。
- 病歴:オキサリプラチンなどの化学療法、胃癌などの悪性腫瘍。
- DWI・肝細胞相・T1/T2信号:典型的なHCCのパターンとずれていないか。
- 過去画像:新出か、増大しているか。
HCCの治療後の評価は肝細胞癌の治療後の局所再発のCT・MRI画像診断、脂肪を含む肝腫瘍は脂肪を含む肝腫瘍の鑑別診断で扱っています。
よくある疑問(Q&A)
Q. 早期濃染とwashoutがあればHCCと考えてよいですか?
アルコール性肝硬変の多血性過形成結節は動脈相で濃染してHCCに似ます(Kim 2020)。偽リンパ腫も動脈優位相で濃染することがあります(Yoshida 2013)。背景肝や経過が合わないときは偽病変を考えます。
Q. アルコール性肝硬変の多血性結節はすべて良性ですか?
いいえ。HHNと高分化HCCは所見が重なりうるため、疑わしい場合は生検での確認が示されています(Kobayashi 2007)。
Q. 化学療法中の新しい肝病変はすべて転移ですか?
多くは転移を考えますが、化学療法による肝障害が転移に似ることがあります(You 2017)。投与薬剤と経過をあわせて評価し、方針は主治医と相談してください。
参考文献
- Kim SS, Kim SH, Song KD, et al. Value of gadoxetic acid-enhanced MRI and diffusion-weighted imaging in the differentiation of hypervascular hyperplastic nodule from small (<3 cm) hypervascular hepatocellular carcinoma in patients with alcoholic liver cirrhosis: A retrospective case-control study. J Magn Reson Imaging. 2020;51(1):70-80. PubMed
- Kobayashi S, Matsui O, Kamura T, et al. Imaging of benign hypervascular hepatocellular nodules in alcoholic liver cirrhosis: differentiation from hypervascular hepatocellular carcinoma. J Comput Assist Tomogr. 2007;31(4):557-63. PubMed
- Yoshida K, Kobayashi S, Matsui O, et al. Hepatic pseudolymphoma: imaging-pathologic correlation with special reference to hemodynamic analysis. Abdom Imaging. 2013;38(6):1277-85. PubMed
- You SH, Park BJ, Kim YH. Hepatic Lesions that Mimic Metastasis on Radiological Imaging during Chemotherapy for Gastrointestinal Malignancy: Recent Updates. Korean J Radiol. 2017;18(3):413-426. PubMed
- Choi JH, Won YW, Kim HS, et al. Oxaliplatin-induced sinusoidal obstruction syndrome mimicking metastatic colon cancer in the liver. Oncol Lett. 2016;11(4):2861-2864. PubMed
- Kitsugi K, Kawata K, Matsumoto M, et al. Hepatic Angiosarcoma with Peliosis Hepatis. Intern Med. 2023;62(8):1157-1166. PubMed
- Kimura M, Matsuoka R, Nishikawa K, et al. Alpha-fetoprotein-producing gastric cancer with ruptured liver metastasis mimicking hepatocellular carcinoma. Clin J Gastroenterol. 2024;17(2):234-239. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
