第三脳室は、左右の視床にはさまれた脳の真ん中にある、縦に細長い髄液の部屋です。上では左右の側脳室とモンロー孔でつながり、下では中脳水道という細い管を通って、橋・延髄と小脳の間にある第四脳室へ続きます。この記事では、画像診断cafeの正常例の頭部CT・MRIに色を付けて、第三脳室・中脳水道・第四脳室をそれぞれどの高さで、何を目印に見つけるかを解説します。
側脳室の各部分(前角・体部・三角部・下角)は側脳室の解剖とCT・MRI画像、髄液の流れ全体と水頭症の分類は脳室と髄液の流れ(イラスト解説)で詳しく扱っています。この記事は、実際のCT・MRIのスライスで「第三脳室から下」を追いかけることに絞っています。
先に結論:第三脳室から第四脳室までの見つけ方
- 第三脳室:基底核・視床の高さで、左右の視床の間の正中にある縦長の細いすき間。CTでは黒い線、T2強調像では白い線に見えます
- 上の入口:第三脳室の前上端で、左右の側脳室とモンロー孔(室間孔)でつながります
- 中脳水道:中脳の高さで、中脳の背側(後ろ寄り)の正中にある小さな点。上丘・下丘のすぐ前です
- 第四脳室:橋・延髄の高さで、脳幹の後ろ・小脳虫部の前にある三日月〜テント形の部屋
- 出口:第四脳室の左右の外側口(Luschka孔)と正中口(Magendie孔)から、くも膜下腔へ髄液が出ていきます
第三脳室はどこにある?(頭部CT)
頭部CTでは、側脳室の前角と視床が同時に見える高さで第三脳室を探します。左右の視床は正中で向かい合っていて、その間のすき間が第三脳室です。

正中の細いすき間が第三脳室(黄)で、その両側が視床(緑)です。前方に側脳室前角(水色)、第三脳室の後端の近くに松果体(紫)が見えます(色は一部の構造で片側のみ)。
画像:画像診断cafe(正常例)
第三脳室の後ろの端には松果体があり、CTでは生理的な石灰化として白い点に見えることが多いので、正中を探すよい目印になります(松果体とは?どこにある?)。正常の若い大人では第三脳室は細い線のように見え、年齢とともに少しずつ広がります。
第三脳室の壁と、まわりの構造(頭部MRI)
MRIのT2強調像では、髄液が白く見えるため、第三脳室の形がよりはっきりわかります。

正中の白い縦長の部屋が第3脳室(黄)で、その外側の壁をつくるのが視床(緑)です。第3脳室の中を左右の視床がつながる部分が視床間橋(オレンジ)、後ろの端の後交連(紫)を越えると中脳水道の入口です。
画像:画像診断cafe(正常例)
第三脳室を囲む構造を整理すると、次のようになります。
- 外側の壁:上半分が視床、下半分が視床下部
- 前の壁:終板(しゅうばん)と前交連。その前下方に視交叉があります
- 床(下の壁):視交叉・漏斗(下垂体茎の付け根)・灰白隆起・乳頭体。神経内視鏡で第三脳室の床に穴をあける手術(第三脳室底開窓術)はこの部分を使います
- 天井:脈絡組織と脳弓。脈絡叢が付いています(脈絡叢はどこ?)
- 後ろの壁:松果体・後交連と、中脳水道の入口
また、第三脳室には前下方と後上方にいくつかのくぼみ(陥凹)があります。視交叉の上の視交叉陥凹、漏斗の中に入りこむ漏斗陥凹、松果体の付け根の松果体陥凹などで、矢状断で見るとよくわかります。視床間橋は正常でも見えない人がいる構造で、なくても異常ではありません。
中脳水道はどこにある?
第三脳室の後下端から、髄液は中脳水道という細い管を通って下へ流れます。中脳水道は脳室系の中でいちばん細い部分で、ここが狭くなると上流の第三脳室と側脳室が広がります。

頭部CTの中脳の高さでは、中脳(緑)の前に第三脳室の下端(黄)が残り、中脳の背側の正中に中脳水道(オレンジ)が小さな点として見えます。
画像:画像診断cafe(正常例)

MRIでは中脳(緑)の後ろ寄りに中脳水道(オレンジ)が白い点として見え、そのすぐ後ろに下丘(紫)が並びます。中脳水道より前が被蓋、後ろが四丘体(中脳蓋)です。
画像:画像診断cafe(正常例)
中脳水道は横断像では点にしか見えないため、全体の形は矢状断で確かめるのが基本です。MRIでは中脳水道の中を流れる髄液の動きで信号が抜ける(flow void)ことがあり、異常と間違えないよう注意します(脳脊髄液の流れによるMRIアーチファクト)。
第四脳室はどこにある?
中脳水道を下ると、橋・延髄の後ろで広がった第四脳室に入ります。前は脳幹(橋・延髄)、後ろは小脳(虫部)で、横から見るとテントのような形をしています。

頭部CTでは、橋(緑)の後ろに第四脳室(黄)が横長の三日月形の黒い部屋として見えます。その後ろは小脳です。後頭蓋窩は骨のアーチファクトが出やすく、第四脳室の形はMRIのほうが見やすくなります。
画像:画像診断cafe(正常例)

MRIでは橋(緑)の後ろに第4脳室(黄)、その後ろに小脳虫部(紫)が見えます。第4脳室から左右へ伸びる細い通り道が外側口(Luschka孔、オレンジ)で、ここから髄液が小脳橋角部のくも膜下腔へ出ていきます。
画像:画像診断cafe(正常例)
第四脳室の底(菱形窩)や出口の詳しい解剖は、小脳橋角部とは?もあわせて読むと、まわりの構造との関係がつかみやすくなります。
髄液はどう流れる?(脳室系のつながり)
髄液は主に脳室の脈絡叢で作られ、次の順に流れます。
- 左右の側脳室
- モンロー孔(室間孔)を通って第三脳室へ
- 中脳水道を通って第四脳室へ
- 第四脳室の外側口(Luschka孔)・正中口(Magendie孔)からくも膜下腔(脳槽)へ
- 脳と脊髄の表面をめぐり、静脈系やリンパ系へ吸収される
髄液の量は大人で平均約150 mLで、そのうち脳室の中にあるのは約25 mL、残りの約125 mLはくも膜下腔にあり、1日に約4回入れ替わるとされています(Sakka 2011)。脳室は髄液の量のごく一部を入れている「通り道」で、どこかが詰まると、その上流だけが広がるのが画像を読むときの大事なポイントです。脳槽の名前と場所は脳槽はどこ?で解説しています。
どこが広がっているかで、詰まった場所がわかる
| 広がっている脳室 | 広がっていない脳室 | 考える詰まりの場所 |
|---|---|---|
| 片側の側脳室 | 反対側・第三脳室 | 片側のモンロー孔 |
| 両側の側脳室 | 第三脳室 | モンロー孔の両側(第三脳室前上部の腫瘍・嚢胞など) |
| 側脳室・第三脳室 | 第四脳室 | 中脳水道(中脳水道狭窄・松果体部腫瘍など) |
| 側脳室・第三脳室・第四脳室 | — | 第四脳室の出口、またはくも膜下腔での吸収障害(交通性) |
このように、第三脳室と第四脳室の大きさを比べることが、水頭症の原因の場所を考える第一歩になります。
よく間違える構造・正常変異
- 透明中隔腔・ベルガ腔・中間帆腔:側脳室の間や第三脳室の上にできる髄液のすき間で、多くは正常変異です。第三脳室そのものと間違えないようにします(透明中隔腔・ベルガ腔・中間帆腔とは?)
- 視床間橋:第三脳室の中の「橋」で、ない人もいます。小さな腫瘤と間違えないようにします
- 脳槽:鞍上槽・四丘体槽・迂回槽は脳室の外側(くも膜下腔)です。第三脳室の下には鞍上槽、後ろには四丘体槽があり、横断像では隣り合って見えます
- 大槽(巨大大槽):小脳の下後方の広い髄液腔で、第四脳室とは別の場所です(巨大大槽とくも膜嚢胞のMRI)
- 松果体嚢胞:第三脳室の後ろにある松果体に小さな嚢胞が見えることがあり、多くは心配いりません(松果体嚢胞とは?)
第三脳室・第四脳室の場所が役立つ病気
- 水頭症:正常圧水頭症では脳室全体が広がり、シルビウス裂も広がります。第三脳室の幅も評価の手がかりになります(正常圧水頭症(iNPH)のMRI/CT、頭部CTの脳実質の読影ポイント)
- 第三脳室前上部の腫瘤:コロイド嚢胞や脳室内腫瘍はモンロー孔をふさぎ、両側の側脳室を急に広げることがあります(中枢性神経細胞腫のCT・MRI)
- 松果体部の腫瘍:中脳水道の入口を押して、側脳室と第三脳室が広がります(松果体実質腫瘍のCT・MRI)
- 脳室内出血(脳室穿破):視床出血などが第三脳室・側脳室に破れると、脳室の中に血液がたまり、急性水頭症の原因になります(脳室穿破とは?、視床出血とは?)
- Wernicke脳症:第三脳室・中脳水道のまわり(視床内側・乳頭体・中脳水道周囲灰白質)に左右対称の病変が出ます(ウェルニッケ脳症とは?)
- 後頭蓋窩の腫瘍・小脳梗塞:第四脳室が押しつぶされると、上流の第三脳室・側脳室が広がります(小脳梗塞とは?)
頭部CTのスライス全体の流れは頭部CTの解剖(高さごと)、MRIは頭部MRIの解剖(横断像)で確認できます。
画像診断cafeで自分で確かめる
この記事の図は、解剖ビューア「画像診断cafe」の頭部CT・頭部MRIから作っています。ビューアでスライスを下から上へ動かすと、第四脳室→中脳水道→第三脳室→側脳室と、髄液の通り道がつながっていく様子を色付きで追うことができます。
- Web版:画像診断cafe 頭部CT/画像診断cafe 頭部MRI
- iPhone:App Storeで「画像診断cafe」を検索
- Android:Google Play「画像診断cafe」
第三脳室・第四脳室についてよくある疑問(Q&A)
Q. 「第三脳室が少し広い」と言われました。病気ですか?
A. 第三脳室は年齢とともに少しずつ広がるため、年齢相応の変化であることも多いです。一方で、側脳室も一緒に広がっている、歩きにくさや物忘れ・尿失禁がある、といった場合は水頭症の評価が必要になるので、主治医に画像の説明を確認してください。
Q. 中脳水道はなぜ詰まりやすいのですか?
A. 脳室系の中でいちばん細い管だからです。生まれつきの狭窄のほか、まわりの松果体や中脳の腫瘍、出血や炎症のあとの癒着でも狭くなり、上流の側脳室と第三脳室が広がります。
Q. 第四脳室はCTでも見えますか?
A. 見えます。橋の後ろ・小脳の前にある黒い部屋として確認できます。ただし後頭蓋窩は骨によるアーチファクトが出やすいので、小さな病変や出口の評価にはMRIが向いています。
参考文献
- Sakka L, Coll G, Chazal J. Anatomy and physiology of cerebrospinal fluid. Eur Ann Otorhinolaryngol Head Neck Dis. 2011;128(6):309-16. PubMed
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