FDG PETにおける心筋バイアビリティ

虚血性心疾患による心不全の治療

1)薬物治療、
2)冠動脈血行再建術、
3)デバイスによる非薬物療法、
4)心臓移植

・中でも2)は虚血による心不全患者の心機能改善および長期予後向上に重要。血行再剣術の適応決定には適切な心筋バイアビリティの評価が求められる。

心筋viabilityの定義

・虚血性心疾患or心筋梗塞後では瘢痕形成がない場合、十分な心筋血流再建が行われれば、心機能が改善する可能性がある。

・この様な可逆性の心機能低下で慢性心不全の病態を呈している場合はhibernation(冬眠心筋)と分類される。

※冬眠心筋(hibernating myocardium):心筋血流が低下しているが、組織代謝は保持される。

※瘢痕組織(scar):瘢痕組織はたとえ心筋血流が治療により改善しても、心収縮能は改善しない。

虚血心筋では、心筋代謝は好気性脂肪酸代謝から嫌気性のブドウ糖代謝へ移行する。これは著明な虚血状態下においても維持される。ゆえにFDG PETが行われる。

糖負荷プロトコール

・FBS<110もしくは非糖尿病患者には、25-75g(通常50g)の経口糖負荷を行う。

・FBS>110-130 もしくは糖尿病患者には25-75g(通常50g)の経口糖負荷+レギュラーインスリンの投与を行う。

・糖尿病患者にはインスリンクランプ(インスリン+グルコース注射)が行われる。

18F FDG PET検査のプロトコール

検査前6-12時間の絶食(他のFDG PETよりも長い)が推薦される。経口ブドウ糖負荷を行った場合のインスリン分泌の反応性が良好となるため。

・一部の施設でインスリン-ブドウ糖クランプ法がFDGの心筋集積を改善する目的で使用されている。特に糖尿病患者に有用。(糖尿病は心筋にインスリンを集めるのが難しいため。)

・18F FDG投与後45-60分後に10-30分間のstatic撮像を施行する。

画像評価および心筋viabilityの判定

心筋血流/FDGミスマッチをチェックする。まず心筋血流画像で、局所心機能低下部位の心筋血流が低下しているかチェックし、次いでFDGの集積をチェック。

・血流↓ かつFDG↓ならば瘢痕組織形成。

・血流↓ かつFDG→ならば、心筋viabilityが存在すると判定する。

・FDG PETは心臓核医学検査のなかで最も優れた感度(93%)を示す。特異度についてはやや劣る。

心サルコイドーシス診断

・FDGはマクロファージなど炎症病変に集積することから炎症イメージングとしても用いられる。

・サルコイドーシスは一般に予後良好であるが、心病変合併例は予後不良な場合があり日本ではサルコイドーシス死亡原因の58-85%と高い。

・2012年より心サルコイドーシスに対するFDG PETの利用が保険適応となった。炎症部位の診断に用いられる。
※血管炎症イメージングでは高安病、動脈グラフト感染の判定にも18F FDGは有用だが、保険適応ではない。

・生理的なFDGの心筋集積を抑制するための前処置(低炭水化物食、絶食>18時間、ヘパリンを使う)が重要。

・また虚血性心疾患の診断に、13N Ammoniaも保険適応になった。

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