脳梗塞には大きく

  • 心原性脳梗塞
  • アテローム血栓性脳梗塞
  • ラクナ梗塞

の3種類に分けられます。

今回取り扱う脳梗塞のBADタイプ(bad type)は少し特殊な脳梗塞です。

アテローム血栓性脳梗塞に分類されるのですが、血管はラクナ梗塞が起こる血管(深部穿通動脈)であるためです。

今回はBADタイプ(読み方はそのまま、ビーエーディー)の脳梗塞について、図や実際のMRI画像、さらにはそれらを動画にしてまとめました。

先に結論:BAD(分枝粥腫型梗塞)とは

BAD(Branch Atheromatous Disease)は、日本語で分枝粥腫型梗塞(ぶんしじゅくしゅがたこうそく)とよばれ、脳の深いところに入る細い血管(穿通枝)の根元(起始部)が動脈硬化で詰まる脳梗塞です。ラクナ梗塞と同じ血管に起こりますが、根元で詰まるため梗塞が細長く大きくなり、発症後に麻痺などの症状がだんだん悪くなりやすいのが特徴です。

根元から詰まるため、梗塞は穿通枝の走行に沿って上下に細長くなります。好発部位はレンズ核線条体動脈領域(基底核〜放線冠)と傍正中橋動脈領域(橋)。MRI拡散強調像で、基底核〜放線冠に横断像3スライス以上連続する梗塞、橋では橋の腹側の表面に接する梗塞が目安です。

BADタイプの脳梗塞とは?

BAD型脳梗塞とはBranch-atheromatous disease 型脳梗塞の頭文字を取ったもので、日本語にすると分枝粥腫病型の脳梗塞ということになります。

読み方は「ぶんしじゅくしゅがたこうそく」です。もとの病名 branch atheromatous disease は「分枝粥腫病(ぶんしじゅくしゅびょう)」と訳され、1989年にCaplanが提唱した概念です(Caplan 1989)。

すなわち、深部穿通枝(の起始部)に動脈硬化(粥腫形成)が生じるタイプの脳梗塞ということができます。

深部穿通枝はその末梢でラクナ梗塞が起こる動脈です。

また動脈硬化(粥腫形成)はアテローム血栓性脳梗塞の原因となります。

つまり、本来ラクナ梗塞が起こる血管に、アテローム血栓性脳梗塞が起こるのがBAD型脳梗塞です。

ただし、ラクナ梗塞とは梗塞が起こる場所が異なります。

すなわち、

  • BAD型脳梗塞は深部穿通枝の起始部が閉塞して起こる梗塞
  • ラクナ梗塞は深部穿通枝の末梢が閉塞して起こる梗塞

という違いがあります。

起始部が閉塞すると、末梢が閉塞するラクナ梗塞よりも梗塞の範囲は当然広くなり、症状も重症です。

ラクナ梗塞は症状が現れない無症候性のものもありますが、BAD型脳梗塞の場合は、発症時に症状が増悪しやすい傾向にあります。なおBADには統一された定義がなく、梗塞の大きさ(スライス数など)の基準も研究ごとに異なります。一方で、発症後早期の神経症状の増悪(early neurological deterioration)が多いことは、多くの研究で一貫して報告されています。

BADとラクナ梗塞の違い(縦に長い穿通枝梗塞)

bad

分枝粥腫型梗塞(BAD) ラクナ梗塞
詰まる場所 穿通枝の起始部(親動脈との分かれ目) 穿通枝の末梢
原因 動脈硬化(粥腫=アテローム) 細い血管の変性(リポヒアリノーシス。高血圧など)
MRI(拡散強調像)の形 穿通枝に沿って縦に細長く、何スライスにもまたがる。橋では橋の腹側表面まで達する 小さく、数スライス以内
経過 発症後に麻痺が進行しやすい 無症状のこともある

何スライスにも及ぶ「ラクナ梗塞らしきもの」を見たら、穿通枝全体の梗塞であるBADを考え、親動脈の評価をしましょう。

BADの定義(MRIでの目安)と進行しやすさ

BADは本来「穿通枝の根元の動脈硬化」という血管の病変を指しますが、細い穿通枝の壁は見えにくいため、実際にはMRIでの梗塞の場所・大きさ・形から判断されます(Petrone 2016)。

  • レンズ核線条体動脈領域:横断像で直径10mmを超え、3スライス以上に見える梗塞(Yamamoto 2011)。直径15mm以上かつ3スライスを超える梗塞とした研究もあります(Nakase 2013)
  • 傍正中橋動脈領域:橋の腹側の表面に達する片側の梗塞(Yamamoto 2011)
  • BAD 42例とラクナ梗塞57例の比較では、発症48時間以内に症状が悪化した割合はBAD 38.1%、ラクナ梗塞12.3%でした(Nakase 2013)。394例の検討でも、BADは進行性の運動麻痺と独立して関連していました(Yamamoto 2011)。
  • 中国20施設の前向き研究(476例)では、レンズ核線条体動脈領域が60.7%、傍正中橋動脈領域が39.3%で、早期の神経症状の増悪は14.7%に、発症から中央値38時間で起こりました(Li 2024)。手足の動かしにくさなど気になる症状があればすぐ医療機関を受診してください。

BADタイプの脳梗塞のMRI画像所見は?

BAD型脳梗塞の好発部位は

  • 基底核〜放線冠(レンズ核線条体動脈領域)
  • 橋(傍正中橋動脈領域)

の2カ所が挙げられます。

基底核〜放線冠(レンズ核線条体動脈領域)のBAD型脳梗塞の画像所見

MRIの拡散強調像において、基底核〜放線冠へと連続し、横断像で3スライス以上に渡る梗塞巣が見られるのが特徴です(Yamamoto 2011)。

症例 60歳代男性 右上肢運動障害

拡散強調像(DWI)の横断像です。

左の基底核から放線冠にかけて3スライス連続する異常高信号を認めています。

拡散強調像(DWI)の冠状断像では、上下方向に伸びている異常な高信号域を認めています。

左レンズ核線条体動脈領域のBAD型梗塞(分枝粥腫型梗塞)と診断されました。

動画で学ぶBAD(左外側線条体動脈領域)

▶キー画像bad2 bad3bad4

動画で見るBAD(別の症例)

ラクナ梗塞に見えても、穿通枝の走行に沿って複数のスライスに渡り縦方向に伸びる梗塞は、BADを考えます。

傍正中橋動脈は脳底動脈から直接分かれて橋の正中のすぐ横に入る穿通枝、放線冠は主にレンズ核線条体動脈と、脳の表面から入る髄質動脈に養われる白質です。

橋(傍正中橋動脈領域)のBAD型脳梗塞の画像所見

橋では橋腹側面から被蓋方向(背側)へ進展する梗塞巣が特徴的です(Yamamoto 2011)。

症例 80歳代男性 座れない、立てない、呂律困難

橋腹側面から被蓋方向(背側)へ進展する異常高信号を認めています。

傍正中橋動脈領域のBAD型梗塞(分枝粥腫型梗塞)と診断されました。

症例 60歳代女性 橋梗塞(分枝粥腫型梗塞)

bad

脳底動脈からの穿通枝である傍正中動脈(paramedian artery)領域の分枝粥腫型梗塞。MRAにて壁在プラークあり。
動画で学ぶ分枝粥腫型梗塞(傍正中動脈領域)

▶キー画像

badd

親動脈の評価(MRA・血管壁MRI)

何スライスにも及ぶ梗塞を見たら、MRAで親動脈(中大脳動脈M1や脳底動脈)を評価します。穿通枝そのものの壁は見えにくいため、多くの研究ではBADを梗塞の場所・大きさ・形から推定しています。近年は高分解能の血管壁MRIで、親動脈から穿通枝の起始部に及ぶプラークをとらえる試みが進んでいます(Petrone 2016)。3テスラMRIの血管壁画像で、脳底動脈の背側壁のプラークが傍正中橋動脈の起始部に広がっているのを示した症例報告もあります(Miyaji 2014)。

BADを診断する上で知っておくべき動脈の支配領域

  • 外側線条体動脈(LSA):中大脳動脈のM1から分岐し、被殻、淡蒼球などを支配。
  • 前脈絡動脈(AChA):内頚動脈の後交通動脈分岐のすぐ遠位より分枝し、内包後脚などを栄養。
  • 傍正中動脈(paramedian artery):脳底動脈から出る穿通枝で、橋の正中寄りを栄養。

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参考)脳血管支配域と脳MRI画像の関係、脳幹部の支配血管(血流支配領域)

BADタイプの脳梗塞の治療は?

同じ血管に生じる梗塞ではありますが、BAD型脳梗塞はラクナ梗塞とは異なり、アテローム硬化(粥腫形成)が原因で脳梗塞が起こるため(発症機序が異なるため)、アテローム血栓性脳梗塞に準じて抗血小板薬などで治療されることが多いです。ただし、BADで効果が確かめられた治療はまだ確立していません(Deguchi 2023)。中国の前向き研究でも、急性期治療の違いは予後と関連しませんでした(Li 2024)。970例のランダム化試験では、アスピリンに点滴の抗血小板薬を加えても、早期の悪化や再発は有意には減りませんでした(Wang 2026)。

BADの注意点

BAD型脳梗塞は、あくまで1つの深部穿通枝領域に限局するものです。

複数の深部穿通枝領域に広範に生じる梗塞は、線条体内包梗塞(SCI:striatocapsular infarction)と呼ばれ、中大脳動脈M1への塞栓(早く再開通することが多い)やM1の狭窄によって、複数のレンズ核線条体動脈の入口がまとめて詰まって生じる梗塞であり、BADとは異なるので注意が必要です(Weiller 1990)。

BADでよくある疑問(Q&A)

Q. 脳梗塞の「BAD」とは何の略?読み方は?
A. branch atheromatous disease(分枝粥腫病)の略で、この病態で起こる脳梗塞を分枝粥腫型梗塞(ぶんしじゅくしゅがたこうそく)とよびます。BADはそのまま「ビーエーディー」と読みます。

Q. BADは治りますか?
A. 476例の前向き研究では、90日後に日常生活がおおむね自立した状態(mRS 0〜2)まで回復した人が86.5%でした(Li 2024)。ただし急性期に麻痺が悪化しやすいため、入院での治療と観察が大切です。急な手足の麻痺やろれつが回らないなどの症状があれば、すぐに救急受診してください。

Q. BADの後遺症は?
A. BAD 41例とラクナ梗塞35例の比較では、退院時の日常生活の自立度に差はありませんでしたが、杖や装具を使う人はBADで多くみられました(Niimi 2016)。

最後に

通常の脳梗塞とは少し特殊なタイプであるBAD型の脳梗塞(分枝粥腫型梗塞)についてまとめました。

  • BAD型脳梗塞は、深部穿通枝(の起始部)に動脈硬化(粥腫形成)が生じるタイプの脳梗塞。
  • ラクナ梗塞よりも梗塞の範囲が広く発症時に症状が増悪しやすい傾向にある。
  • 好発部位は、
    中大脳動脈→レンズ核線条体動脈(→大脳基底核〜放線冠を栄養)
    脳底動脈→傍正中橋動脈(→橋を栄養)

という点がポイントとなります。

参考になれば幸いですm(_ _)m

参考文献:

1)画像診断 Vol.36 No.2 2016 P150-151
2)ここまでわかる頭部救急のCT・MRI P330-331

  1. Caplan LR. Intracranial branch atheromatous disease: a neglected, understudied, and underused concept. Neurology. 1989;39(9):1246-50. PubMed
  2. Petrone L, Nannoni S, Del Bene A, et al. Branch Atheromatous Disease: A Clinically Meaningful, Yet Unproven Concept. Cerebrovasc Dis. 2016;41(1-2):87-95. PubMed
  3. Yamamoto Y, Ohara T, Hamanaka M, et al. Characteristics of intracranial branch atheromatous disease and its association with progressive motor deficits. J Neurol Sci. 2011;304(1-2):78-82. PubMed
  4. Nakase T, Yoshioka S, Sasaki M, et al. Clinical evaluation of lacunar infarction and branch atheromatous disease. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2013;22(4):406-412. PubMed
  5. Niimi M, Abo M, Miyano S, et al. Comparison of Functional Outcome between Lacunar Infarction and Branch Atheromatous Disease in Lenticulostriate Artery Territory. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2016;25(9):2271-2275. PubMed
  6. Weiller C, Ringelstein EB, Reiche W, et al. The large striatocapsular infarct. A clinical and pathophysiological entity. Arch Neurol. 1990;47(10):1085-1091. PubMed
  7. Wang Y, Liao X, Feng S, et al. Tirofiban for Branch Atheromatous Disease-Related Stroke: The STRATEGY Randomized Clinical Trial. JAMA Neurol. 2026;83(10):956-964. PubMed
  8. Deguchi I, Takahashi S. Pathophysiology and Optimal Treatment of Intracranial Branch Atheromatous Disease. J Atheroscler Thromb. 2023;30(7):701-709. PubMed
  9. Li S, Wang L, Liu B, et al. Clinical and Prognostic Characteristics of Acute BAD-Related Stroke: A Multicenter MRI-Based Prospective Study. Stroke. 2024;55(10):2431-2438. PubMed
  10. Miyaji Y, Kawabata Y, Joki H, et al. High-resolution magnetic resonance imaging findings of basilar artery plaque in a patient with branch atheromatous disease: a case report. J Med Case Rep. 2014;8:395. PubMed

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