尾状核の血管支配

尾状核(caudate nucleus)は、頭部・体部・尾部で関与する穿通枝系が以下のように異なる。
- 頭部内側:前大脳動脈(ACA)からのホイブナー反回動脈(recurrent artery of Heubner)+内側レンズ核線条体動脈
- 頭部外側〜体部:中大脳動脈(MCA)からのレンズ核線条体動脈(lenticulostriate arteries, LSA)
- 尾部:内頚動脈(ICA)からの前脈絡叢動脈(anterior choroidal artery, AChA)
尾状核頭部:ACA系とMCA系の境界領域
- 尾状核頭部の前内側〜腹側は、前大脳動脈から分岐するホイブナー反回動脈および内側レンズ核線条体動脈により灌流される。
- ホイブナー反回動脈は、尾状核頭部下方と内包前脚前部などを支配する最大の内側穿通枝である。
- 一方、頭部の外側・背側および体部・上方は、中大脳動脈M1から分岐するレンズ核線条体動脈(LSA)によって灌流される。
- したがって、実際には、尾状核頭部は「ACA系(ホイブナー反回動脈+内側LSA)」と「MCA LSA系」が重なり合う境界領域として理解するのが妥当。
尾状核体部:MCAレンズ核線条体動脈支配
- 尾状核体部は、側脳室体部の床に沿って後方へ伸びる領域であり、その血流は主として中大脳動脈から分岐するレンズ核線条体動脈によって供給される。
尾状核尾部:前脈絡叢動脈領域
- 尾状核尾部は、側脳室下角の天井として側頭葉内側へ回り込む細長い部分であり、血管支配は前脈絡叢動脈(AChA)が主体である。
- 前脈絡叢動脈は内頚動脈から分岐し、尾状核尾部のほか、内包後脚、外側膝状体、扁桃体、海馬頭などを灌流する。
- そのため、尾状核尾部を「MCAレンズ核線条体動脈支配」と一括してしまうのは不正確であり、「尾部=前脈絡叢動脈領域」として区別して覚えておく必要がある。
尾状核の脳梗塞の画像診断のポイント
おおよその目安として
- 前交連、後交連が見えているスライスでは尾状核頭部→前大脳動脈領域
- 基底核レベルでは尾状核体部→中大脳動脈領域
となるため、脳梗塞などの診断では原因血管の推定に役立つ。
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参考文献
- Driscoll ME, et al. Neuroanatomy, Nucleus Caudate. StatPearls. NCBI Bookshelf, 2023. (尾状核の血流がACA・MCA・前脈絡叢動脈から供給され、頭部は主にACA、上方頭部と体部はMCAレンズ核線条体動脈からの供給が主体であると記載)
- Munakomi S, Das JM. Neuroanatomy, Recurrent Artery of Heubner. StatPearls, 2019–. (ホイブナー反回動脈が尾状核頭部下方および内包前脚などを灌流する最大の内側レンズ核線条体動脈であると解説)
- Yamamoto Y, et al. Cerebral deep vascular architectures and subcortical infarcts. Rinsho Shinkeigaku. 2020;60:397–406. (レンズ核線条体動脈が尾状核頭部外側半および体部、被殻、内包上部を灌流することを示した検討)
- Radiopaedia.org. Caudate nucleus – arterial supply. (尾状核頭部上方および体部がMCAレンズ核線条体穿通枝から血流を受けることを記載)
- Radiopaedia.org / Wikipedia. Anterior choroidal artery. (前脈絡叢動脈の支配領域として尾状核尾部・内包後脚・外側膝状体などを含むと記載)
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