前障(ぜんしょう)は、被殻と島皮質の間にはさまれた、ごく薄い板状の灰白質です。その内側と外側にはそれぞれ白質の薄い層があり、内側が外包、外側が最外包と呼ばれます。さらに基底核の内側を走る太い白質の束が内包です。基底核の周りは「灰白質と白質が交互に重なったサンドイッチ」になっていて、これが頭部CT・MRIの基底核の高さを読むときの基本の形です。この記事では、画像診断cafeの正常例の頭部MRI・CTに色を付けて、前障・外包・内包がどこにあり、どう並んでいるかを解説します。
先に結論:基底核の高さを外側から内側へ
- 外側から順に、島皮質 → 最外包 → 前障 → 外包 → 被殻 → 淡蒼球 → 内包 → 視床・尾状核と並びます
- 前障:被殻の外側に沿う細い線状の灰白質。T2強調像で被殻と同じくらいの灰色の細い線に見えます
- 外包:前障と被殻の間の細い白質の線。最外包は前障と島皮質の間の白質です
- 内包:レンズ核(被殻・淡蒼球)と、尾状核・視床の間にある「く」の字形の白質。前脚・膝・後脚に分かれます
- CTでは前障・外包は細すぎてはっきりしないことが多く、MRI(T2強調像)で見やすくなります
前障・外包はどこにある?(頭部MRI)
頭部MRIの横断像で、側脳室の前角と視床が見える基底核の高さを選び、被殻の外側の縁を拡大してみます。

被殻(青)の外側の縁に沿って、細い黄色の外包、そのさらに外側に細いオレンジの前障が並びます。被殻の内側には淡蒼球(紫)があり、前障のさらに外側が最外包と島皮質です(片側のみ色付け)。
画像:画像診断cafe(正常例)
前障は前後・上下にはある程度の広がりがありますが、左右の厚みはとても薄く、横断像では1本の細い線にしか見えません。前障の外側の白質(最外包)と内側の白質(外包)にはさまれているため、T2強調像では「白っぽい線・灰色の線・白っぽい線」が島皮質と被殻の間に並んで見えるのが正常の姿です。
前障の下の端:前交連の高さ
基底核の下のほう(前交連が見える高さ)でも、前障は被殻の外側に沿って続いています。

被殻(青)の外側に前障(オレンジ)が細い線として残り、被殻の内側には淡蒼球(紫)、その前を左右にわたる前交連(黄)が見えます。前障の下端は扁桃体の近くまで伸びています。
画像:画像診断cafe(正常例)
内包はどこにある?(前脚・膝・後脚)
内包は、大脳皮質と脳幹・脊髄、視床と大脳皮質をつなぐ線維が集まって通る白質の束です。横断像では、内側に開いた「く」の字の形に見えます。

緑の「く」の字が内包です。前の部分(前脚)は尾状核頭(水色)とレンズ核の間、後ろの部分(後脚)は視床(ピンク)とレンズ核の間を通り、その曲がり角が膝です。淡蒼球(紫)は内包のすぐ外側にあります。
画像:画像診断cafe(正常例)
- 前脚:尾状核頭とレンズ核の間。前頭葉と視床をつなぐ線維などが通ります
- 膝:曲がり角。顔や舌を動かす線維(皮質延髄路)が通るとされます
- 後脚:視床とレンズ核の間。手足を動かす錐体路(皮質脊髄路)や、体の感覚を大脳へ運ぶ線維が通ります。後脚の後ろのほうには視放線・聴放線の始まりも通ります
錐体路が内包後脚から大脳脚へどう続くかは錐体路(皮質脊髄路)のMRI解剖で解説しています。
基底核より上のスライスでは、内包は放線冠へ移り、さらに上で半卵円中心になります。

前障より上の高さでは、尾状核(水色)と被殻(青)・視床(ピンク)の間に内包(緑)の上の部分が残ります。ここから上では内包の線維が扇のように広がって放線冠になります。
画像:画像診断cafe(正常例)
CTで見る基底核の高さ
頭部CTでも、基底核の高さで同じ並びを確認できます。CTでは灰白質がやや白く、白質がやや黒く見えるので、被殻・淡蒼球・視床(灰白質)と内包(白質)のコントラストで「く」の字を探します。

外側から島(②)、前障(①)、被殻(③)、その内側に内包(⑤)、前方に尾状核(⑥)、後方に視床(⑦)が並びます。淡蒼球(④)は被殻の内側の小さな三角形です(構造ごとに片側だけ色付け)。
画像:画像診断cafe(正常例)
CTでは前障・外包・最外包はそれぞれが細すぎて、一本ずつ見分けるのは難しいことが多いです。実際の読影では「島皮質と被殻の間の細い帯」としてまとめて見て、左右差や、そこに低吸収・出血がないかを確認します。頭部CT全体の高さごとの見方は頭部CTの解剖(高さごと)にまとめています。
周りの構造と血管支配
- 外側:最外包 → 島皮質 → シルビウス裂(中大脳動脈の枝が走る)
- 内側:外包 → 被殻 → 淡蒼球 → 内包
- 血管:被殻・外包・内包の上の部分には、中大脳動脈から出る細い穿通枝(レンズ核線条体動脈)が分布します。内包後脚の下の部分は前脈絡動脈、内包前脚・尾状核頭の一部はホイブナー反回動脈も関わります(大脳基底核の血管支配一覧、外側線条体動脈とレンズ核線条体動脈、前脈絡叢動脈(AChA)とは?)
基底核そのもの(尾状核・被殻・淡蒼球)の場所と働きは大脳基底核とは?、尾状核は尾状核とはどこ?で解説しています。
前障・外包・内包の働き
- 前障:大脳皮質の広い範囲と双方向に線維でつながっていることが知られていますが、何をしているかはまだはっきりしていません。さまざまな感覚や注意の情報を束ねる役割があるのではないかという仮説が出されています(Crick 2005)
- 外包・最外包:前頭葉と側頭葉、皮質と線条体などを結ぶ線維が通る白質です。外包には大脳皮質から被殻へ向かう線維も含まれます
- 内包:運動・感覚の主要な線維が狭い範囲に集まる場所です。そのため小さな梗塞や出血でも、反対側の手足の麻痺やしびれが強く出ることがあります
よく間違える構造
- 前障と外包:どちらも被殻の外側の細い線ですが、前障は灰白質、外包は白質です。T2強調像では前障が灰色、外包・最外包がそれより少し白く(FLAIRでは暗く)見えます
- 島皮質と前障:島皮質はシルビウス裂の奥の大脳皮質で、前障より外側にあり、脳回のでこぼこがあります
- 淡蒼球と内包:淡蒼球は内包のすぐ外側の灰白質です。CTで淡蒼球が石灰化して白く見えるのは高齢者ではよくある所見で、多くは心配いりません
- 血管周囲腔:基底核の下のほうには、小さな丸い髄液のすき間(血管周囲腔)が正常でもよく見え、ラクナ梗塞と間違えやすい場所です(血管周囲腔(Virchow-Robin腔)とは?)
前障・外包・内包の位置が役立つ病気
- 被殻出血:高血圧性脳出血でいちばん多い場所の一つで、被殻の外側から始まり、外包・前障の方向や内包へ広がります。内包に及ぶと麻痺が強くなります(被殻出血とは?、脳出血のCT画像診断、外傷性基底核血腫)
- ラクナ梗塞・BAD:内包後脚・放線冠の小さな梗塞は、小さくても片麻痺の原因になります(ラクナ梗塞とは?、BAD(分枝粥腫型梗塞)とは?、戦略拠点型梗塞(内包膝部など))
- 視床出血:内包後脚のすぐ内側にあるため、出血が内包へ及ぶと麻痺や感覚障害が出ます(視床出血とは?)
- 外包・前障に左右対称の病変が出る病気:CADASILでは外包や側頭極の白質にT2強調像・FLAIRの高信号が目立ちます。Wilson病やメタノール中毒などでは被殻・その周りに左右対称の変化が出ます(CADASIL・CARASILとは?、Wilson病のMRI、メタノール中毒のMRI)
- 内包後脚の信号変化:低血糖脳症では内包後脚にDWIの高信号が出ることがあります(低血糖脳症とは?)
MRIの横断像全体の流れは頭部MRIの解剖(横断像レベルごと)で確認できます。
画像診断cafeで自分で確かめる
この記事の図は、解剖ビューア「画像診断cafe」の頭部MRI・頭部CTから作っています。ビューアで基底核の高さを上下に動かすと、前障・外包が被殻の外側に沿って続く様子や、内包が「く」の字から放線冠へ移っていく様子を色付きで確かめられます。
- Web版:画像診断cafe 頭部MRI/画像診断cafe 頭部CT
- iPhone:App Storeで「画像診断cafe」を検索
- Android:Google Play「画像診断cafe」
前障・外包・内包についてよくある疑問(Q&A)
Q. 前障は頭部CTで見えますか?
A. 前障はとても薄いため、CTでは外包・最外包と一緒に「島皮質と被殻の間の細い帯」としてしか見えないことが多いです。一本ずつ見分けたいときは、MRIのT2強調像の横断像や冠状断が向いています。
Q. 内包に小さな梗塞があると言われました。小さくても症状が出るのはなぜですか?
A. 内包には手足を動かす線維や体の感覚を伝える線維が狭い範囲に集まっているためです。同じ大きさの梗塞でも、場所が内包後脚だと症状がはっきり出やすくなります。
Q. 外包と内包はどう違いますか?
A. どちらも基底核のそばの白質ですが、外包は被殻の外側(前障との間)の薄い層、内包はレンズ核の内側(尾状核・視床との間)の太い束です。運動や感覚の主な線維が通るのは内包です。
参考文献
- Crick FC, Koch C. What is the function of the claustrum? Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2005;360(1458):1271-9. PubMed
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