先に結論:膵頭十二指腸切除術と膵体尾部切除術
- 膵切除は膵頭部の腫瘍に行う膵頭十二指腸切除術(PD)と、膵体尾部の腫瘍に行う膵体尾部切除術(DP、多くは脾臓も切除)が代表です
- PDは膵頭部・十二指腸・胆管・胆嚢などを切除し、膵・胆管・胃(または十二指腸)を空腸につなぐ再建を行います。胃を温存する術式(PPPD・SSPPD)が多く行われます
- PPPDは幽門輪を残し、SSPPD(亜全胃温存膵頭十二指腸切除術)は幽門輪を切除して胃の大部分を残す術式です。比較試験では術後に胃の動きが悪くなる胃排出遅延がSSPPDで4.5%、PPPDで17.2%と、SSPPDで少なくなりました(Kawai 2011)
- 再建は、空腸に膵→胆管→胃の順につなぐChild法(とその変法)がよく用いられます
- 術後CTを読むときはどの順番で何がつながれているかを把握し、膵液瘻・仮性動脈瘤・吻合部の問題を評価します。膵液瘻は2016年のISGPS改訂で、ドレーン排液アミラーゼが血清正常上限の3倍を超え、かつ臨床的影響があるものと定義され、従来のgrade Aは『biochemical leak』として膵液瘻から外されました(grade Bは治療方針の変更やドレナージを要するもの、grade Cは再手術・臓器不全・死亡に至るもの)。術後出血(postpancreatectomy hemorrhage:PPH)もISGPSが定義しており、発症時期(術後24時間以内の早期か、24時間以降の後期か)、出血部位(消化管内か消化管外か)、重症度の3項目でgrade A〜Cに分類します。
- 手術の前には、CTで腫瘍と血管の接触を調べて切除可能(resectable)・切除可能境界(borderline resectable)・局所進行(locally advanced)のどれかに分類します。血管ごとに「接触なし・180°以下・180°超」を報告に書くのが基本です

膵の切除手術には大きく2種類に分けられます。
- 膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy;PD)
- 膵体尾部切除術(distal pancreatectomy;DP)
の2つです。
このほか、癌が膵全体に及ぶ場合には膵全摘術が行われることもありますが、今回は上記2つの膵切除について見ていきます。
膵頭十二指腸切除術について切除する臓器および再建方法について動画解説しました。
膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy;PD)

- 膵頭部癌・十二指腸乳頭部癌・下部胆管癌・十二指腸に浸潤した胃癌や胆管癌などの乳頭部周囲を主座とする腫瘍に対して行う。
- 従来は膵頭部・十二指腸・近位空腸の一部・胆嚢、胆管・幽門側の胃を切除した。
- 近年は制酸薬による吻合部潰瘍のコントロールが可能となったため、胃を以前よりも温存する手術が施行されることが多い。
胃を温存する膵頭十二指腸切除術
- 幽門輪温存膵頭十二指腸切除(pylorus-preserving PD;PPPD):幽門輪と胃を温存する
- 亜全胃温存膵頭十二指腸切除(subtotal stomach-preserving PD;SSPPD):幽門洞のみを切除する(大半の胃を温存する)
がある。
PPPDとSSPPDの違い
| PPPD(幽門輪温存) | SSPPD(亜全胃温存) | |
|---|---|---|
| 胃の切離 | 幽門輪の先(十二指腸)で切る | 幽門輪のすぐ手前(幽門洞)で切る |
| 残る胃 | 胃全体と幽門輪 | 幽門輪を除く胃の大部分 |
| 空腸とつなぐ所 | 十二指腸空腸吻合 | 胃空腸吻合 |
| 胃排出遅延 | 比較的多い | 少ない(4.5% vs PPPD 17.2%、Kawai 2011) |
8つの比較研究(650人)をまとめた解析でも、SSPPDはPPPDより胃排出遅延が少なく、経鼻胃管を入れておく期間も短い一方、膵液瘻や術後出血の頻度には差がありませんでした(Huang 2015)。
膵頭十二指腸切除術(PD)の手順
施設や病気の広がりによって違いはありますが、おおまかな流れは次のとおりです(開腹のほか、腹腔鏡やロボットで行う施設もあります)。
- 肝臓や腹膜への転移がないか確認する
- 十二指腸と膵頭部を後腹膜からはがす(Kocher授動)
- 胆嚢を摘出し、胆管を切る
- 胃(SSPPD)または十二指腸(PPPD)を切る
- 門脈・上腸間膜静脈の前で膵臓を切る
- 空腸を切り、膵頭部・十二指腸・胆管・胆嚢をまとめて取り出す(がんではリンパ節も)
- 空腸を持ち上げて、膵・胆管・胃(十二指腸)をつなぐ(再建)
膵頭十二指腸切除術(PD)後の消化管再建法
- 胆管空腸吻合、膵空腸吻合、胃空腸吻合の最低でも三か所の消化管吻合を要する高度な手術で、基本的にはWhipple法(ウィップル法)、Child法(チャイルド法)、Cattell法(キャトル法)の3法に大別される。
- 再建法は、施設により差があるが、Child変法による再建術式が選択されることが多い。
Whipple法
胆管→膵→胃の順に小腸と吻合する。

Child法
膵→胆管→胃の順に小腸と吻合する。

Child法とChild変法の違い
Child変法は、Child法の膵→胆管→胃(十二指腸)という順番はそのままにして、吻合のしかたを変えたものです。一般に、元のChild法では膵臓の断端を空腸の断端に差し込む(端端吻合)のに対し、Child変法では空腸の側面に膵管と空腸の粘膜を縫い合わせる(膵管空腸粘膜吻合などの端側吻合)方法をとります。胃空腸吻合の下で空腸どうしをつなぐBraun吻合を加える施設もあり、細部は施設によって異なります。
Cattell法
胃→膵→胆管の順に小腸と吻合する。食物の通過が生理的な再建法。

膵体尾部切除術(distal pancreatectomy;DP)

- 膵体尾部癌に対する切除術で、上腸間膜静脈よりも左側の膵組織の切除する。
- 通常、脾臓も合併切除する。
- この術式では、基本的に膵頭十二指腸切除術のような消化管再建法は必要ない。
- 局所進行膵体癌に対しては、腹腔動脈合併尾側膵切除(distal pancreatectomy with en-bloc celiac axis resection;DP-CAR)が施行される場合、IVRによる術前血流改変(術後の胃や肝虚血予防目的)を行う。腹腔動脈〜総肝動脈血流を事前に塞栓して、上腸間膜動脈から膵アーケードを介した血流の発達を促すことを目的とする。
膵癌の切除可能性分類:resectable・borderline・unresectable(局所進行)と血管接触の記載
膵癌は診断時に手術ができるのが15〜20%にとどまり、遠隔転移や、膵臓の周りの血管への浸潤が手術の妨げになります(Giannone 2021)。そこで手術の前に、CTで腫瘍と血管の関係を調べ、手術をすぐに行うか、先に薬物療法などの術前治療を行うかを検討します。もっとも広く使われているNCCNの分類は、血管への浸潤の程度によって次の3つに分けます(Giannone 2021)。
| 分類 | 考え方 |
|---|---|
| 切除可能(resectable) | 血管への浸潤が目立たず、手術を先に行うことを考える |
| 切除可能境界(borderline resectable) | 血管との接触があり、切除の可否と、術前治療を先に行うかを慎重に検討する |
| 局所進行(locally advanced、以前はunresectable) | 血管に大きく及ぶ。以前は動脈を取り囲む(180°を超える)腫瘍を「切除不能」と呼んでいたが、現在は局所進行と呼ぶ |
近年は、術前治療の進歩や専門施設での血管再建の技術によって、局所進行の膵癌でも静脈と動脈を同時に切除する手術が行われる施設があります(Giannone 2021)。動脈の切除を伴う手術(本文のDP-CARなど)を行う施設もあります。
国際コンセンサスでは「血管だけでなく、腫瘍の性質と全身状態も見る」
2017年の国際コンセンサスは、切除可能境界膵癌を解剖学的(A)・生物学的(B)・全身状態(C)の3つの面で定義しました。いずれか1つ以上が当てはまれば切除可能境界とします(Isaji 2018)。
- A(解剖学的):上腸間膜動脈・腹腔動脈との接触が180°未満で、狭窄や変形がない。総肝動脈との接触があって固有肝動脈や腹腔動脈への接触がない。上腸間膜静脈・門脈との接触(両側の狭小化や閉塞を含む)で、十二指腸の下縁を越えない
- B(生物学的):血管の条件では切除可能だが、遠隔転移やリンパ節転移が疑われる(確定はしていない)、またはCA19-9が500U/mLを超える
- C(全身状態):血管と生物学的な条件では切除可能だが、全身状態(ECOGのperformance status)が2以上
レポートに書くこと:血管の接触範囲
画像診断のレポートでは、血管ごと(上腸間膜静脈・門脈・上腸間膜動脈・腹腔動脈・総肝動脈)に、腫瘍との接触を「なし」「180°以下」「180°超」で記載します。直接の接触だけでなく、血管の周囲の脂肪が濁る・索状に見える所見も接触として扱い、血管壁の不整、静脈再建が安全にできるか、動脈の走行異常(変異)の有無も重要です(Giannone 2021)。放射線科学会と米国膵臓学会が、用語を統一した報告書の型を提案しており、切除可能性を統一して記載することで、施設を超えた比較や研究にも役立ちます(Al-Hawary 2014)。
ただし、この判定は読む人によって差が出やすいことがわかっています。69例のCTを22人(外科医11人、放射線科医11人)が独立に評価した研究では、全員の評価が一致したのは5例(7.2%)で、25例(36.2%)は3つの分類すべてに振り分けられました。一致度は中等度までで、特に切除可能境界で低く、血管との接触が180°以下かどうかの判定が最も一致しにくいという結果でした。一方、静脈の180°超の浸潤は最も一致しました(Giannone 2021)。迷う所見は、血管のどの部位でどのくらいの角度か、画像を示して外科医と共有することが大切です。
Q. 切除可能境界と局所進行の違いは何ですか?
A. 主に血管との関係で分けます。動脈を取り囲むほど(180°を超えて)腫瘍が及ぶと局所進行とされます。切除可能境界は、血管との接触が限られ、術前治療を含めた方針を慎重に検討する対象です(Giannone 2021、Isaji 2018)。分類は施設や版によって細部が異なるため、主治医に確認してください。
Q. 切除可能境界は、血管との接触だけで決まりますか?
A. 2017年の国際コンセンサスでは、血管の条件に加えて、CA19-9が500U/mLを超える、遠隔転移が疑われる、全身状態が良くないといった条件でも切除可能境界と考えます(Isaji 2018)。
関連記事:
参考文献:
- 病気がみえる Vol.1 消化器(第6版)電子版
- 曽根 美都, 加藤 健一, 吉岡 邦浩. 肝・胆・膵術後の合併症と画像診断. 臨床画像 38(13):38-50, 2022(7月増刊号)(本記事の参照: P39-40)
- Bassi C, Marchegiani G, Dervenis C, et al. The 2016 update of the International Study Group (ISGPS) definition and grading of postoperative pancreatic fistula: 11 Years After. Surgery. 2017;161(3):584-591. PubMed
- Wente MN, Veit JA, Bassi C, et al. Postpancreatectomy hemorrhage (PPH): an International Study Group of Pancreatic Surgery (ISGPS) definition. Surgery. 2007;142(1):20-25. PubMed
- Kawai M, Tani M, Hirono S, et al. Pylorus ring resection reduces delayed gastric emptying in patients undergoing pancreatoduodenectomy: a prospective, randomized, controlled trial of pylorus-resecting versus pylorus-preserving pancreatoduodenectomy. Ann Surg. 2011;253(3):495-501. PubMed
- Huang W, Xiong JJ, Wan MH, et al. Meta-analysis of subtotal stomach-preserving pancreaticoduodenectomy vs pylorus preserving pancreaticoduodenectomy. World J Gastroenterol. 2015;21(20):6361-73. PubMed
- Giannone F, Capretti G, Abu Hilal M, et al. Resectability of Pancreatic Cancer Is in the Eye of the Observer: A Multicenter, Blinded, Prospective Assessment of Interobserver Agreement on NCCN Resectability Status Criteria. Ann Surg Open. 2021;2(3):e087. PubMed
- Isaji S, Mizuno S, Windsor JA, et al. International consensus on definition and criteria of borderline resectable pancreatic ductal adenocarcinoma 2017. Pancreatology. 2018;18(1):2-11. PubMed
- Al-Hawary MM, Francis IR, Chari ST, et al. Pancreatic ductal adenocarcinoma radiology reporting template: consensus statement of the Society of Abdominal Radiology and the American Pancreatic Association. Radiology. 2014;270(1):248-60. PubMed
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