まず脳血管性認知症は
- 多発梗塞性認知症
- Binswanger型血管性認知症
- 戦略拠点型梗塞による認知症
に分けられます。
このうち今回は、戦略拠点型梗塞による認知症についてまとめました。
戦略拠点破壊(障害)型血管障害性認知症(戦略拠点型梗塞に伴う認知症)とは?
- 仮に病巣(拠点)が小さくとも、認知に関わる神経機構のうえで重要な役割(戦略)を担っている部位が、脳梗塞に陥った場合、認知症を発現することがあります。これを戦略拠点破壊(障害)型血管障害性認知症(strategic infarct dementia)と言います。
strategic infarct dementiaを起しうる梗塞部位
- 左大脳半球病変
- 視床、視床下部
- 前大脳動脈領域
- 角回
- 前脳基底部
- 後大脳動脈領域+視床・海馬
- 乳頭
- 前交連
- 内包膝部
- 尾状核頭部
- 海馬
- 乳頭視床路(Vicq d‘Azyr束)
その他、優位半球の視床(視床前内側核)、内包膝部、尾状核頭部、海馬、またこれらの神経構造が深く関わる神経回路、Papez回路、乳頭視床路(Vicq d‘Azyr束)について、チェックする。
- Papez回路:海馬→脳弓→乳頭体→乳頭視床路(Vicq d‘Azyr束)→視床前核→帯状回→海馬傍回→海馬
※つまり、海馬から脳弓を介して乳頭体へ向かい、さらに乳頭体視床路に続き、視床前核に至る。視床前核でシナプスが替えられ、視床帯状回放線(Vicq d‘Azyr束)、帯状回から、帯状束を通り、海馬に戻って回路が閉じる。
しばしば見過ごされる程度のごく小さい病巣であっても、認知症発現に大きくかかわる場合があり、留意を要す。
症例 50歳代 10日前より急に物忘れが出現。
左視床内側核を中心に梗塞巣を認める。
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内包膝部梗塞
- 内包膝は前および後脚の間にある。皮質延髄路および皮質網様体路など視床と大脳皮質を結ぶ種々の神経線維が含まれる。
- この部位の損傷により、記銘力低下、自発性低下、せん妄など多彩な神経心理学的症状を呈する。
- このうち記銘力低下は内包膝部梗塞(capsular genu infarction)の中核症状とされている。
※無為症とは明らかな意識障害や運動障害を伴わないにも関わらず自発性低下や自発語の減少が見られる状態をいい、一般に前頭葉病変により生じると考えられている。