半月板断裂と誤診しないために知っておくべき偽病変
- ①内側および外側半月板の前角にあるのは断裂?→膝横靭帯(transverse meniscal ligament)
- ②外側半月板の前角を上下に走る高信号は断裂?→外側半月板前角の脛骨付着部(meniscal root)
- ③外側半月板の後角の高信号は断裂?→ 半月大腿靭帯(Humphrey靭帯とWrisberg靭帯)、膝窩筋腱(popliteus tendon)
膝横靭帯(transverse meniscal ligament)
- 内側半月板と外側半月板の前角どうしを結ぶ靭帯。
- 1枚の矢状断像だけ見ているとこの構造を半月板断裂と誤診してしまう可能性があるので、連続性を見る事、この靭帯が存在する事を知っておく事が大事。
症例 40歳代男性
内側半月板前角と膝横靱帯の間を断裂としない。
半月板前角の脛骨付着部(meniscal root)
- 内外の半月板の前角と後角の先端部は meniscal rootと呼ばれ、脛骨に強固に付着する。
- 内側半月板前角のrootは前十字靭帯の脛骨付着部のすぐ前、外側半月板前角のrootは前十字靭帯付着部のすぐ後方に結合する。
- 内側半月板前角root の後方成分は膝横靭帯に合流する。
- 矢状断でみると前角の部分で小断裂があるように見えことがあるが冠状断だと断裂なし。meniscal rootであり、アンカリングしているファイバー自体を見ている。断裂ではないので、注意。矢状断だけみて、安易に断裂としない。
内側半月板前角の脛骨付着部の線状高信号を断裂としない。
半月大腿靭帯(Humphrey靭帯とWrisberg靭帯)、膝窩筋腱(popliteus tendon)
半月大腿靭帯(Humphrey靭帯とWrisberg靭帯)
- 外側半月板後角と大腿骨を連絡する半月大腿靭帯(menisco-femoral ligament)がある。
- 後十字靭帯の前を走行し大腿骨に付着するHumphrey靭帯(読み方はハンフリー靱帯)と、後十字靭帯の後を走行するWrisberg靭帯(読み方はリスバーグ靱帯)がある。
- 一般にWrisberg靭帯が大きく同定しやすい。半月大腿靭帯には変異が多く、欠損する例も多い。(必ずしもある靱帯ではない)
- Humphrey靭帯とWrisberg靭帯の外側半月板後角での分離部を断裂と間違わないようにする必要がある。特に、Wrisberg靭帯が外側半月板後角に付着する部位では両者の間に高信号が見られるので注意する。
外側半月板後角とWrisberg靱帯の間を断裂としない。
なお前十字靱帯(ACL)は腫大し、断裂している(※)
膝窩筋腱(PT:popliteus tendon)
- 大腿骨外側顆から脛骨近位の後内側面に存在する。MRI T2WIの横断像の膝窩筋の解剖はこちら。
- 膝窩裂孔を介して膝関節の内外に存在するため、関節液が膝窩筋に沿って分布しうる。
- 外側半月板辺縁に近接する腱鞘(tendon sheath)を半月板断裂と診断しないように注意が必要。
- 膝MRI 第3版 P118-139
- 骨・関節のCT.MRI(1992年臨床放射線10月増刊号)
- 骨軟部疾患の画像診断 第2版
- 骨軟部画像診断の勘ドコロ