脳出血の1つでもある被殻出血(読み方はひかくしゅっけつ)は、他の部位に比べても頻度が多く、脳出血の中でも40%を占めるほど多いものといわれています。
今回はこの被殻出血(読み方は「ひかくしゅっけつ」英語表記で「Putamen hemorrhage」)について
- 症状
- 原因
- CT画像所見
- 治療法
についてまとめました。
被殻出血とは?
脳の中央にある被殻(ひかく)と呼ばれる大脳基底核において、出血を生じるものを、被殻出血といいます。
被殻の場所(解剖)は実際のCT画像で次のようになります。
最初に申し上げた通り、脳出血の中でもこの被殻出血が、約40%という大部分にあたる最も好発する脳出血です。
その被殻出血の中でも、レンズ線条体動脈からの出血が多くなっています。
被殻出血だとどんな症状が現れる?
- 頭痛
- 片側麻痺
- 感覚障害
- 意識障害
- 失語症
- 共同偏視
- 視野障害
このような症状が挙げられますが、最も多いものとしては、頭痛の後、意識が薄れていくといったこと症状です。
そして、片側だけに出る運動障害や感覚障害が特徴でもあります。
これらの症状は、症状だけを聞くと他の病気とも間違われやすいものですが、このような症状が出るとまず脳の異変を疑います。
そこで画像診断をしたら、被殻出血が分かるというわけです。
これらの症状があり、家族が見ても何かおかしいと感じたらすぐさま急いで医療機関を受診する必要があるわけです。
被殻出血の原因は?
高血圧による動脈硬化が原因です!
ですが高血圧じたいは特別な自覚症状があるわけではないため、気付いてない人も多いものです。
中には検査等で高血圧が見つかり、薬などでコントロール治療している人も多くいらっしゃいます。
実際、動脈硬化が起こり被殻出血をして初めて症状が出ておかしい、と気づくということが多いのです。
そしてこの被殻出血は、高血圧性の脳内出血で最多となります。
被殻出血の診断は?CT画像所見は?
他の脳出血と同様に、診断はCT検査での画像診断が必要となります。
出血はCTで白く(高吸収)見えるのが特徴です。
実際の被殻出血の症例を見てみましょう。
症例 70歳代男性
右の被殻に1cm大の高吸収(白い!)を認めています。
右被殻出血を疑う所見です。
冠状断像でも同様です。
保存的に加療されました。
症例 50歳代男性 構音障害、左顔面麻痺
左の被殻に2cm大の高吸収(白い!)を認めています。
左被殻出血を疑う所見です。
こちらも保存的に加療されました。
10日後のCTでは血腫が吸収されて(小さくなっている)いる様子がわかります。
症例
(出典:医師国家試験データベース108I25)
左(向かって右側)の被殻に高吸収の出血を認めています。
脳室が右側へ圧排されています。
こちらはサイズが大きく手術適応となります。
被殻出血の治療は?
他の脳内出血に比べると死亡率はそこまで高くありません。
高血圧が原因であるのだから、もちろん血圧を下げる治療も必要で、それ以上出血を起こさないようにすることも大切です。
血腫じたいが大きなものでなければ、内科的治療のみとなることもありますが、手術治療も可能です。
手術方法としては、頭を開き、血腫部分を取り除く開頭血腫除去術が行われます。
ですが、中には手術が出来ない場合もあります。
手術の判断基準
- 意識がかろうじてある
- 脳ヘルニアの有無
- 血腫の大きさ
中には深い昏睡状態に陥ってる患者さんも・・・
その場合、逆に手術をすることで危険な状態となることも考えられます。
また、脳ヘルニアを起こしていると、その後に影響が出るため慎重な判断が必要となります。
大きすぎる血腫は他の部位をも圧迫しかねません。脳は様々な神経を司る機関なため、手遅れとなる前に処置が必要となります。
脳内出血の血腫の大きさによる手術適応
脳内出血の血腫の大きさによる手術適応は以下のようになります。
すなわち被殻出血の場合は、
- 血腫量が31ml以上(直径約4cm以上)
- 圧迫が高度
である場合に、手術適応となります。