アミロイドPETとARIA 抗アミロイド抗体薬とMRI監視

認知症の新しい点滴薬を始める前に「定期的にMRIで副作用をチェック」と言われました。ARIAとは何ですか?
ARIA(アミロイド関連画像異常)は、レカネマブやドナネマブなど抗アミロイド抗体薬で起こる脳MRI上の異常で、浮腫・滲出のARIA-Eと、微小出血・脳表ヘモジデリン沈着のARIA-Hがあります。ほとんどは無症状ですが、MRIでの監視が前提の薬です。

先に結論:ARIA-EはFLAIRの高信号、ARIA-HはGRE/SWIの低信号。重症度はMRI所見と症状の両方で決め、投与継続・中断を判断

項目 ARIA-E ARIA-H
病態 浮腫(edema)、脳溝の滲出 微小出血、脳表ヘモジデリン沈着(superficial siderosis)、まれに大出血
見つけるシーケンス FLAIR GRE または SWI
主なリスク APOE ε4(特にホモ接合) ベースラインの微小出血・脳血管負荷、APOE ε4
症状 頭痛、錯乱、神経症状など(軽症〜まれに重症) 多くは無症状


ARIAのMRI所見と重症度の表

症例 80歳代女性 抗アミロイド抗体治療中の突然の混乱・頭痛

ARIA-E FLAIR 軸位断
引用:Radiopaedia(Amyloid-related imaging abnormalities (ARIA))

FLAIR軸位断です。両側の側頭葉を中心に、皮質・皮質下の高信号と脳溝の高信号を認め、血管原性浮腫と脳溝への滲出(ARIA-E)に相当します。同症例では拡散制限や造影効果はないと報告されています。

アミロイドPETと抗アミロイド抗体薬

抗アミロイド抗体薬は、脳内のアミロイドβを標的とする点滴薬です。レカネマブ(レケンビ)は初期アルツハイマー病(MCIまたは軽度認知症)で、脳アミロイド病理が確認された例に使うよう米国のAUR(適正使用推奨)で示されています(Cummings 2023)。ドナネマブのAURでは、PETまたは髄液でアミロイド病理を確認することが適応の条件で、Tau PETは必須ではないとされています(Rabinovici 2025)。ドナネマブでは、アミロイドPETでクリアランスが確認されれば治療中止を検討してよいとされ、PETは治療開始後12〜18か月頃に撮るのが一般的とされています(Rabinovici 2025)。

アルツハイマー病のMRI・SPECT・PETの全体像はアルツハイマー病のMRI・SPECT・PET画像診断、VSRADなど形態指標はVSRAD advance 2とは?にまとめています。

日本での位置づけ(公式資料で確認できた範囲)

PMDAの審査担当者による報告では、レカネマブは2023年9月、ドナネマブは2024年9月に、アルツハイマー病によるMCIおよび軽度認知症を対象に日本で承認されました。ARIAのリスクがMRI監視と事前に定めたリスク低減策で管理されることを条件に、PMDAは両薬のベネフィット・リスクを良好と判断しています(Yanagihara 2025)。投与の施設要件や具体的なMRI実施時期など日本の最適使用推進ガイドラインの詳細は、公的資料の現行版で確認してください。

ARIAのMRI所見と重症度

ドナネマブAURが引用する添付文書(米国)の放射線学的重症度は次のとおりです(Rabinovici 2025)。

種類 軽度 中等度 高度
ARIA-E FLAIR高信号が脳溝および/または皮質・皮質下白質の1か所に限局、<5cm 5〜10cm、または複数部位でそれぞれ<10cm >10cm、脳回腫大と脳溝消失を伴う。別部位を伴うことあり
ARIA-H 微小出血 新規 ≦4個 新規 5〜9個 新規 10個以上
ARIA-H 脳表ヘモジデリン沈着 1か所 2か所 >2か所

画像の重症度に加え、症状の有無・程度で対応を決めます。AURでは、画像上軽度かつ無症状なら投与を継続し、毎月MRIで経過を追うこと、画像上中等度に悪化するか症状が出れば投与を中断し毎月MRIを続けることが推奨されています(Rabinovici 2025。レカネマブAURと同じ内容とされる)。

発現頻度はドナネマブのプラセボ対照試験でARIA全体37.0%(プラセボ14.2%)、ARIA-E 24.4%(同1.9%)、ARIA-H 31.3%(同13.0%)でした(Rabinovici 2025)。実臨床のレカネマブ単施設318例ではARIAが30.8%に認められ、ARIA-Hのみが51.0%、ARIA-Eのみが9.2%、混合が39.8%でした(Rohatgi 2026)。APOE遺伝子型に応じた用量調整を行った韓国のK-ROAD研究(508例)では、ARIA-Eはε4非保有で2.0%、ε4ホモで6.2%でした(Kang 2026)。

MRI監視の実際

  • 治療前MRI:ドナネマブAURでは治療前12か月以内。微小出血が4個を超える例、脳表ヘモジデリン沈着、血管性要因が大きい例は除外(Rabinovici 2025)。
  • 治療中のMRI:ドナネマブでは2・3・4・7回目の投与前、高リスクでは12回目前、症状があればいつでも(Rabinovici 2025)。レカネマブの時期は米国AURを原典で確認してください。
  • プロトコール:米国神経放射線学会(ASNR)がFDAの基準、3つの主要シーケンス、レポートの書き方を整理しています(Cogswell 2025)。
  • リスク評価:APOE遺伝子型検査を推奨。抗凝固薬を要する患者にはレカネマブを使用しないことが推奨されています(Cummings 2023)。

関連して、脳アミロイドアンギオパチー(CAA)のARIAは脳アミロイドアンギオパチー(CAA)とは?にまとめています。

よくある疑問(Q&A)

Q1. 「レカネマブ MRI ARIA」で症状が出たら?
A. 症状が疑われる場合はいつでもMRIを撮るとされています(Rabinovici 2025)。ARIAの重症度と症状で投与の中断を判断し、判断は処方医が行います。

Q2. ARIAはいつも危険ですか?
A. レカネマブのARIAの大半は無症状で、一部が重篤、ごくまれに致死的とされています(Cummings 2023)。

Q3. 画像診断医は何を報告しますか?
A. 部位、広がり(cm)、個数、前回との比較、重症度分類です。ベースラインの微小出血数・脳表ヘモジデリン沈着の記載が、後の比較に重要です。

治療の可否や継続は、認知症専門医を含む主治医と相談してください。


参考文献

  1. Cummings J, Apostolova L, Rabinovici GD, et al. Lecanemab: Appropriate Use Recommendations. J Prev Alzheimers Dis. 2023;10(3):362-377. PubMed
  2. Rabinovici GD, Selkoe DJ, Schindler SE, et al. Donanemab: Appropriate use recommendations. J Prev Alzheimers Dis. 2025;12(5):100150. PubMed
  3. Cogswell PM, Andrews TJ, Barakos JA, et al. Alzheimer Disease Anti-Amyloid Immunotherapies: Imaging Recommendations and Practice Considerations for Monitoring of Amyloid-Related Imaging Abnormalities. AJNR Am J Neuroradiol. 2025;46(1):24-32. PubMed
  4. Yanagihara R. Clinical evaluation of medicines for patients with mild cognitive impairment and mild dementia due to Alzheimer’s disease in Japan. Alzheimers Dement (N Y). 2025;11(2):e70100. PubMed
  5. Rohatgi S, Younan CM, Martinez Imbett RE, et al. Demographic and Clinical Characteristics of Patients Treated With Lecanemab Stratified by Amyloid-Related Imaging Abnormality Status. Cureus. 2026;18(8):e114472. PubMed
  6. Kang H, Jang H, Ahn J, et al. APOE-guided lecanemab dosing dissociates ARIA-E from ARIA-H: The K-ROAD study. Alzheimers Dement. 2026;22(8):e71765. PubMed

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