
先に結論:PSMA-PETは前立腺がんの病期・再発診断に使われ、読影の枠組みはPROMISE(miTNM)とPSMA-RADS
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何か | 前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的としたPET。従来画像より感度・特異度が高いとされる(Woo 2025) |
| 病期(miTNM) | PROMISE v2は局所のPRIMARYスコア、molecular imaging TNM、PSMA発現スコアを統合(Woo 2025) |
| 病変ごとの確からしさ | PSMA-RADS:前立腺癌である可能性で分類。v2.0で治療後用の5Tが追加(Werner 2023) |
| 注意点 | 放射線治療後の炎症・線維化、ホルモン療法後のflare、骨折などの偽陽性(Barragán 2026, Malaspina 2023, Panagiotidis 2019) |
PSMA-PETの所見は、CT所見・PSA値・治療歴とあわせて評価します。

PSMA-PETとは
PSMA(prostate-specific membrane antigen)は前立腺がん細胞で高発現する膜タンパクで、これに結合する放射性薬剤を用いたPETが、前立腺がんの病期診断・再発診断・治療選択・治療効果判定に使われています(Arita 2026)。PSMA-PETは前立腺がんのstagingとrestagingにおいて、従来の画像検査より高い感度と特異度を示すとされています(Woo 2025)。
病期診断への影響を示す数値として、高リスク前立腺癌でproPSMA試験ではPSMA-PET/CTにより14%でupstagingが生じたと報告され、放射線治療を予定した高リスク例142例のTHUNDER試験の最初の1年のデータでは、従来のTNMに比べ142例中42例(30%)でupstaging、1例(1%)でdownstagingでした。miN1-2への上昇は32例(23%)、miM1a-cへの上昇は19例(13%)でした(Kleiburg 2025)。
骨盤MRIによる局所評価は前立腺癌のMRIとPI-RADS v2.1、骨盤リンパ節の見方は前立腺癌のリンパ節転移の画像診断を参照してください。
症例 70歳代男性 PSA高値(5.41 ng/mL)で前立腺癌と診断

引用:Radiopaedia(Prostate cancer (PSMA PET-CT))
F-18 PSMA PET/CTの軸位断(融合画像)です。前立腺に限局した強い集積が見られ、患者さんの右側にあります。生検で証明された前立腺癌(Gleason 4+3)に一致し、リンパ節や骨への遠隔転移を疑う集積は指摘されていません。
報告の枠組み:PROMISE v2・miTNM・PSMA-RADS
読影の標準化のために、複数の枠組みが提案されています。RSNAのRadiology誌の総説では、次のように整理されています(Woo 2025)。
| 枠組み | 目的・内容 |
|---|---|
| PROMISE v2 | 局所病変の5段階PRIMARYスコア、病変の広がりを表すmolecular imaging TNM(miTNM)、PSMA標的放射性リガンド治療の適応を見るPSMA発現スコアを統合 |
| PSMA-RADS | PSMA PET/CT所見を、前立腺がんが存在する可能性に基づいて分類 |
| PPP基準 | 治療効果判定。新規病変と臨床的・生化学的進行に注目 |
| RECIP 1.0 | 治療効果判定。新規病変とPSMA陽性腫瘍体積の変化を評価 |
実臨床では、PROMISE v2でstagingをそろえ、判定に迷う病変にPSMA-RADSの用語を使い、簡潔な報告テンプレートに入れる方法が提案されています(Arita 2026)。一方で、実際の報告では枠組みの採用率が低く、病変の記載や経時比較にばらつきがあることも指摘されています(Arita 2026)。
PSMA-RADS 1.0から2.0へ
PSMA-RADS v1.0は病変を前立腺癌である可能性で分類し、PSMA-RADS-4・5の病変は実際に陽性であることが多数の研究で裏付けられています。v2.0は、治療後の局所病変の経過観察などv1.0の限界を補うため、カテゴリーを見直して病変レベルの評価を最適化したものです(Werner 2023)。
- v2.0ではカテゴリー1の分類が簡略化され、治療後評価用のPSMA-RADS-5Tが追加された(Almalki 2025)
- 443例の前向き多施設研究(68Ga-PSMA-11 PET/CT)では、v1.0に比べv2.0で診断精度が、新規診断群95.9%→97.4%、生化学的再発群92.6%→95.7%、経過観察群88.7%→94.7%と向上した(Almalki 2025)
- 読影者間一致は両版で同程度で、最も低かったのは軟部組織の評価(ICC 0.36〜0.50)だった(Almalki 2025)
判断に迷うPSMA-RADS-3A(未確定)病変については、PSAが高いほど真の陽性が多いことが示されています。28例・171病変の検討では、陽性病変の患者の中央値PSAは5.8 ng/mL、陰性病変では0.2 ng/mLで、PSA > 1 ng/mLで陽性率が有意に高く、分類精度が最も高かったのはPSA 0.6 ng/mL以上(精度80.12%)でした(Garg 2022)。
偽陽性とflareの注意点
- 放射線治療後:照射野(前立腺床、リンパ節、骨)での炎症や線維化が偽陽性の原因となりうる。放射線治療やアンドロゲン受容体阻害薬はPSMA発現を修飾し、真の進行ではない一過性の集積増加(flare)を起こしうるが、ホルモン未治療例での意味づけは確立していない(Barragán 2026)
- ホルモン療法後のflare:新規診断の転移性前立腺癌25例で、ADT開始3〜4週後の[18F]PSMA-1007 PETでは、骨病変の26%、リンパ節病変の11%、前立腺病変の11%で集積が20%以上増加した。特に骨転移で顕著だった(Malaspina 2023)
- 良性骨病変:肋骨骨折(18F-PSMA-1007)が骨転移に似た集積を示した症例(Panagiotidis 2019)がある。CTでの形態の対比が重要
骨シンチとの違いや、骨シンチでのflareは骨シンチグラフィの見え方と注意点も参照してください。
次にすること
- PSA値・治療歴・直近の治療(放射線、ADT、AR阻害薬)の時期を確認してから読影する
- 結論はPROMISE v2のmiTNMでそろえ、迷う病変はPSMA-RADSで表現し、CTの形態と対比する
- 骨病変は骨折・良性病変との鑑別のため、CT所見を確認する
- 日本での保険適用・使用できる施設については、公的資料の現行版で確認する
よくある疑問(Q&A)
Q. PSMA-PETで陽性ならすべて前立腺がんの転移ですか。
A. いいえ。PSMAは他の正常組織や良性・悪性の病変にも発現します。骨折など、骨転移に似た良性病変の報告があります(Panagiotidis 2019)。
Q. 治療後の最初のPETで集積が増えました。悪化ですか。
A. ホルモン療法や放射線治療後のflareのことがあります(Malaspina 2023, Barragán 2026)。PSAの推移や追加画像とあわせて判断します。
本記事は一般的な情報です。個別の診断・治療については、主治医にご相談ください。
参考文献
- Woo S, Masci B, Rowe SP, et al. Navigating the Scoring Systems and Interpretation Frameworks of Prostate-specific Membrane Antigen PET. Radiology. 2025;317(3):e250701. PubMed
- Arita Y, Zheng X, Wen F, et al. Standardizing PSMA PET/CT reporting in prostate cancer: from structured frameworks to AI-assisted interpretation. Abdom Radiol (NY). 2026. PubMed
- Werner RA, Hartrampf PE, Fendler WP, et al. Prostate-specific Membrane Antigen Reporting and Data System Version 2.0. Eur Urol. 2023;84(5):491-502. PubMed
- Almalki YE, Basha MAA, Ali SA, et al. Comparison of Prostate-specific Membrane Antigen Reporting and Data System Version 1.0 versus 2.0 for Prostate Cancer Assessment. Radiol Imaging Cancer. 2025;7(3):e240390. PubMed
- Kleiburg F, Dirix P, Fonteyne V, et al. Stage Migration on Prostate-specific Membrane Antigen Positron Emission Tomography/Computed Tomography in Comparison to Conventional Imaging in Patients with High-risk Prostate Cancer Referred for Radiation Therapy: Results from the Phase 2/3 THUNDER Trial. Eur Urol Oncol. 2025;8(5):1333-1339. PubMed
- Malaspina S, Ettala O, Tolvanen T, et al. Flare on [18F]PSMA-1007 PET/CT after short-term androgen deprivation therapy and its correlation to FDG uptake: possible marker of tumor aggressiveness in treatment-naïve metastatic prostate cancer patients. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2023;50(2):613-621. PubMed
- Barragán VV, Couñago F, Pozo NS, et al. PSMA PET Imaging in the Postradiotherapy Setting: Implications for the Diagnosis of Recurrent Prostate Cancer. Clin Genitourin Cancer. 2026;24(2):102505. PubMed
- Garg T, Werner RA, Chung HW, et al. Association of True Positivity with Serum Prostate-Specific Antigen Levels and Other Clinical Factors in Indeterminate PSMA-RADS-3A Lesions Identified on 18F-DCFPyL PET/CT Scans. Tomography. 2022;8(6):2639-2647. PubMed
- Panagiotidis E, Paschali A, Giannoula E, et al. Rib Fractures Mimicking Bone Metastases in 18F-PSMA-1007 PET/CT for Prostate Cancer. Clin Nucl Med. 2019;44(1):e46-e48. PubMed
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