前脈絡叢動脈(anterior choroidal artery:AChA、AChoA)は細く短いが、内包後脚・視索・外側膝状体など臨床的に重要な領域へ灌流を持つ動脈である。

梗塞や、ICA終末部近傍(Pcom周囲)病変の読影では、AChAの同定が診断精度に直結することがある。

先に結論:前脈絡叢動脈(AChA)とは

  • 前脈絡叢動脈は、内頚動脈の終わり近く、後交通動脈(Pcom)の少し先(数mm遠位)から出る細い動脈で、内包後脚・視索・外側膝状体・海馬の一部・側脳室の脈絡叢などを養います
  • 読み方は「ぜんみゃくらくそうどうみゃく」。英語は anterior choroidal artery(略称 AChA)で、脳神経外科では略称から「アンコロ」と呼ばれることもあります
  • ここが詰まる前脈絡叢動脈梗塞では、反対側の手足のまひ・感覚障害・視野障害(同名半盲)の3つがそろうことがあり、MRIの拡散強調像で内包後脚に沿った細長い梗塞として見えます
  • MRAでは細くて見落としやすいため、元画像(3D-TOF)で内頚動脈の終わりを薄く追ってPcomとの位置関係から同定します。動脈瘤の手術・治療でも温存が重要な血管です

前脈絡叢動脈が栄養する脈絡叢そのものの場所と働きは、脈絡叢はどこ?側脳室・第3・第4脳室の場所とCT・MRIの見え方で解説しています。

前脈絡叢動脈(anterior choroidal artery:AChA、AChoA)とは?どこから起始する

AChAは典型的には内頚動脈(ICA)交通部〜終末部から分岐し、Pcom(後交通動脈)起始よりも遠位側(末梢側)に位置する。

  • 典型の並び(近位→遠位):Pcom → AChA → ICA終末(MCA/ACA)
  • 距離と太さ:解剖の検討では、AChAはPcom起始の平均2.4mm遠位、内頚動脈分岐部の4.7mm手前から出て、太さは平均0.9mm(槽部)と細い血管です(Ferreira 1990)。
  • 注意:Pcomが太い(fetal-type)・P1低形成などでは、MIPだけだとPcomが強調され、AChAが埋もれやすい。

 MRAでの前脈絡叢動脈(anterior choroidal artery:AChA)の同定

  • 3D-TOFの元画像を使うと、健常者でAChAを確実に同定できたのは92.5%でした(Wiesmann 2001)。
  • AChAは細径のため、MIP像(Maximum Intensity Projection)だけに頼ると見落としやすい。AChA同定の基本は、3D-TOFのMRA元画像でICA終末部を薄切りで追い、細い分岐を拾うことである。
  • 太い枝としてPcomを確認し、そこからさらに遠位のICA壁に目を凝らす。
  • AChAはPcom起始の直後(遠位側)から出ることが多い。PcomをAChAと間違えたり、AChAをPcomと間違えないように注意。
  • AChAは起始後、後方〜外側へ向かい、視索(optic tract)周囲をかすめるように走り、側脳室側頭角の脈絡叢へ向かう流れを取ることが多い。微小外科解剖でも、AChAが脈絡叢(側頭角)に到達する走行が整理されている。
  • AChAには起始の変異があり、AChAとPcomの起始の順番が入れ替わるなど稀なバリエーションも報告されている。なお、AChA梗塞42例の検討では83.3%がラクナ症候群で発症したが、病因の38.1%は大血管病変であり、必ずしもラクナ梗塞ではなかった。深部に加えて表在側の灌流域まで及ぶ梗塞は、入院時の重症度が高く退院時の機能予後も不良であった。

前脈絡叢動脈の走行と支配領域(灌流域)

走行は、視索に沿って後ろへ走る槽部と、側脳室下角に入る脈絡叢部に分けられます。

支配領域(灌流域) 障害されたときの主な症状
内包後脚(後方2/3)・側脳室体部後方の傍脳室域(放線冠) 反対側の片まひ・感覚障害
視索・外側膝状体 同名半盲・同名の視野欠損
大脳脚・鈎(側頭葉内側) まひ(大脳脚)など

灌流域は解剖・梗塞例の検討に基づきます(Hupperts 1994、Ferreira 1990)。

前脈絡叢動脈梗塞(AChA梗塞)の症状とMRI

  • 症状:最も多いのは片まひで、感覚障害は一過性のことが多く、同名半盲などの視野障害を伴うことがあります(Helgason 1986)。
  • MRI:拡散強調像で内包後脚に沿った細長い高信号域として見え、上方の放線冠後部まで伸びることがあります(Hupperts 1994)。

急に手足が動かしにくい・しびれる・見えにくいなどの症状が出たときは、すぐに医療機関を受診してください。

症例 40歳代男性 スクリーニング

左のICAからPcomが分岐、そのやや末梢からAChAが分岐していることを確認できます。

MIP画像でもAChAを同定することができます。

症例 30歳代男性 スクリーニング

こちらの症例のMIP画像でもAChAを同定することができます。

 

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参考文献

  1. Wiesmann M, Yousry I, Seelos KC, et al. Identification and anatomic description of the anterior choroidal artery by use of 3D-TOF source and 3D-CISS MR imaging. AJNR Am J Neuroradiol. 2001;22(2):305-310. PubMed
  2. Ferreira A, Braga FM. Microsurgical anatomy of the anterior choroidal artery. Arq Neuropsiquiatr. 1990;48(4):448-453. PubMed
  3. Fujii K, Lenkey C, Rhoton AL Jr. Microsurgical anatomy of the choroidal arteries: lateral and third ventricles. J Neurosurg. 1980;52(2):165-188. PubMed
  4. Helgason C, Caplan LR, Goodwin J, et al. Anterior choroidal artery-territory infarction. Report of cases and review. Arch Neurol. 1986;43(7):681-686. PubMed
  5. Hupperts RM, Lodder J, Heuts-van Raak EP, et al. Infarcts in the anterior choroidal artery territory. Anatomical distribution, clinical syndromes, presumed pathogenesis and early outcome. Brain. 1994;117(Pt 4):825-834. PubMed
  6. Lu Z, Ma L. Anterior choroidal artery and fetal-type posterior communicating artery origin transposition: a case report. Front Surg. 2025;12:1690584. PubMed
  7. Rhoton AL, Fujii K, Fradd B. Microsurgical anatomy of the anterior choroidal artery. Surg Neurol. 1979;12(2):171-187. PubMed
  8. Palomeras E, Fossas P, Cano AT, et al. Anterior choroidal artery infarction: a clinical, etiologic and prognostic study. Acta Neurol Scand. 2008;118(1):42-47. PubMed

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