先に結論:131I内用療法(甲状腺)
- 131I(ヨウ素131)は、治療に働くβ線と、撮像に使えるγ線を出す放射性ヨウ素です
- 131I内用療法は、甲状腺がヨウ素を取り込む性質を利用して放射性ヨウ素で甲状腺組織を内側から治療する方法で、バセドウ病と分化型甲状腺癌(乳頭癌・濾胞癌)に使われます
- 甲状腺癌では甲状腺全摘後の残存甲状腺の破壊(アブレーション)と転移の治療に使い、ヨウ素を取り込む小さな転移・若い人で特に効果的です。治療前にはヨウ素制限と、ヨード造影剤の検査を避ける期間が必要です
- 重い副作用はまれですが、唾液腺炎・口の渇き・味覚の変化などが起こることがあります。妊娠・授乳中の方や治療後の妊娠の時期については、事前に主治医と相談します
甲状腺シンチ
- 甲状腺は血中のヨードイオンを取り込み、有機化して甲状腺ホルモンを合成する。
- 123Iは診断目的で用いられる。摂取率24時間値は甲状腺機能をよく反映する。甲状腺中毒症の鑑別には123Iのほか、ヨード制限のいらないパーテクネイトが用いられる。
- 131Iは甲状腺の被曝が大きいため、甲状腺機能亢進症や分化型甲状腺癌(乳頭癌、濾胞癌)の治療(内照射)目的で用いられる。
131I・123I・パーテクネイトの違い
| 核種 | 主な用途 | ポイント |
|---|---|---|
| 123I | 診断(シンチ・摂取率) | 画質がよく、診断に向く |
| 131I | 治療(内用療法)と治療後の全身シンチ | β線で組織を壊す。γ線のエネルギーが高く隔壁透過が多いため、画質は123Iより劣る(Rault 2007) |
| 99mTcO4–(パーテクネイト) | 診断 | ヨード制限がいらない |
内照射(内用療法)とは?
体内に投与した放射性物質を用いた放射線治療。
内照射の適応
- 131Iを甲状腺疾患(上記)へ。
- メタストロン(89Sr)を骨転移疼痛緩和薬として(現在は国内販売中止)。
- ゼヴァリンを悪性リンパ腫放射免疫療法として。
バセドウ病に対する131Iの内用療法
- 131Iが集積し、β線により甲状腺濾胞細胞を選択的に破壊する。
- 適応:抗甲状腺薬の副作用、コントロール困難例、手術後の再発など
- 前処置としてヨード制限・抗甲状腺薬の一時中止を行う(期間はガイドライン・施設の手順で確認)
- 投与量と、外来・入院のどちらで行うかは、ガイドライン・施設の手順で確認する。
- 治療効果は投与量や甲状腺の感受性による。効果が現れるまでには時間がかかる。
- 副作用としては、甲状腺機能低下症。
分化型甲状腺癌に対する131Iの内用療法
- 甲状腺は血中のヨードを取り込んで、甲状腺ホルモンを合成する。ここに131Iを取り込ませることにより、甲状腺癌を破壊していくという治療。
- 分化度の高い癌である、乳頭癌と濾胞癌に適応がある。分化度が高い方が、ヨードを取り込む甲状腺の機能を保有しているから。ただし分化癌でも、転移がヨウ素を取り込まないことがある(Durante 2006)。
- より131Iを取り込ませるためには、放射性ヨード投与の前の一定期間、ヨード制限が重要。(海産物、とくに昆布、ワカメ、たらはダメ。ほか風邪薬に含まれることもある。)
- ヨード造影剤を用いたCT検査を受けた場合は、一定期間あけてから治療する(期間は施設の手順で確認)。
- 基本的に甲状腺癌に対して手術で、甲状腺を全摘あるいは、準全摘した人が対象。正常甲状腺が残っているとそちらに集積するから。
- ヨウ素を取り込む遠隔転移があれば、この治療が中心となる。遠隔転移がない場合は再発リスクに応じて適応を判断し(低リスク例では省略できる)、投与する場合は残存する正常甲状腺(これをレムナント(remnant)という)ともに破壊して甲状腺床を一掃する(これをアブレーションという)目的で使用される。
※甲状腺全摘しても、少量の甲状腺組織が残ることが多い。低リスクの分化型甲状腺癌では、術後のアブレーションを省略しても成績が劣らないことがランダム化試験で示されている。フランスのESTIMABL2試験(730例を評価)では、3年時に再発などのイベントがなかった割合が、131Iを使わない群で95.6%、131I群で95.9%であり非劣性であった。英国のIoN試験(504例)でも、アブレーションなしの非劣性が報告されている。 - この治療の良いところは、重篤な副作用がまれであること。放射性物質を使うとはいえ、他の部位への被ばくが少ない。
131Iの内用療法の手順
- I131を経口投与する。投与量によっては、放射線治療病室への入院が必要になる。
- 治療後、γ線でシンチグラフィーを撮影。病変への集積を確認。サイズの縮小や、腫瘍マーカーであるサイログロブリンの増減をチェック。
※サイログロブリンが甲状腺全摘後に上昇すると、分化型甲状腺癌組織が存在することを示唆する。
131I内用療法の治療効果は?
- ヨウ素を取り込む肺転移・骨転移などの遠隔転移が主な対象となる。
- 肺転移には特にサイズが小さく、若年者ほど効果的。遠隔転移444例の検討では、131Iの集積があったのは295例で、そのうち43%で画像上の消失が得られ、消失例の10年生存率は92%、得られなかった例では19%でした。集積がない例や進行する例では他の治療を考えます。
- 局所再発やリンパ節転移は、手術で取り除ける場合は手術が検討される。
131I内用療法の副作用は?
- 副作用が少ないのがこの治療のメリットではあるが、副作用もある。
- アブレーション程度の量でも、唾液腺炎、口の渇き、唾液腺の痛み・腫れ、目の乾き・涙が多くなる、味覚の変化が、最大25%の患者にみられるとされる(Charalambous 2017)。唾液腺・涙腺の合併症は多く、治療を選ぶ際に考慮すべきとされている(Singer 2020)。
- 男性では精巣への影響があり、1回のアブレーションなら数か月で回復するが、治療を繰り返すと影響が蓄積しうる(Krassas 2005)。
- 17研究のメタ解析では、131I治療を受けた人で白血病のリスクがやや高かった(リスク比1.52:Su 2025)。
- 妊娠・授乳中の方や、治療後の妊娠の時期については、事前に主治医と相談する。
あわせて読みたい:甲状腺眼症(バセドウ眼症)のMRI・CT画像診断
参考文献
- Haugen BR, Alexander EK, Bible KC, et al. 2015 American Thyroid Association Management Guidelines for Adult Patients with Thyroid Nodules and Differentiated Thyroid Cancer. Thyroid. 2016;26(1):1-133. PubMed
- Ross DS, Burch HB, Cooper DS, et al. 2016 American Thyroid Association Guidelines for Diagnosis and Management of Hyperthyroidism and Other Causes of Thyrotoxicosis. Thyroid. 2016;26(10):1343-1421. PubMed
- Durante C, Haddy N, Baudin E, et al. Long-term outcome of 444 patients with distant metastases from papillary and follicular thyroid carcinoma: benefits and limits of radioiodine therapy. J Clin Endocrinol Metab. 2006;91(8):2892-9. PubMed
- Leboulleux S, Bournaud C, Chougnet CN, et al. Thyroidectomy without Radioiodine in Patients with Low-Risk Thyroid Cancer. N Engl J Med. 2022;386(10):923-932. PubMed
- Mallick U, Newbold K, Beasley M, et al. Thyroidectomy with or without postoperative radioiodine for patients with low-risk differentiated thyroid cancer in the UK (IoN): a randomised, multicentre, non-inferiority trial. Lancet. 2025;406(10498):52-62. PubMed
- Rault E, Vandenberghe S, Van Holen R, et al. Comparison of image quality of different iodine isotopes (I-123, I-124, and I-131). Cancer Biother Radiopharm. 2007;22(3):423-30. PubMed
- Charalambous A. Seeking Optimal Management for Radioactive Iodine Therapy-induced Adverse Effects. Asia Pac J Oncol Nurs. 2017;4(4):319-322. PubMed
- Singer MC, Marchal F, Angelos P, et al. Salivary and lacrimal dysfunction after radioactive iodine for differentiated thyroid cancer: American Head and Neck Society Endocrine Surgery Section and Salivary Gland Section joint multidisciplinary clinical consensus statement of otolaryngology, ophthalmology, nuclear medicine and endocrinology. Head Neck. 2020;42(11):3446-3459. PubMed
- Krassas GE, Pontikides N. Gonadal effect of radiation from 131I in male patients with thyroid carcinoma. Arch Androl. 2005;51(3):171-5. PubMed
- Su H, Yang F, Wang Z, et al. Meta-analysis of secondary hematologic malignancy risks following radioactive iodine therapy for differentiated thyroid cancer. Int J Surg. 2025;111(10):7312-7321. PubMed
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