
先に結論:超音波のアーチファクトには「診断の手がかり」と「まぎらわしい偽像」の2つがある。原因を知れば見分けられる
| アーチファクト | 見え方 | 意味 |
|---|---|---|
| 音響陰影 | 結石・石灰化・ガスの後ろが黒く抜ける | 手がかり(硬い・ガスのある構造がある) |
| 後方エコー増強 | 嚢胞など液体の後ろが明るくなる | 手がかり(ただし液体以外でも出る) |
| 多重反射・コメットテール | 強い反射体の後ろに平行線や尾を引く線 | 偽像だが、種類で原因がわかることもある |
| 鏡面像・サイドローブ・ビーム幅 | 実際にはない像が出る | まぎらわしい偽像 |
| カラードプラの偽信号 | ないはずの血流が出る、あるはずの血流が出ない | 設定と角度で変わる |
超音波のアーチファクトとは
超音波検査(エコー)は、体の中に音を送り、跳ね返ってきた音(エコー)の時間と強さから画像を作ります。この計算には、「音はまっすぐ進む」「跳ね返ってくるのは1回だけ」「組織の中で音の進む速さは一定」といった前提があります。前提から外れると、本物とは違う像が現れます。これが超音波のアーチファクトです。
超音波のアーチファクトは、ビームの性質、複数回の反射、音速の誤差、減衰の誤差のいずれかが原因で起こります。ビーム幅、サイドローブ、多重反射、コメットテール、リングダウン、鏡面像、屈折、減衰、音響陰影、後方エコー増強(通過増強)などが日常の検査でよく出会うものです(Feldman 2009)。
大事なのは、アーチファクトは「ただの邪魔」ではなく、組織の性質を知る手がかりにもなることです。また、走査の技術(プローブの当て方・設定)で避けられるものもあれば、超音波の物理的な限界で起こるものもあります(Feldman 2009)。
手がかりになるアーチファクト
音響陰影(acoustic shadowing)
結石、石灰化、骨、ガスなど、音をほとんど通さない構造があると、その手前で音が反射・吸収され、後ろの音が弱くなって黒い帯(陰影)になります。胆石、腎結石、膀胱結石、石灰化した病変の確認に役立ちます。
症例 10歳代男児 胆石(音響陰影)

引用:Radiopaedia(Cholelithiasis in sickle cell anemia)
収縮した胆嚢の中に、高エコーの結石があり、その後ろが黒く抜けています。症例ページでは、胆嚢内腔に最大で約1.7cmの高エコーの結石が複数あり、後方に音響陰影を伴うと記載されています。
後方エコー増強(posterior acoustic enhancement)
嚢胞のように液体で満たされた構造は、音が弱まりにくいため、その後ろの組織が周りより明るく写ります。後方エコー増強は嚢胞を見つける手がかりですが、液体だけでは起こりません。肝細胞癌の220病変の検討では、ほぼ半数(46.4%)で軽度〜著明な後方エコー増強が見られ、陰影を伴ったのは0.9%でした(Maturen 2011)。肝腫瘤で後方エコー増強があっても、嚢胞と決めつけず、他の所見と合わせて判断します。
乳房の腫瘤での後方エコーの見方は乳腺エコーの解剖と内部エコー・後方エコー(増強・減弱)からの鑑別診断で解説しています。
| 陰影・増強 | 原因 | 疑うもの |
|---|---|---|
| 後ろが黒く抜ける(陰影) | 音が通らない・強く吸収される | 結石、石灰化、骨、ガス、線維の多い腫瘤 |
| 後ろが明るい(増強) | 音が弱まりにくい | 嚢胞、液体を多く含む腫瘤。肝細胞癌でも見られる(Maturen 2011) |
| 後方エコー無変化 | 周りの組織と同程度の減衰 | 充実性の腫瘤など |
ないものが見えるアーチファクト
多重反射(reverberation)・リングダウン・コメットテール
強い反射体(プローブの表面、ガス、金属、石灰化など)の間で音が行き来すると、等間隔に並んだ線が深いほうに続いて見えます。これが多重反射です。反射体が小さく、短い間隔で線が詰まったものはコメットテール(comet tail、彗星の尾)、非常に細かい線が集まって長い帯状になったものはリングダウン(ring-down)と呼ばれます(Feldman 2009)。
症例 60歳代男性 リングダウンアーチファクト

引用:Radiopaedia(Ring down artifact)
経直腸の前立腺エコーの画像です。症例ページでは、尿道カテーテルの中に溜まった小さな空気の後ろに、緊密な多重反射(リングダウン)が出ると記載されています。矢印は症例ページの注釈です。
コメットテールは、胆嚢壁が厚いときによく見られます。胆嚢摘出術で病理を確認した150例では、コメットテールがあった肥厚性病変はすべて良性(腺筋腫症が47.3%、慢性胆嚢炎が49.3%)で、悪性は含まれませんでした(Oh 2019)。胆嚢の病変の見分け方は胆嚢ポリープとは?健診のエコーで言われたらにもまとめています。
肺のエコーのB-line(Bライン)
肺は空気が多いため、胸膜の面で音が強く反射し、縦方向の多重反射が出ます。国際的な見解(WFUMB 2021)では、B-lineは胸膜の線が整っているもので、除外すべき病態(肺炎や肺挫傷など)を除けば心原性肺水腫の特徴的な所見とされます。一方、胸膜の線が不整なものはコメットテールと呼び、さまざまな肺実質の病気で見られます(Mathis 2021)。
鏡面像・サイドローブ・ビーム幅
| 名前 | 見え方 | 原因 | 確かめ方 |
|---|---|---|---|
| 鏡面像(mirror image) | 強い反射面(横隔膜など)の反対側に、同じ構造が映る | 音が反射面で折り返されて戻る | プローブの角度を変えると位置や強さが変わる(Feldman 2009) |
| サイドローブ | 嚢胞や膀胱の中に、細かい内部エコーが出る | ビームの横にもれた弱い音の成分が強い反射を拾う | 角度や位置を変えて消えるか見る(Feldman 2009) |
| ビーム幅 | 小さな嚢胞に内部エコーが入ったように見える | ビームの厚みの範囲の情報が混ざる | 焦点を合わせる、別の断面で確かめる(Feldman 2009) |
| 屈折・音速のずれ | 構造がずれて見える | 脂肪など音速の違う組織を通る | 別の窓から見る |
カラードプラの偽信号
カラードプラは、血流の向きと速さを色で重ねる方法です。血流がなくても色が出たり、血流があるのに色が出なかったりすることがあります。原因は装置の設定の不適切、体の構造、物理的・技術的な限界の3つに分けられます(Pozniak 1992)。
| 原因 | 起こること | 対処 |
|---|---|---|
| ゲイン・ウォールフィルター・速度スケールの設定 | 必要な血流の情報が失われたり、波形が歪んだりする(Pozniak 1992) | 設定を調整し直す |
| 強い反射面 | 反射面の反対側にドプラの鏡面像が出る(Pozniak 1992) | Bモードの像も確認する |
| ドプラの角度が90度に近い | 角度が大きいほど波形の質が落ち、90度に近づくと向きがはっきりせず、双方向の血流に見えることがある(Pozniak 1992) | プローブの角度を変える |
| サイドローブ・グレーティングローブ | 目的の位置と関係ない場所のドプラ情報が混じる(Pozniak 1992) | 位置や角度を変えて再現性を見る |
| 動き | 全体にドプラのずれが出る(Pozniak 1992) | 息を止めてもらう、プローブを固定する |
ツインクリング(twinkling)アーチファクト
結石などの硬い構造の表面に、カラーが急速にモザイク状に変わる像が出ることがあります。腎結石の43〜96%で見られると報告されており、表面の微小な気泡が関係するという説があります(Rokni 2021)。脾臓の類表皮嚢胞を、ドプラのツインクリングで見分けられた報告もあります(Kabaalioğlu 2024)。血流があるわけではないため、血流ではなく偽信号と判断します。
アーチファクトを見分けるチェックリスト
- プローブの角度を変える:サイドローブ、鏡面像、角度依存のドプラの偽像は変化し、本物の病変は同じ位置に残ります。
- 別の断面・別の窓から見る:2方向で確認できるか。
- 反射体の位置を確認する:偽像は強い反射体の「後ろ」や「周り」に出ます。
- 設定を見直す:ゲイン、焦点、ドプラのスケールと角度、フィルター。
- 空間コンパウンドの有無:複数の角度の像を重ねる処理で、後方エコーの変化が弱まることがあるため、肝腫瘤のスクリーニングでは処理を切って確かめることが勧められています(Maturen 2011)。
- CT・MRIで確かめる:エコーで判断に迷うときは、他の検査で補います。
エコーで腹痛の原因を調べる場面は腹痛患者への画像診断の適応は?に、頸動脈エコーでのドプラの見方は頸動脈エコーの正常値と結果の見方にまとめています。
よくある疑問(Q&A)
Q. 結石の後ろの黒い影は異常ですか?
A. 結石や石灰化の後ろの音響陰影は、結石があるときに出る典型的な所見で、診断の手がかりになります。検診で指摘された場合は、結石そのものの有無や大きさ、症状を担当の医師に確認してください。
Q. 嚢胞の後ろが明るいのは、嚢胞の証拠ですか?
A. 嚢胞でよく見られますが、嚢胞だけに出るわけではありません。肝細胞癌でもほぼ半数で後方エコー増強が見られました(Maturen 2011)。内部の様子や血流など、他の所見と合わせて判断します。
Q. カラードプラで血流が見えないと血栓ですか?
A. 血流が見えない原因には、ゲイン・ウォールフィルター・速度スケールの設定で必要な血流の情報が失われること、プローブの角度が90度に近いことなどがあります(Pozniak 1992)。血栓と決める前に、設定や角度を変えて確かめます。
Q. コメットテールがあると、がんではないのですか?
A. 胆嚢の肥厚性病変では、コメットテールがある病変はすべて良性でした(Oh 2019)。ただ、これは胆嚢の研究で、臓器によって違います。手術した甲状腺結節では、コメットテールを伴う高エコー点があった71結節のうち46結節が悪性で、嚢胞の部分に遊離して存在するものはすべて良性でしたが、充実部分に伴うものは良性の所見とは考えられないとされています(Wu 2018)。気になる症状があれば、医療機関で相談してください。
あわせて読みたい:CTのアーチファクト、MPR・MIP・MinIP・VRとは
あわせて読みたい:FAST(外傷の迅速超音波検査)とは、エコー(超音波)検査の基礎
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参考文献
- Feldman MK, Katyal S, Blackwood MS. US artifacts. Radiographics. 2009;29(4):1179-89. PubMed
- Pozniak MA, Zagzebski JA, Scanlan KA. Spectral and color Doppler artifacts. Radiographics. 1992;12(1):35-44. PubMed
- Maturen KE, Wasnik AP, Bailey JE, et al. Posterior acoustic enhancement in hepatocellular carcinoma. J Ultrasound Med. 2011;30(4):495-9. PubMed
- Oh SH, Han HY, Kim HJ. Comet tail artifact on ultrasonography: is it a reliable finding of benign gallbladder diseases? Ultrasonography. 2019;38(3):221-230. PubMed
- Wu H, Zhang B, Li J, et al. Echogenic foci with comet-tail artifact in resected thyroid nodules: Not an absolute predictor of benign disease. PLoS One. 2018;13(1):e0191505. PubMed
- Mathis G, Horn R, Morf S, et al. WFUMB position paper on reverberation artefacts in lung ultrasound: B-lines or comet-tails? Med Ultrason. 2021;23(1):70-73. PubMed
- Kabaalioğlu A, Uzer E, Keven A, et al. Splenic cysts: clues in sonographic differential diagnosis and a new role for twinkling artifact. Med Ultrason. 2024;26(2):125-130. PubMed
- Rokni E, Zinck S, Simon JC. Evaluation of Stone Features That Cause the Color Doppler Ultrasound Twinkling Artifact. Ultrasound Med Biol. 2021;47(5):1310-1318. PubMed
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