MRCP検査では、胆管や膵管の描出に優れており、これらの通り道に異常なものがないかをその拡張や狭窄をヒントに探していきます。
狭窄や拡張がある場合は、総胆管結石や腫瘍などを考えて詳しく見ていく必要があります。
ところが、一見狭窄して病的に見えて実は病的ではないことがあるので注意が必要です。
それが、右肝動脈による胆管狭窄の偽病変です。
今回は、実際のMRCPの画像を用いて、右肝動脈による胆管狭窄の偽病変について解説します。
肝門部での動脈、門脈、胆管の位置関係
この偽病変(pseudolesion)を理解するには、まずは肝門部での動脈、門脈、胆管の位置関係を把握しておくことが重要です。
肝門部での動脈、門脈、胆管の位置関係は以下のようになります。
すなわち、前(腹側)から胆管(総肝管)→動脈→門脈という順番で位置しています。
ここで注目すべきは右肝動脈と胆管(総肝管)が交差するということです。
そして、ここで偽病変が生じることがあるのです。
右肝動脈による胆管狭窄の偽病変のMRCP画像
では実際に画像を見てみましょう。
症例 50歳代 男性 スクリーニング
MRCPのMIP像です。胆汁や膵液といった水を強調した画像(水強調画像)を再構成したものです。
- 胆嚢
- 胆道(総胆管、総肝管、右肝管、左肝管)
- 主膵管
といった構造が明瞭に見えます。
このうち、一箇所「あれ、細くなってる?」という箇所がありますよね。
そうです。ここです。
これを胆管の狭窄と判断して、結石や腫瘍の可能性がある!と判断してはいけないということです。
T2強調像の冠状断像でこの部位を見ると次のようになります。
右の肝動脈が胆管を横切っている様子がわかります。
胆管に結石や腫瘍があり、狭窄しているわけではないということです。
この部位はよくこの偽病変(狭窄のように見える)が現れる部位ですので、右肝動脈が横切ることによる圧排であり、正常変異として覚えておきましょう。
このMRCPの画像を実際に見てみる→総胆管狭窄の偽病変(右肝動脈による圧迫)のMRCP画像
最後に
MRCPはERCPと比べて非侵襲的な検査であり、CTなどと異なり被曝の問題もありません。
胆管・膵管の描出に優れ、これらの評価に近年しばしば用いられます。
典型的な結石や腫瘍の場合は、診断は容易ですが、実際はかなり微妙なものもあります。
また、今回のように偽病変を生じることがあり、これを病的と判断しないことが重要です。
参考になれば幸いです( ´∀`)