先に結論:巨大大槽(mega cisterna magna)とくも膜嚢胞

  • 巨大大槽は、小脳の後ろ下にある髄液のスペース(大槽)が広く見える正常変異で、ほとんどは症状がなく治療も不要です
  • 脳槽は髄液がたまって広くなったくも膜下腔で、大槽は小脳の下面と延髄の後ろにある最も大きな脳槽です
  • くも膜嚢胞は、くも膜の中に髄液が袋状にたまったもので、中頭蓋窩に最も多く、多くは無症状で偶然見つかります
  • どちらもMRIで髄液と同じ信号(FLAIRで黒く、拡散強調像で光らない)です。後頭蓋窩では、周りの髄液腔とつながり小脳を押していなければ巨大大槽、小脳や第4脳室を押していればくも膜嚢胞を考えます。拡散強調像で光る場合は類上皮腫を疑います

脳槽とは?大槽はどこにある?

脳槽は、くも膜下腔のうち髄液がたまって広くなっている部分です。大槽はその中で最も大きく、小脳の下面と延髄の後ろにあります。

主な脳槽 場所
大槽(小脳延髄槽) 小脳の下面と延髄の後ろ
橋前槽 橋の前面と斜台の間
脚間槽 左右の大脳脚の間
鞍上槽 トルコ鞍の上(視交叉・下垂体柄のまわり)
迂回槽・四丘体槽 中脳の外側〜後方
シルビウス槽 前頭葉と側頭葉の間(シルビウス裂)

ほかの脳槽(鞍上槽・迂回槽・シルビウス槽など)の名前と場所は、脳槽はどこ?大槽・鞍上槽・迂回槽などの場所をCT・MRIで解説で一覧にしています。

巨大脳槽とくも膜嚢胞

巨大大槽(mega cisterna magna)

  • 小脳と延髄結合部のくも膜下腔(大槽)が拡大した状態。
  • 大槽は上面が小脳虫部下部、前面が延髄、後面は後頭骨の正中部で囲まれたくも膜下腔のこと。
  • 脳脊髄液と同じ成分。
  • Dandy-Walker complexの1型とする考え方もある。
症例 70歳代女性

megacisterna

小脳背側にT2WI高信号あり。
FLAIRでは低信号で、脳脊髄液と同じ信号。
矢状断像では、くも膜下腔と連続している様子がわかり、巨大大槽(mega cisterna magna)と診断される。

くも膜嚢胞(arachnoid cyst)

  • 脳脊髄液が嚢胞状にくも膜下腔に貯留したもの。
  • くも膜下腔が存在するいかなる場所にも発生する。
  • 成人48,417人の脳MRIでは1.4%にみられ、場所は中頭蓋窩34%、小脳の後ろ(後頭蓋窩)33%、円蓋部14%の順に多かった(Al-Holou 2013)。

巨大大槽とくも膜嚢胞の鑑別1)

水頭症を起こすような巨大なくも膜嚢胞の場合は、鑑別が必要になることもあるが、両者は鑑別の必要もないことが多い。

両者は区別が困難な場合もあるが、

  • 嚢胞が第4脳室(くも膜下腔)と連続せず、小脳および第4脳室脈絡叢の前方への圧排があればくも膜嚢胞。
  • 嚢胞が第4脳室(くも膜下腔)と交通し、小脳の圧排がみられなければ巨大大槽。

を考える。

嚢胞による後頭骨内板の侵食は両者に見られうるため、鑑別点とはならない。

拡散強調像から求めたADC値で両者を区別できたとする報告もあり、ADC値は巨大大槽40例で(3.30±0.08)×10⁻³mm²/s、大槽部のくも膜嚢胞46例で(3.11±0.12)×10⁻³mm²/sと、巨大大槽のほうが高かった(Li 2025)。

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参考文献:
1)臨床画像 vol.27,No.1,2011 P4

  1. Kau T, Marterer R, Kottke R, et al. Blake’s Pouch Cysts and Differential Diagnoses in Prenatal and Postnatal MRI: A Pictorial Review. Clin Neuroradiol. 2020;30(3):435-445. PubMed
  2. Li Q, Feng Z, Cheng H, et al. Differentiating mega cisterna magna from cisterna magna arachnoid cysts: The diagnostic utility of quantitative diffusion-weighted imaging parameters. J Appl Clin Med Phys. 2025;26(7):e70166. PubMed
  3. Al-Holou WN, Terman S, Kilburg C, et al. Prevalence and natural history of arachnoid cysts in adults. J Neurosurg. 2013;118(2):222-31. PubMed

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