
先に結論:核医学検査は「機能」を見る。目的に合う検査を選び、CT・MRIの形の情報と合わせて読む
| 見たいもの | 代表的な検査 |
|---|---|
| 骨の反応 | 骨シンチ |
| 脳の血流・神経のはたらき | 脳血流SPECT、DATスキャン、FDG-PET |
| 心臓の血流・代謝・神経・沈着物 | 心筋血流SPECT、BMIPP、心臓MIBG、ピロリン酸(PYP) |
| 肺・甲状腺・副甲状腺・副腎・腎・肝胆道 | 肺血流シンチ、甲状腺シンチ、MIBIシンチ、副腎皮質シンチ、腎動態シンチ、胆道・肝シンチ |
| がん・炎症の全身評価 | FDG-PET、ガリウムシンチ、PSMA-PET、ソマトスタチン受容体シンチ・PET |
シンチグラフィとPETの違い
どちらも、放射性医薬品(体に入れる微量の放射性物質をつけた薬)が体のどこにどれだけ集まるかを撮影します。シンチグラフィは、ガンマ線を出す薬を使い、ガンマカメラで撮影する検査で、SPECT(断層撮影)にすることもあります。PETは、陽電子を出す薬を使う検査で、一般に分解能と定量性に優れます。多くの場合、PET/CTやSPECT/CTにして、CTで場所を、核医学で機能を見ます。
薬剤ごとに集まる仕組みが違うため、「どの検査か」で見えるものが変わります。以下、領域ごとに整理します。検査の準備(食事・水分・服薬など)は検査ごとに異なります。主治医・検査施設の指示に従ってください。
骨・脳の検査
| 検査 | 何を見るか(1〜3文) | 主な対象 | 関連記事 |
|---|---|---|---|
| 骨シンチ | 骨が作り変わっている(骨の代謝)場所に薬剤が集まります。全身を一度に調べられますが、骨折や関節症でも光ります。 | 骨転移の検索、骨折、骨髄炎、関節の病気 | 骨シンチとは?、骨転移の画像診断、骨シンチの見方と偽陽性 |
| 脳血流SPECT | 脳の血流を見る検査です。血流の低下する場所の分布から、病気を絞ります。 | 認知症、脳梗塞・脳循環の評価、てんかん | 脳血流シンチの画像診断、アルツハイマー病の脳血流シンチ、遠隔効果(diaschisis)、認知症の脳血流SPECT・FDG-PETパターン早見 |
| DATスキャン | ドパミン神経の終末にあるドパミントランスポーターへの集積を見ます。パーキンソン病などでは線条体の集積が下がります。変性疾患どうしの区別には限りがあります(Ba 2015)。 | パーキンソン症候群、レビー小体型認知症、本態性振戦などとの区別 | ダットスキャンとは?、レビー小体型認知症(DLB)の画像診断 |
| アミロイドPET | 脳に溜まるアミロイドを見ます。 | アルツハイマー病の評価、抗アミロイド薬の対象の評価 | アミロイドPETとは? |
心臓の検査
| 検査 | 何を見るか(1〜3文) | 主な対象 | 関連記事 |
|---|---|---|---|
| 心筋血流SPECT | 心筋の血流を、負荷をかけたときと安静時で比べて、血流が足りなくなる場所(虚血)や梗塞の範囲を見ます。冠動脈疾患の診断・予後の評価に使われます(Al Badarin 2019)。 | 狭心症、心筋梗塞 | 心筋シンチグラフィの見方・読み方、タリウムシンチ、負荷心筋血流シンチ(SPECT)の見方 |
| BMIPPシンチ | 心筋の脂肪酸代謝を見る検査です。血流の検査と組み合わせると、血流は保たれているのに代謝が落ちている場所がわかります。 | 虚血性心疾患、心筋症 | BMIPP心筋シンチとは |
| 心臓MIBGシンチ | 心臓の交感神経の障害を見ます。パーキンソン病では、遅延像のH/M比で他の変性パーキンソニズムとの区別が可能です(Orimo 2012)。 | パーキンソン病、レビー小体型認知症、心不全 | MIBG心筋シンチとは? |
| ピロリン酸(PYP)シンチ | 骨に集まる薬剤が心筋のアミロイドにも集まることを利用します。トランスサイレチン型心アミロイドーシスの診断に使われますが、血液・尿の検査でM蛋白を除外することが前提です(Hanna 2020)。 | 心アミロイドーシス(ATTR) | 心アミロイドーシスの画像診断 |
| FDG-PET(心筋) | 心筋のブドウ糖代謝を見ます。血流が下がっていても代謝がある場所は、回復が期待できる心筋(バイアビリティ)です。 | 虚血性心筋症、心サルコイドーシス | 心筋バイアビリティとは? |
肺・内分泌・腎・肝胆道の検査
| 検査 | 何を見るか(1〜3文) | 主な対象 | 関連記事 |
|---|---|---|---|
| 肺血流シンチ(換気血流シンチ) | 肺の血流の欠損を見ます。換気の検査と組み合わせて、血流だけが欠けている場所を探します。断層撮影で感度が上がった一方、小さく臨床的意義の乏しい塞栓を拾い過ぎる可能性もあります(Metter 2017)。 | 肺塞栓症、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH) | 肺血流シンチ・換気血流シンチ(V/Qスキャン)とは、CTEPHのCTと肺血流シンチ、肺血栓塞栓症のCT画像診断 |
| 甲状腺シンチ | 甲状腺へのヨードやテクネチウムの取り込みと分布を見ます。自律性の機能亢進や異所性甲状腺の検出、破壊性甲状腺炎との区別に役立ちます(Giovanella 2019)。 | 甲状腺機能亢進症(バセドウ病・無痛性甲状腺炎など)、甲状腺結節 | 甲状腺シンチグラフィの摂取率、131I内用療法、異所性甲状腺 |
| 副甲状腺シンチ(MIBIシンチ) | 機能亢進した副甲状腺に集まる薬剤で、腺腫の位置を探します。SPECT/CTの感度は0.86で、SPECT(0.74)や平面像(0.70)より高いと報告されています(Wong 2015)。 | 原発性副甲状腺機能亢進症 | 副甲状腺シンチ(MIBIシンチ)とは?、原発性副甲状腺機能亢進症の画像診断 |
| 副腎皮質シンチ | 副腎皮質ホルモンの材料に似た薬剤が副腎皮質に取り込まれることを利用し、ホルモンを出す腺腫の機能を見ます。 | 原発性アルドステロン症、クッシング症候群など | 副腎皮質シンチ(アドステロールシンチ)とは?原発性アルドステロン症・クッシング症候群での左右差の読み方と限界、副腎静脈サンプリング(AVS) |
| 腎動態シンチ | 腎臓の血流と尿への排泄の経過を連続して撮影し、左右の腎機能の割合や尿路の通過障害を調べます。DMSAを使う腎静態シンチは、腎瘢痕の評価に使います。 | 水腎症、腎移植、小児の腎盂腎炎後の瘢痕 | 腎動態シンチグラフィとは?、腎静態シンチグラフィ(DMSA) |
| 肝胆道シンチ | 胆道シンチ(PMT)は胆汁の流れを、肝受容体シンチ(GSA)は肝臓の機能の予備能を見ます。 | 胆道閉塞・胆汁のもれ、肝切除前の肝予備能 | 99mTc-PMT胆道シンチ、肝受容体シンチ(GSA) |
がん・炎症の全身検査
| 検査 | 何を見るか(1〜3文) | 主な対象 | 関連記事 |
|---|---|---|---|
| FDG-PET/CT | ブドウ糖の取り込みが多い場所を見ます。がんの病期診断・再発・治療効果の判定に広く使われます。脳・心臓・褐色脂肪・腸管など、正常でも集積する場所があります。 | がん全般、悪性リンパ腫、大型血管炎、不明熱 | PET検査(FDG-PET/CT)の基礎知識、FDG-PETの生理的集積、PET-CT検査とは?、FDG-PETの偽陽性 |
| ガリウムシンチ | 腫瘍や炎症に集まるガリウムを使い、全身を調べます。 | 悪性リンパ腫、サルコイドーシス、不明熱 | ガリウムシンチとは? |
| PSMA-PET | 前立腺癌の細胞に多いPSMAに結合する薬剤を使います。 | 前立腺癌の病期診断・再発 | PSMA PETとは?、PET以外の核医学の生理的集積と偽陽性 |
| ソマトスタチン受容体シンチ・PET | 神経内分泌腫瘍の細胞にあるソマトスタチン受容体への集積を見ます。診断や病期診断に加え、受容体を標的とした放射性医薬品による治療(PRRT)の対象を選ぶ目的でも使います(Park 2021)。 | 神経内分泌腫瘍(膵NET・カルチノイドなど) | 膵神経内分泌腫瘍(膵NET)、カルチノイド(神経内分泌腫瘍) |
| MIBGシンチ(腫瘍) | 交感神経系の細胞に取り込まれる薬剤を使います。 | 褐色細胞腫・傍神経節腫、神経芽腫 | 褐色細胞腫・傍神経節腫の画像診断、MIBG・MIBI・131Iの生理的集積 |
症例 20歳代男性 FDG-PETの生理的な心筋集積

引用:Radiopaedia(Normal physiological cardiac uptake in F-18 FDG PET)
左心室の心筋にFDGが強く集まっています。症例ページでは、正常な生理的心筋集積と説明されています。FDG-PETは、病気でなくても心筋・脳・腸管などに集まるため、「光る=病気」ではないことが、核医学を読む上での基本になります。
検査を選ぶときの考え方
| 知りたいこと | 考え方 |
|---|---|
| 形か、機能か | 形はCT・MRI、機能は核医学。両者を重ねて読むことで、位置と性質の両方がわかります。 |
| 全身か、特定の臓器か | 全身の広がりは骨シンチやFDG-PET、特定臓器の機能は、腎動態・心筋血流・甲状腺などの専用の検査を使います。 |
| 見えにくい病変があるか | 骨シンチでは溶骨性病変が、FDG-PETでは糖代謝の低いがんが見えにくいなど、検査ごとの弱点があります。 |
| 治療の選択につながるか | PSMAやソマトスタチン受容体の検査は、同じ受容体を狙う治療の適応を考える際にも使われます。 |
読むときの注意:生理的集積と偽陽性
核医学では、検査ごとに正常でも集まる場所が決まっています。骨シンチでは腎臓・膀胱、FDG-PETでは脳・心筋・腸管・褐色脂肪、PSMA-PETでは唾液腺や腎臓などです。病気と間違えやすい集積(偽陽性)は、検査ごとに異なります。PET以外の核医学については、PET以外の核医学の生理的集積と偽陽性に整理しています。
検査を受ける前後には、授乳や妊娠、他の検査との日程(造影CTとの間隔など)の確認が必要な場合があります。詳細は主治医・検査施設の指示に従ってください。気になる症状や検査結果があれば、医療機関に相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. シンチとPETは、どちらが優れていますか?
A. 優劣ではなく、見たいものの違いです。心筋血流や腎動態のように、シンチグラフィが標準の検査もあれば、がんの全身評価のようにPETが主役の検査もあります。主治医が目的に合わせて選びます。
Q. 「集積がある」と言われました。がんということですか?
A. 集積=がんではありません。正常でも集まる場所があり、炎症や良性の病変でも集まります。どの検査で、どこに、どの程度集まったかを、CT・MRIなどと合わせて評価します。
Q. 核医学検査でわかることは、CT・MRIと何が違うのですか?
A. CT・MRIは主に形、核医学は血流・代謝・受容体などの機能を見ます。たとえば、認知症では脳の萎縮(形)が目立つ前に機能の低下がわかることがあり、骨では骨折や転移による骨の反応が早い時期に光ることがあります。
参考文献
- Al Badarin FJ, Malhotra S. Diagnosis and Prognosis of Coronary Artery Disease with SPECT and PET. Curr Cardiol Rep. 2019;21(7):57. PubMed
- Metter D, Tulchinsky M, Freeman LM. Current Status of Ventilation-Perfusion Scintigraphy for Suspected Pulmonary Embolism. AJR Am J Roentgenol. 2017;208(3):489-494. PubMed
- Hanna M, Ruberg FL, Maurer MS, et al. Cardiac Scintigraphy With Technetium-99m-Labeled Bone-Seeking Tracers for Suspected Amyloidosis: JACC Review Topic of the Week. J Am Coll Cardiol. 2020;75(22):2851-2862. PubMed
- Wong KK, Fig LM, Gross MD, et al. Parathyroid adenoma localization with 99mTc-sestamibi SPECT/CT: a meta-analysis. Nucl Med Commun. 2015;36(4):363-75. PubMed
- Orimo S, Suzuki M, Inaba A, et al. 123I-MIBG myocardial scintigraphy for differentiating Parkinson’s disease from other neurodegenerative parkinsonism: a systematic review and meta-analysis. Parkinsonism Relat Disord. 2012;18(5):494-500. PubMed
- Ba F, Martin WR. Dopamine transporter imaging as a diagnostic tool for parkinsonism and related disorders in clinical practice. Parkinsonism Relat Disord. 2015;21(2):87-94. PubMed
- Giovanella L, Avram AM, Iakovou I, et al. EANM practice guideline/SNMMI procedure standard for RAIU and thyroid scintigraphy. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2019;46(12):2514-2525. PubMed
- Park S, Parihar AS, Bodei L, et al. Somatostatin Receptor Imaging and Theranostics: Current Practice and Future Prospects. J Nucl Med. 2021;62(10):1323-1329. PubMed
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