喉頭(こうとう)は、首の前の真ん中、いわゆる「のどぼとけ」の奥にある、空気の通り道と声を出す装置を兼ねた器官です。上は舌骨と喉頭蓋の高さから、下は輪状軟骨の下縁までで、そこから先は気管になります。

CTやMRIの横断像では、喉頭は「軟骨の枠」と「その内側の空気の通り道」として見えます。この記事では、画像診断cafeの正常な頸部MRIに色を付けて、甲状軟骨・輪状軟骨・披裂軟骨・声帯(声帯靭帯・声帯筋)が、どの高さで、何の隣に見えるのかを上から順に解説します。頸部全体を自分で動かして見たい場合は頸部MRIの正常解剖ツールも使えます。

先に結論:喉頭を画像で見つける目印

  1. 舌骨:喉頭のすぐ上にあるU字(馬てい形)の骨。ここから下が喉頭の領域です
  2. 喉頭蓋:舌の付け根の後ろに立つ葉っぱの形の軟骨。舌根との間のくぼみが喉頭蓋谷です
  3. 甲状軟骨:前に向かって「Λ(への字を逆さにした形)」に開く大きな軟骨。のどぼとけの正体で、声門上部から声門の高さを囲みます
  4. 披裂軟骨:甲状軟骨の内側・後ろ寄りにある小さな軟骨。披裂軟骨が見える高さ=声帯(声門)の高さと覚えると迷いません
  5. 輪状軟骨:喉頭のいちばん下にある、全周がつながった唯一の輪。後ろが高く幅の広い「指輪の印台」のような形です
  6. その下が気管:輪状軟骨の下からは、気管・食道・甲状腺が並ぶ高さになります

喉頭はどこにある?(ひとことで)

喉頭は、咽頭の前、首の前面の正中にあります。後ろには下咽頭と食道の入り口があり、左右には頸動脈と内頸静脈が通ります。喉頭そのものは軟骨でできた筒で、内腔は上から声門上部・声門・声門下部の3つに分けられます。

  • 声門上部:喉頭蓋から仮声帯(室ヒダ)まで。喉頭蓋・披裂喉頭蓋ヒダ・仮声帯を含みます
  • 声門:左右の声帯(真声帯)と、その間のすき間(声門裂)。前で左右の声帯が合わさる所が前交連です
  • 声門下部:声帯の下から輪状軟骨の下縁まで。その下が気管です

この3つの区分は、喉頭癌の場所の書き方や病期分類の基本になるので、画像でも「いま見ている断面はどの区分か」を意識すると読みやすくなります。

高さごとに見る喉頭のMRI解剖

ここからは、頸部MRI(T2強調像)の横断像を上から下へ順に見ていきます。図はいずれも画面の上が体の前です。色分けは片側だけに付けていますが、反対側も左右対称に同じ構造があります。

1. 舌骨と喉頭蓋の高さ

頸部MRI横断像の舌骨の高さ。舌骨・喉頭蓋・中咽頭・顎下間隙を色分けした図
U字形の舌骨が前方を囲み、その後ろ、空気の通り道の前壁に葉っぱの形の喉頭蓋が見えます。舌骨の外側には顎下腺のある顎下間隙が並びます。
画像:画像診断cafe(正常例)

喉頭の上端の目印は舌骨です。舌骨は横断像で前に凸のU字形に見え、その後ろに喉頭蓋が立っています。喉頭蓋と舌根の間のくぼみが喉頭蓋谷で、魚の骨がひっかかりやすい場所でもあります。喉頭蓋が大きく腫れる急性喉頭蓋炎は、この高さで気道が細くなる病気です。

この高さはまだ中咽頭との境界にあたり、喉頭蓋より後ろの空気は咽頭の内腔です。中咽頭の見方は中咽頭の画像解剖で詳しく扱っています。

2. 声門上部(仮声帯)の高さ

頸部MRI横断像の声門上部の高さ。甲状軟骨・喉頭内腔・下咽頭・甲状舌骨筋・胸骨舌骨筋を色分けした図
前に向かって開いた甲状軟骨の板が喉頭を囲み、その内側に声門上部の空気の通り道が見えます。甲状軟骨の前には甲状舌骨筋と胸骨舌骨筋(舌骨下筋群)が重なります。
画像:画像診断cafe(正常例)

舌骨より下では、甲状軟骨が現れます。横断像では左右の板が前で合わさり、後ろに開いた「Λ」の形です。この高さの喉頭内腔は声門上部で、内腔の左右の壁には仮声帯(室ヒダ)と、その外側の脂肪の多い傍声門間隙があります。甲状軟骨の前には、舌骨下筋群(胸骨舌骨筋・甲状舌骨筋など)が薄く重なっています。

喉頭の後ろ外側にある左右のくぼみが梨状陥凹(梨状窩)で、ここは下咽頭に属します。喉頭のすぐ後ろに下咽頭があるという位置関係は、下咽頭癌が喉頭へ広がりやすい理由でもあります(下咽頭癌の画像診断|梨状陥凹・輪状後部・咽頭後壁はどこ?)。

3. 声門(声帯)の高さ

頸部MRI横断像の声門の高さ。甲状軟骨・披裂軟骨・声帯靭帯・甲状披裂筋・声帯筋を色分けした拡大図
甲状軟骨の内側に、前から後ろへ伸びる声帯(声帯靭帯と、その外側の声帯筋・甲状披裂筋)が見え、後ろの端に披裂軟骨があります。左右の声帯の間の細いすき間が声門裂です。
画像:画像診断cafe(正常例)

喉頭でいちばん大事な高さが声門です。見分けるポイントは次の3つです。

  • 披裂軟骨が見える:声帯の後ろの端は披裂軟骨の声帯突起に付いています。披裂軟骨が見えたら声門の高さと考えます
  • 声帯は筋肉の厚みがある:声帯の中身は甲状披裂筋(その内側部分が声帯筋)で、内腔に面した縁に声帯靭帯があります。仮声帯の高さでは外側に脂肪が多く、声門の高さでは筋肉が多いという違いがあります
  • 前交連:左右の声帯が前で甲状軟骨の内側に付く所です。正常では粘膜が薄く、ここが厚くなっていたら腫瘍の広がりを疑います

声帯は、息を吸うときには開き、声を出すときには閉じて振動します。MRIやCTは呼吸しながら撮るため、声門裂の開き具合は撮影のタイミングで変わります。左右差を見るときは、この点に注意します。

4. 声門下部の高さ

頸部MRI横断像の声門下部の高さ。甲状軟骨・輪状軟骨・後輪状披裂筋・声門下腔・甲状腺を色分けした拡大図
甲状軟骨の下部の内側に、後ろから輪状軟骨が現れます。輪状軟骨の板の後ろには後輪状披裂筋があり、外側には甲状腺の上極が見え始めます。
画像:画像診断cafe(正常例)

声帯より下では、内腔が丸くなり、後ろに輪状軟骨の板(後ろの幅の広い部分)が現れます。輪状軟骨の板の後ろに付く後輪状披裂筋は、声帯を開く唯一の筋肉です。反回神経が麻痺するとこの筋肉が働かず、声帯が開かなくなります。

正常の声門下腔は、粘膜がごく薄く、内腔の壁はなめらかです。声門下の粘膜が厚くなっていたら、腫瘍・炎症・乳児の声門下血管腫などを考えます(声門下血管腫の画像診断)。

5. 輪状軟骨の高さ

頸部MRI横断像の輪状軟骨の高さ。輪状軟骨・声門下腔・甲状腺・胸骨甲状筋・総頸動脈を色分けした図
輪状軟骨が内腔を全周に近く囲み、その外側に甲状腺、さらに外側に総頸動脈が並びます。輪状軟骨の前には胸骨甲状筋があります。
画像:画像診断cafe(正常例)

輪状軟骨は、気道を全周にわたって囲む唯一の軟骨の輪で、喉頭の土台です。前は細く、後ろは高く幅が広い形をしています。前の部分と甲状軟骨の下縁の間には輪状甲状膜(輪状甲状靭帯)があり、緊急時に気道を確保する輪状甲状膜切開はここで行います。

この高さでは、喉頭の外側に甲状腺が現れます。甲状腺の左右の葉は輪状軟骨から気管の外側を包むように位置し、その外側に総頸動脈・内頸静脈が並びます。甲状腺のCTでの見方は甲状腺のCT画像診断を参照してください。

6. 気管と食道の高さ(喉頭の下)

頸部MRI横断像の気管の高さ。気管・食道・甲状腺・総頸動脈・内頸静脈を色分けした図
輪状軟骨の下からは気管になり、その後ろに食道、左右に甲状腺の葉、さらに外側に総頸動脈と内頸静脈が並びます。
画像:画像診断cafe(正常例)

輪状軟骨の下縁より下は気管です。気管の真後ろ(やや左)に食道、気管と食道の間の溝(気管食道溝)には反回神経が上がってきます。反回神経は喉頭の筋肉を動かす神経で、ここから甲状腺の裏を通って喉頭に入ります(反回神経の走行と嗄声の原因、反回神経麻痺の画像診断)。

喉頭の軟骨と周りの構造との関係

  • 上:舌骨・舌根・中咽頭。喉頭は甲状舌骨膜で舌骨からぶら下がるように付いていて、飲み込むときには舌骨と一緒に上に動きます
  • 後ろ:下咽頭・食道入口部。喉頭の後ろの左右に梨状陥凹、真後ろに輪状後部があります
  • 外側:頸動脈間隙。総頸動脈・内頸静脈・迷走神経が、甲状軟骨と甲状腺の外側を縦に走ります
  • 前:舌骨下筋群と皮膚。胸骨舌骨筋・胸骨甲状筋・甲状舌骨筋が薄く重なり、その前は皮下脂肪と皮膚だけです
  • 下:気管と甲状腺。輪状軟骨の下から気管になり、甲状腺が両脇を包みます

喉頭の働き

喉頭には大きく3つの役割があります。

  • 空気の通り道:咽頭から気管へ空気を送ります。声門は喉頭の中でいちばん狭い所です
  • 誤嚥を防ぐ:飲み込むときには喉頭全体が上に上がり、喉頭蓋が倒れて入り口をふさぎ、声帯と仮声帯も閉じて食べ物が気管に入るのを防ぎます
  • 声を出す:閉じた声帯の間を息が通ると声帯が振動し、声のもとになる音ができます。披裂軟骨の動きで声帯が開いたり閉じたりし、甲状軟骨と輪状軟骨の傾きで声帯の張りが変わります

飲み込みの動きと誤嚥は、CTやMRIではなく嚥下造影検査で動画として評価します(嚥下造影検査(VF)とは)。

よく間違える構造と正常の見え方

  • 軟骨の骨化:甲状軟骨・輪状軟骨・披裂軟骨は年齢とともに骨化し、CTでは骨のように白く、まだらに見えることがあります。左右差のある骨化を、腫瘍による軟骨の破壊や硬化と見間違えないように注意します
  • 仮声帯と声帯:1枚の横断像では区別がつきにくい構造です。外側に脂肪が多い高さが仮声帯、筋肉が多く披裂軟骨が見える高さが声帯と考えます
  • 梨状陥凹の左右差:梨状陥凹は空気が入るかつぶれているかで見え方が変わり、正常でも左右差が出ます
  • 声帯の左右差:撮影のタイミングで声帯の開き方が変わります。一方の声帯が内側に寄り、同じ側の梨状陥凹や喉頭室が広がっているときは、反回神経麻痺の所見を考えます(Paquette 2012)

喉頭の解剖が役立つ病気

頸部CT全体の読み方は頸部CTの読影ポイント、喉頭の高さの目安になる頸椎の見方は頸椎はどこ?首の骨C1〜C7の場所にまとめています。

画像診断cafeで自分で確かめる

この記事の図は、画像診断cafeの頸部MRIビューアの正常画像を使っています。ビューアでは、スライスを1枚ずつ動かしながら、甲状軟骨・輪状軟骨・披裂軟骨・声帯筋などをタップして名前と色分けを確かめられます。舌骨から気管まで、上から下へ自分で追ってみると、軟骨の形の変わり方がよくわかります。

スマートフォンでは、アプリ版も使えます。iPhoneはApp Storeで「画像診断cafe」を検索してください。AndroidはGoogle Playの画像診断cafeからインストールできます。解剖の覚え方の順番はCT・MRIの画像解剖の勉強法も参考にしてください。

喉頭の場所でよくある疑問(Q&A)

Q. のどぼとけ(喉頭隆起)は何の骨ですか?
A. 骨ではなく、甲状軟骨の左右の板が前で合わさってできる出っ張りです。男性では思春期に甲状軟骨が大きくなり、板の角度が鋭くなるので目立ちやすくなります。

Q. 画像で声帯の高さを見つけるコツは?
A. 披裂軟骨が見える高さを探します。甲状軟骨の内側・後ろ寄りに小さな軟骨が見え、そこから前の甲状軟骨へ向かって筋肉の厚い帯(声帯)が伸びていれば声門の高さです。その少し上の、外側に脂肪の多い高さが仮声帯です。

Q. 喉頭と気管の境目はどこですか?
A. 輪状軟骨の下縁です。輪状軟骨は全周がつながった輪で、そこより下は馬てい形の気管軟骨が並ぶ気管になります。頸椎ではおおよそ第6頸椎の高さが目安ですが、年齢や首の長さで変わります。

あわせて読みたい

参考文献

  • Paquette CM, Manos DC, Psooy BJ. Unilateral vocal cord paralysis: a review of CT findings, mediastinal causes, and the course of the recurrent laryngeal nerves. Radiographics. 2012. PubMed

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