先に結論:外傷性基底核血腫
- 外傷性基底核血腫は頭部外傷で基底核(被殻・淡蒼球など)に出血するもので、レンズ核線条体動脈などの穿通枝がずれの力で切れることで起こり、重症頭部外傷に伴うことが多いです
- 高血圧性の被殻出血との区別が大切で、頭蓋骨骨折・脳挫傷・くも膜下出血の合併、若い年齢は外傷性を示唆します
- 遅れて出血が出たり増えたりすることがあるため経過のCTが重要で、MRI(SWI)でびまん性軸索損傷の微小出血も確認します
- 基底核は尾状核・被殻・淡蒼球などからなり、CTでは内包をはさんで外側に被殻・淡蒼球、前内側に尾状核が見えます
外傷性基底核血腫(Traumatic Basal Ganglia Hematoma: TBGH)とは?
- 頭部外傷に伴い基底核(被殻・淡蒼球・尾状核など)や近傍(内包・視床)に生じる深部脳内出血。
- 重症頭部外傷1526例の検討では2.4%にみられた(Boto 2001)。
- 重篤な神経脱落症状を残す可能性があるため注意が必要である。
- 好発部位は被殻および淡蒼球であり、尾状核頭部にも見られる。
- 大脳基底核には中大脳動脈から分岐するレンズ核線条体動脈(Lenticulostriate arteries)が走行しており、この穿通枝が脳実質の急激な移動に伴って牽引・断裂することで出血が生じる。
- 加速・減速や回旋を伴う高エネルギー外傷(交通外傷など)が多い。本邦の20例の検討では、受傷機転は交通外傷12例・転落8例、血腫の部位は被殻が15例と最多で、平均血腫量は10.7mLであった。頭蓋骨骨折は25%と少ない一方、くも膜下出血(10例)や脳挫傷(9例)などの頭蓋内病変の合併が多く、死亡率は35%と予後不良であった。
- 片側性が多いが両側性もある。37例の検討では76%で血腫が打撲側と反対側にあり、びまん性軸索損傷の合併が73%にみられた(Boto 2001)。
- びまん性軸索損傷(DAI)を含む重症脳損傷スペクトラムの一部として現れることがあり、初期CTで見逃さないことが重要。
外傷性基底核血腫の画像所見
- 単純CTで基底核領域(主に被殻・淡蒼球)に境界明瞭な高吸収域(血腫)を認める。
- 血腫量は比較的小さいことが多い(20例で平均10.7mL: Takeuchi 2013)。25mLを超える血腫や増大する血腫は予後が悪かった(Boto 2001)。
- くも膜下出血、脳挫傷、頭蓋骨骨折などを合併している場合、外傷性の根拠となる。
- 受傷直後のCTでは不明瞭であっても、数時間から数日後のFollow up CTで血腫が出現・増大する「遅発性外傷性脳内血腫(DTICH)」の形態をとることがあるため、経時的な観察が不可欠。経過のCTを撮った34例中22例(65%)で、受傷後数日のうちに血腫が増大した(Boto 2001)。
- MRIは、CTでは検出困難な微細な損傷や、背景にあるDAIの評価に優れている。
- T2*WI / SWI(磁化率強調画像)が微小出血(Microbleeds)の検出に極めて有用。基底核の血腫に加え、皮質髄質境界(Subcortical white matter)、脳梁、脳幹に点状の低信号域(含鉄血色素(ヘモジデリン)の沈着)が散見される場合、強い回転加速度によるDAIの合併が示唆される。
- DWI(拡散強調画像):受傷早期の剪断損傷による細胞性浮腫を高信号として検出する場合がある。
症例 50歳代男性 交通事故

2025 Apr 14;9(15):CASE24625. doi: 10.3171/CASE24625.より引用。
初回CT(受傷後36時間)では左基底核出血および左側頭葉に浮腫を伴う脳挫傷を認めています。
左基底核出血は外傷性基底核出血と考えられます。
いずれも15日後CTでは軽減しています。
大脳基底核とは?CTで見る位置
| 部位 | CTでの位置 |
|---|---|
| 尾状核 | 側脳室前角の外側の壁に沿う。尾状核頭部は前角のすぐ外側 |
| 被殻 | 内包の外側にあるレンズ核の外側部。外側には外包・前障・島がある |
| 淡蒼球 | 被殻の内側(レンズ核の内側部)で、内包とのあいだにある |
| (視床) | 基底核ではないが近くにあり、内包後脚の内側に見える |
基底核の出血では、出血した側と反対側の手足の麻痺やしびれが起こりやすく、左側の出血では右半身の症状やことばの障害が出ることがあります。頭を打ったあとに手足の動かしにくさや意識の変化があれば、すぐに医療機関を受診してください。
高血圧性脳出血との鑑別診断
- 臨床現場において最も重要となるのが、既存の高血圧による「被殻出血」との鑑別。特に外傷の目撃がなく、傷病者が倒れている状態で発見された場合、以下のポイントが鑑別の指標となる。
| 鑑別点 | 外傷性基底核血腫 (TBGH) | 高血圧性脳出血 (被殻出血) |
|---|---|---|
| 好発年齢 | 若年者〜全年齢(事故等)。37例の平均28歳(Boto 2001) | 中高年 |
| 血腫の部位 | 被殻、淡蒼球(多発・両側のことも) | 被殻 |
| 合併所見 | 頭蓋骨骨折、DAI、皮質と白質の境界の挫傷、脳幹の挫傷(Yesuf 2025) | 左室肥大、網膜症など |
| MRI (SWI) | 他の部位(脳梁等)に微小出血あり | 通常は局所的 |
参考文献
- Boto GR, et al. Basal ganglia hematomas in severely head injured patients: clinicoradiological analysis of 37 cases. J Neurosurg. 2001;94(2):224-232. PubMed
- Adams JH, et al. Diffuse axonal injury in head injury: definition, diagnosis and grading. Histopathology. 1989;15(1):49-59. PubMed
- Macpherson P, Teasdale E, Dhaker S, et al. The significance of traumatic haematoma in the region of the basal ganglia. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1986;49(1):29-34. PubMed
- 日本脳神経外傷学会 (監修). 頭部外傷治療・管理のガイドライン 第4版. 医学書院, 2019.
- Takeuchi S, Takasato Y, Masaoka H, et al. Traumatic basal ganglia hematomas: an analysis of 20 cases. Acta Neurochir Suppl. 2013;118:139-42. PubMed
- Yesuf EF, Zewdie AZ, Shiferaw MY, et al. Traumatic basal ganglia hemorrhage: illustrative cases. J Neurosurg Case Lessons. 2025;9(15):CASE24625. PubMed
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