十二指腸(じゅうにしちょう)は、胃の出口(幽門)から始まり、膵頭部をC字形に囲んで小腸(空腸)へつながる腸です。CTでは、つぶれていると膵臓やリンパ節、血管と見分けにくく、「どこからどこまでが十二指腸か」で迷いやすい場所です。

この記事では、十二指腸を球部・下行脚・水平部・上行部の4つに分けて、それぞれがCTのどの高さで、何の隣に見えるのかを、画像診断cafeの正常な腹部CTに色を付けて解説します。腹部CT全体の高さごとの解剖は腹部CTの解剖|臓器・血管の場所をスライスの高さごとに解説、十二指腸の病気の見方は胃・十二指腸のCTの見方で扱っています。

先に結論:十二指腸をCTで追うときの目印

  1. 球部:胃の出口(幽門)のすぐ先。胆嚢の内側、膵頭部の前上方にある、ふくらんだ短い部分です
  2. 下行脚:膵頭部の右側を縦に下ります。内側の壁に総胆管と膵管が開く大十二指腸乳頭(Vater乳頭)があります
  3. 下十二指腸曲:下大静脈の右前で、縦から横へ向きを変えます
  4. 水平部:前にSMA・SMV、後ろに下大静脈と大動脈という「血管のサンドイッチ」の間を右から左へ横切ります
  5. 上行部:大動脈の左を上がり、Treitz靱帯のところ(十二指腸空腸曲)で空腸になります
  6. 追い方のコツ:上から1枚ずつ、胃→球部→下行脚→水平部→上行部と、腸管の中のガスや液体をつなげるように追います

十二指腸はどこにある?(ひとことで)

十二指腸は、みぞおちの奥、背骨の右前から前を横切って左へ、膵頭部を囲むように走ります。全体をつなげると「C」の字になり、そのC字のくぼみに膵頭部がはまっています。

大事なのは、球部(の大部分)は腹膜に包まれて動きやすいのに対し、下行脚から上行部までは後腹膜(前腎傍腔)に固定されていることです。膵臓と同じ区画にあるため、膵炎の炎症や十二指腸の穿孔で漏れた空気・液体が、後腹膜に広がることがあります(区画の考え方は前腎傍腔の画像診断、後腹膜腔のCT解剖)。

CTで十二指腸を見つける:上から順に追う

①球部:胃の出口のすぐ先

十二指腸球部 腹部CT 胃 胆嚢 膵臓
黄色が十二指腸球部です。青の胃の出口(幽門)から右後ろへ続き、緑の胆嚢のすぐ内側、ピンクの膵臓の前上方に見えます。
画像:画像診断cafe(正常例)

球部は、胃の前庭部から幽門の筋肉の厚いところを越えた先の、少しふくらんだ部分です。胃の続きとして追うと見つけやすく、胆嚢と接しているのが目印です。

球部の後ろには胃十二指腸動脈(GDA)が通っています。球部の後ろの壁にできた潰瘍が深くなるとGDAから出血することがあり、前の壁の潰瘍は腹腔内に穴があいて free air になりやすい、という違いはこの位置関係から理解できます(膵臓の血管(動脈)の解剖まとめ、上部消化管穿孔のCT)。

②下行脚(上部):胆嚢の内側、膵頭部の右

十二指腸下行脚 腹部CT 膵頭部 総胆管 胆嚢
球部が右後ろで下に曲がると(上十二指腸曲)、黄色の下行脚になります。紫の胆嚢の内側、ピンクの膵頭部の右に接して見え、緑の総胆管が膵頭部の後ろを下ってきます。
画像:画像診断cafe(正常例)

下行脚は、腎臓の前、肝臓と膵頭部の間を縦に下る部分です。横断像では毎スライス同じような場所に丸く見えるので、「膵頭部の右にある丸い腸管」として覚えると追いやすくなります。

③下行脚(下部):総胆管と膵管が開くところ

十二指腸下行脚 Vater乳頭の高さ 総胆管 膵頭部 SMV
下行脚(黄色)の内側に、ピンクの膵頭部と緑の総胆管がぴったり接しています。総胆管はこのあたりで下行脚の内側の壁へ入り、膵管と合わさって大十二指腸乳頭に開きます。水色はSMVです。
画像:画像診断cafe(正常例)

下行脚の内側の壁には、総胆管と主膵管が開く大十二指腸乳頭(Vater乳頭)があり、その少し上に副膵管が開く小十二指腸乳頭があります。CTで乳頭そのものは見えにくいことが多いのですが、総胆管を上から追って、十二指腸の内側に入るところがおおよその位置です。

下行脚と膵頭部のすき間はgroove(グルーブ)領域と呼ばれ、ここに起こる膵炎や癌は十二指腸の壁が厚く見えることがあります(groove領域とは?)。また、乳頭のまわりの内側の壁は十二指腸憩室ができやすい場所で、ガスや液体を含む袋が膵頭部に食い込んで見えます(十二指腸憩室とは?、Lemmel症候群)。

④下十二指腸曲:下大静脈の右前で横向きに

下十二指腸曲 水平部の始まり 腹部CT 下大静脈 大動脈 SMA SMV
下行脚が下まで来ると、黄色の部分で左へ向きを変えます(下十二指腸曲)。水色の下大静脈の右前にあり、この先で水平部として正中へ向かいます。前には水色のSMV、赤のSMA、背骨の前に橙の大動脈が見えます。
画像:画像診断cafe(正常例)

ここは膵頭部の下端(膵鉤部)より少し下になります。膵鉤部はSMVの後ろへ回り込む膵頭部の一部で、十二指腸の下行脚と水平部に囲まれています(膵鉤部はどこ?)。

⑤水平部:SMA・SMVと大動脈の間を横切る

十二指腸水平部 SMAと大動脈の間 腹部CT
黄色の十二指腸水平部が、前の赤いSMA・水色のSMVと、後ろの水色の下大静脈・橙の大動脈の間を、右から左へ横切っています。十二指腸を見つけるいちばんの目印になる高さです。
画像:画像診断cafe(正常例)

水平部は「SMAと大動脈の間を通る腸」と覚えるのが近道です。CTでは、SMAとSMVを下へ追っていき、その後ろを横に走る腸管を探します。横断像で1枚に長く写ることが多く、十二指腸全体の位置を確かめる基準になります。

⑥上行部:大動脈の左を上がって空腸へ

水平部が大動脈の前を越えると、上行部として大動脈の左側を上へ向かい、膵体部の下あたりで前へ曲がって空腸になります。この曲がり角を十二指腸空腸曲といい、Treitz靱帯で後腹膜に吊られています。画像診断cafeの腹部CTでは、上行部は水平部から左へ続く腸管として、左腎静脈より下・大動脈の左前で追います。

上行部は空腸のループと接していて境目がわかりにくいので、水平部から連続しているかで判断します。

周りの構造との関係をまとめると

  • 膵頭部:十二指腸のC字のくぼみに入っています。下行脚と水平部に囲まれ、膵十二指腸アーケード(前・後)が両者の間を走ります
  • 胆道:総胆管は球部の後ろ→膵頭部の後ろを下り、下行脚の内側に開きます
  • 血管:球部の後ろにGDA、水平部の前にSMA・SMV、後ろに下大静脈・大動脈があります
  • 右腎・右副腎:下行脚の後ろにあります
  • 横行結腸・結腸間膜:下行脚の前を横行結腸間膜の付け根が横切ります。結腸間膜根部の位置は腸間膜とは?で解説しています

十二指腸の働き

十二指腸は、胃から送られてきた酸性の内容物に、膵液と胆汁を混ぜる場所です。膵液に含まれる重炭酸が胃酸を中和し、消化酵素と胆汁で脂肪・たんぱく質・炭水化物の消化が進みます。十二指腸の粘膜からはセクレチンやコレシストキニンといったホルモンが出て、膵液の分泌や胆嚢の収縮を促します。鉄やカルシウムなどの吸収もこのあたりで多く行われます。

CTでよく間違える点

  • つぶれた十二指腸を腫瘤と見間違える:内容物がないと、下行脚や水平部が膵頭部の腫瘤やリンパ節に見えることがあります。上下のスライスで腸管として連続しているかを確かめます。水を飲んでもらって広げるとわかりやすくなります(胃・十二指腸のCTの見方)
  • 憩室を膵嚢胞と間違える:乳頭の近くの憩室は、ガスや造影剤が入っていれば区別できます。液体だけだと膵頭部の嚢胞に見えることがあります
  • 水平部がSMAの後ろを通らない:腸回転異常では、十二指腸が正中を越えず、水平部がSMAと大動脈の間を通りません。SMVがSMAの左にある、などの所見と合わせて考えます(腸回転異常とは?)

十二指腸の場所が大事になる病気

画像診断cafeで自分で確かめる

この記事の画像は、正常な腹部造影CTをタップすると解剖名がわかる無料ツール「画像診断cafe」から作りました。腹部CTの正常解剖(画像診断cafe)では、スライスを上下に動かしながら、球部・下行脚・水平部の色分けや、膵臓・SMA・SMVとの位置関係を自分で確かめられます。

スマートフォンではアプリも使えます。iPhoneはApp Storeで「画像診断cafe」と検索してください。AndroidはGoogle Play(画像診断cafe)からインストールできます。腹部CTのほかの見方は腹部CTの正常解剖ツール、冠状断で十二指腸のC字を見たい場合は腹部CTの冠状断・矢状断の解剖も参考にしてください。

十二指腸の場所でよくある疑問(Q&A)

Q. 十二指腸は後腹膜臓器ですか?
A. 下行脚・水平部・上行部は後腹膜(前腎傍腔)にあります。球部の大部分は腹膜に包まれていて、後腹膜には固定されていません。そのため、球部の前壁の穿孔では腹腔内に、下行脚や水平部の損傷では後腹膜に空気や液体が出やすくなります。

Q. CTでVater乳頭の位置はどうやって探しますか?
A. 乳頭そのものは小さいため、総胆管を肝門部から下へ追い、膵頭部の後ろを通って十二指腸下行脚の内側の壁に入る所を探します。MRCPでは総胆管と膵管の合流部として見えます。

Q. 水平部がわからないときは?
A. SMAとSMVを腹腔動脈の少し下から下へ追い、その後ろ、大動脈と下大静脈の前を横に走る腸管を探します。見つかった水平部から右へたどれば下行脚、左へたどれば上行部につながります。

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