膵の切除手術には大きく2種類に分けられます。
- 膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy;PD)
- 膵体尾部切除術(distal pancreatectomy;DP)
の2つです。
このほか、癌が膵全体に及ぶ場合には膵全摘術が行われることもありますが、今回は上記2つの膵切除について見ていきます。
膵頭十二指腸切除術について切除する臓器および再建方法について動画解説しました。
こちらの動画を見ていていただいて記事を読んでいただくと頭に入ってきやすいと思われます。
膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy;PD)
- 膵頭部癌・十二指腸乳頭部癌・下部胆管癌・十二指腸に浸潤した胃癌や胆管癌などの乳頭部周囲を主座とする腫瘍に対して行う。
- 従来は膵体部・十二指腸・近位空腸の一部・胆嚢、胆管・幽門側2/3の胃を切除した。
- 近年は制酸薬による吻合部潰瘍のコントロールが可能となったため、胃を以前よりも温存する手術が施行されることが多い。
胃を温存する膵頭十二指腸切除術
- 幽門輪温存膵頭十二指腸切除(pylorus-preserving PD;PPPD):幽門輪と胃を温存する
- 亜全胃温存膵頭十二指腸切除(subtotal stomach-preserving PD;SSPPD):幽門洞のみを切除する(大半の胃を温存する)
がある。
膵頭十二指腸切除術(PD)後の消化管再建法
- 胆管空腸吻合、膵空腸吻合、胃空腸吻合の最低でも三か所の消化管吻合を要する高度な手術で、基本的にはWhipple法(ウィップル法)、Child法(チャイルド法)、Cattell法(キャトル法)の3法に大別される。
- 再建法は、施設により差があるが、Child変法による再建術式が選択されることが多い。
Whipple法
胆管→膵→胃の順に小腸と吻合する。
Child法
膵→胆管→胃の順に小腸と吻合する。
Cattell法
胃→膵→胆管の順に小腸と吻合する。食物の通過が生理的な再建法。
膵体尾部切除術(distal pancreatectomy;DP)
- 膵体尾部癌に対する切除術で、上腸間膜静脈よりも左側の膵組織の切除する。
- 通常、脾臓も合併切除する。
- この術式では、基本的に膵頭十二指腸切除術のような消化管再建法は必要ない。
- 局所進行膵体癌に対しては、腹腔動脈合併尾側膵切除(distal pancreatectomy with en-blocceliac axis resection;DP-CAR)が施行される場合、IVRによる術前血流改変(術後の胃や肝虚血予防目的)を行う。腹腔動脈〜総肝動脈血流を事前に塞栓して、上腸間膜膜動脈から膵アーケードを介した血流の発達を促すことを目的とする。
関連記事:膵頭十二指腸切除後(PD)の出血をみたときの原因と治療、仮性動脈瘤
参考文献:
- 病気がみえる Vol.1 消化器(第6版)電子版
- 臨床画像 Vol.38 No.7 増刊号2022 P39-40