123I-MIBG心筋シンチの基礎
- MIBG(123I-metaiodobenzylguanidine)は生体内でノルエピネフリンと同様の働きをする物質であり、交感神経終末に取りこまれ、貯蔵、放出される。
- 節後交感神経である心臓交感神経の障害とその分布を判定する。
- 早期像と後期像(3〜4時間後)を撮像し心/縦隔比(H/M)および洗い出し率で心臓交感神経機能を評価する。
- 読影の際には、肺集積と心筋集積を比較して心筋への集積の有無を判定する。
- 三環系抗うつ薬を服用している時は検査前に投与中止を指示する。
H/M比が低下、洗い出し亢進する疾患
- 糖尿病
- 心不全
- 虚血性心疾患
- 不整脈疾患
- びまん性レビー小体病(パーキンソン病(PD))、レビー小体型認知症(DLB))
- 家族性アミロイドーシス
- 多系統萎縮症(MSA:Multiple system atrophy)
- 中でもParkinson病では、発症早期から(自律神経障害を認めていなくても)MIBGの取り込みの低下が高率にみられることが知られている。これは、病早期から心臓交感神経へのαシヌクレインの沈着による交感神経の脱神経が、MIBG集積の低下を引き起こすと考えられている。
- 一方、健常人やParkinson症候群ではMIBGの取りこみの低下はほとんどみられない。
- このため、MIBG心筋シンチグラフィは、Parkmson病の補助診断して、またParkinson症候群との鑑別のための検査として有用である。
- ただし、例外として、家族性Parkinson病の一部では、MIBGの取り込み低下を認めないこともある。
- また、Lewy小体型認知症ではMIBGの取り込み低下が見られる。
- 心不全の場合は、早期像よりも後期像で強い低下が見られる。
- 虚血性心疾患では虚血部に一致した集積低下を認める。
- 糖尿病で集積低下を認めるのはニューロパチーを合併している場合であるが、集積低下しないこともある。
123I-MIBG心筋シンチは認知症診断に有用
これらから、認知症を来す疾患の鑑別に用いられる。
つまり、
- アルツハイマー病
- パーキンソン症候群を来す認知症疾患(進行性核上性麻痺(PSP)、多系統萎縮症(MSA)など)
と、びまん性レビー小体病(パーキンソン病(PD))、レビー小体型認知症(DLB))との鑑別に用いられる。
︎心筋/上縦隔(H/M)比の基準値
- early 2.2以上
- delay 2.2以上
- Wash out rate 9~23% 亢進していると、PD pattern
ただし、施設によりこの値は異なり、H/Mの正常値は2-3、WRは半減期補正後で10-30%の範囲であることが多い。
症例 70歳代男性 臨床所見と併せてPDと診断された症例
関連記事:パーキンソニズムを呈する疾患の鑑別疾患とMRI画像所見のポイントと役割