脳出血の中で、被殻出血についで多いといわれる視床出血。
視床は、脳の中心に位置するため、被殻出血よりも治療が困難となります。
今回は、そんな視床出血(ししょうしゅっけつ、英語で「thalamic hemorrhage」)について・・・
- 症状
- 原因
- 診断
- 実際のCT画像
- 治療方法
- 看護
- 予後
ということを、詳しくお話ししていきたいと思います。
視床出血とは?
視床出血とは、大脳と中脳をつなぐ、間脳の一部である視床で起こる出血のことを指します。
脳出血の中で約30%を占め、被殻出血についで多い脳内出血です。
脳に血流を送る(脳を栄養する)血管の中でも、後大脳動脈の枝である視床穿通動脈・視床膝状体動脈からの出血が多く、脳出血の中でも重症なものとなります。
実際のCT画像での視床の位置は、次のようになります。
横断像(輪切り)で、被殻や内包などと同じスライス(断面)に存在していることがわかります。
また、脳室に接していることから、視床出血が脳室へ穿破しやすいことも納得できますね。
視床出血の症状とは?
この視床に出血が起こると、
- 頭痛
- 脱力感
- めまい
- 吐き気や嘔吐
- 感覚障害
- 意識障害
- 片麻痺
- 眼球の内下方偏位
といった症状が現れることがあります。
これらの症状が全て出るわけではありませんが、脳内で出血が起こりすぐに症状が出るものから、時間の経過につれ出るものなど、その人によっても異なります。
中には失語症となることもありますが、特徴として多いのは瞳孔が小さくなったり、反射が悪くなったりといった目の異変(鼻先凝視)である神経症状です。
視床出血の原因は?
原因は、被殻出血と同様のことが言えます。
- 高血圧
- 外傷
- 脳動脈瘤
- 脳腫内出血
- 血液疾患
1番の原因は高血圧です。
そのため、血圧が1日のうちで最も高くなる日中に起こりやすいとも言われています。
その高血圧とは、慢性的な高血圧症状から動脈硬化が起こり、それによって出血を起こしてしまうというものです。
視床出血の診断は?
CT検査・MRI検査・MRA検査・脳血管造影などが検査として行われます。
特に、頭部CTで、視床部に高吸収域(白い領域)が認められると、被殻出血と診断します。
CT検査ではその他に、高吸収域周囲の浮腫や、第三脳室や側脳室にも血腫(脳室穿破(脳室に出血が及んでしまうこと))が認められることもあります。
視床出血のCT画像は?
では実際のCT画像を見てみましょう。
症例 70歳代女性
右視床に出血を示唆する高吸収域(白い塊)を認めています。
脳室への穿破は認めていません。
右視床出血と診断され、保存的に加療されました。
症例 60歳代男性 右下肢脱力と呂律困難
左視床から一部内包後脚に18mm大の高吸収(白い)血腫を認めています。
脳室への穿破は認めていません。
左視床出血と診断され、保存的に加療されました。
症例 60歳代男性 左上下肢麻痺、呂律困難
右視床から一部内包後脚に血腫を認めています。
より頭側のスライスでは、血腫は右視床から頭側に放線冠に進展し、さらに右の側脳室に穿破していることがわかります。
血腫の広がりの様子は冠状断像を観察するとより明瞭です。
右視床出血+脳室穿破と診断され、保存的に加療されました。
視床出血の治療方法は?
CTによる出血部位の確認と、意識レベルの評価によって、治療方針が決まります。
視床の外側には内包(白質部)があるため、血腫除去術の適応対象とはなりません。
そのため、基本的な治療法として、
- 呼吸を整える治療と管理
- 高血圧を抑える治療と管理
- 脳浮腫対策
- 投薬による止血
などが中心となります。
呼吸管理
意識障害を起こしている場合、そのまま放置すると症状が進行し、自力呼吸できずに死に至ってしまうこともあります。
そのため、まずは呼吸を整え、管理することが必要です。
高血圧の治療
高血圧が原因となるため、この血圧管理も大切です。
ただし、一気に下げるのではなく、血流を確保しつつ血圧をコントロールすることが重要となってきます。
脳浮腫対策・止血
また、脳浮腫が進むと脳ヘルニアを起こしてしまうこともあるため、脳内圧を下げつつ、止血などの処置も必要になってきます。
視床の外側には内包という運動神経が通る部位があるため、一般的に開頭血腫除去術の適応とはなりません。
手術適応例としては、水頭症により、脳ヘルニアが深刻な場合などで、その際には脳室ドレナージが検討されます。