褐色細胞腫(pheochromocytoma)とは?

  • 副腎髄質や交感神経節に存在するクロム親和性細胞が腫瘍化したもので、発生部位により副腎褐色細胞腫(副腎髄質由来)と副腎外褐色細胞腫(傍神経節由来、paraganglioma(傍神経節細胞腫))に分類される。
  • カテコラミンなどの種々の生理活性物質を生成分分泌することで臨床症状を呈する。
  • 古典的臨床症状はhypertension,headache,hyperhydrosis,hyperglycemia,hypermetabolism(高血圧、頭痛、発汗過多、高血糖、代謝亢進)の5Hと称されており、発作時は頭痛、動悸、胸部圧迫感、発汗、腹部不快感などを自覚し、顔面や四肢は蒼白で冷汗が見られる。
  • 頸部、後縦隔、傍大動脈領域、膀胱などに同様の組織像を呈する腫瘤が発生し、傍神経節腫(paraganglioma)として知られる。褐色細胞腫が疑われ、副腎に病変がない場合は、これらの部位の画像評価が必要となる。
  • 大部分の症例は良性であるが、約1割の症例では、肝、リンパ節、骨などに転移を来たし、悪性腫瘍としての経過を示すことがある。転移が存在するときのみ、悪性とされる。
  • 2003年度の副腎偶発腫の全国調査によれば、副腎偶発腫3239例中8.7%に褐色細胞腫が報告されている。
  • メトクロプラミド、グルカゴン、造影剤などの薬物投与、麻酔導入、運動、腹部圧迫などによって発作が誘発されることが知られている。
  • 治療は、可能なかぎり外科的摘出を行う。良性の場合、外科的摘出後の5年生存率は95%程度。
  • 悪性褐色細胞腫は予後不良。悪性褐色細胞腫の頻度は3.5~26%。特に副腎外原発、大きい腫瘍(径5cm以上)などでは頻度が高い。

褐色細胞腫の画像所見

CT

  • 造影CT(特に動脈相)における良好な造影効果
  • 内部に嚢胞変性や、出血を認めることが少なからずある。時に実質部分がほとんど確認できないほど変性が強いことがある。

※ただし、この腫瘍が疑われる場合に造影CTは禁忌。

MRI

  • T1強調像にて低信号、T2強調像にて高信号を呈するが、例外も多い。
  • 化学シフト画像にて脂肪の存在は証明されない。

シンチ

  • 123I-MIBGシンチグラフィにより集積があれば診断はほぼ確定する。褐色細胞腫は約10%が 副腎外発生(傍神経節細胞腫)であるので、臨床的に疑われるにもかかわらず、副腎に腫瘤が発見できない場合には、頚部から骨盤までCTを撮影し、さらに必要であれば123I-MIBGシンチグラフィによりその位置を確定する。

褐色細胞腫疑いの腹部造影CTはどうすればいい?

  • 褐色細胞腫では造影検査の臨床的意義が高いと考えられる。
  • 造影検査時の遮断薬(αブロッカー)の必要性について検討した結果では、非イオン性造影剤を使用して造影検査を行なう際に遮断薬の併用が必ずしも必要ではないとの報告もある。
  • 褐色細胞腫の患者への腹部造影CTを実施する場合には、造影検査後の血圧変動に留意し高血圧発作に対する薬剤を準備しておく事が重要であると考えられる。
  • 高血圧発作が生じる可能性についてのinformed consent+造影検査前後の血圧測定。

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