先に結論:レンメル(Lemmel)症候群とは
- 十二指腸の乳頭(胆汁と膵液の出口)のすぐそばにできた憩室(傍乳頭憩室)が、胆管や膵管を圧迫したり出口の流れを悪くしたりして、閉塞性黄疸・胆管炎・膵炎を起こす状態です。結石や腫瘍がないのに胆管が詰まる原因として考えます
- 十二指腸憩室自体は高齢者によく見られ、ほとんどは無症状で治療不要です。レンメル症候群はその一部で起こるまれな病態なので、憩室があるだけで診断せず、結石・腫瘍をきちんと除外することが大切です
- CTでは乳頭の近くに空気や液体・食べ物を含んだ袋(憩室)が見え、MRI(MRCP)で胆管・膵管が憩室に押されて拡張している様子がわかります。治療は抗菌薬などの保存療法、内視鏡治療、まれに手術です
※黄疸(白目や皮膚が黄色い)・発熱・腹痛があるときは早めに受診してください。
Lemmel症候群(レンメル)とは?
- 1934年にLemmelが報告した。
- 十二指腸傍乳頭部の憩室に十二指腸内容(バリウムや食物塊)が入り込み、胆管、膵管を圧迫することにより、胆管炎、膵炎の症状を引き起こす病態をLemmel症候群(Lemmel syndrome)という。
- 傍乳頭部憩室症候群とも呼ばれる。
- 憩室の部位は乳頭部の口側付近に限局しているもの〜十二指腸内側のほぼ全域に含むものまで報告者により異なる。
- 結石のあるものは除外される(Lemmel症候群に含めない)ことが多い。結石や腫瘍などの閉塞機転を除外した上で、除外診断により診断されることが多い。
- 十二指腸憩室は高頻度に認められるが、Lemmel症候群を引き起こす頻度は少ない。そのため、憩室があるからと言って安易にLemmel症候群と診断しないことが大切。
- 画像診断はCT、MRIが基本。結石の有無については、MRI(MRCP)の方が強い。傍乳頭憩室548例の造影CTの検討では、胆石や胆膵の炎症を伴う高リスク群の予測因子として、憩室径1.95cm超、総胆管径0.69cm超、膵管径0.20cm超、憩室頸部の腫大が挙げられています(AUC 0.848)。
- 治療は、抗菌薬投与などの保存的治療や、ERCPによる胆管ステント留置などの内視鏡的治療で改善することが多い。手術が必要となることもある。
傍乳頭憩室(傍十二指腸乳頭憩室)とは?
- 憩室は腸の壁が外へ袋状に飛び出したもので、大腸の次に多いのが十二指腸で、報告されている頻度は23%です(Love 2022)。
- 乳頭(ファーター乳頭)から2〜3cm以内にできたものを傍乳頭憩室と呼び、胆管・膵管を圧迫して症状を出すのは約5%とされます(Love 2022)。
- 乳頭と憩室の位置関係で、乳頭が憩室の中にある(I型)・憩室の縁にある(II型)・憩室の近くにある(III型)に分けられます(Love 2022)。
レンメル症候群の治療
- まれな病気のため、治療の決まった基準(ガイドライン)はなく、症例ごとに選ばれています(Love 2022)。
- 17例をまとめた文献レビューでは、転帰がわかる15例のうち内視鏡治療(憩室内の洗浄・胆管膵管ステント・乳頭切開)が7例に行われすべて改善し、手術(憩室切除)は3例でした。10例は手術や経皮的処置なしで治療できています(Love 2022)。
- 抗菌薬などの保存療法のあとに症状がくり返し、憩室切除の手術となった例もあります(Love 2022)。
※名前の似たレミエール(Lemierre)症候群は、のどの感染から首の静脈(内頸静脈)に血栓性静脈炎を起こす別の病気です。
症例 70歳代女性 腹痛および黄疸

引用:Radiopaedia
CTで傍十二指腸乳頭憩室を認め、内部は充満しており、総胆管を圧排しています。

MRIでは傍十二指腸乳頭憩室により総胆管、主膵管が圧排され拡張している様子が分かります。
Lemmel症候群による閉塞性黄疸と診断されました。
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関連記事:十二指腸憩室とは?症状や合併症(穿孔、Lemmel症候群)は?
参考文献
- Krisem M, Hirunpat P, Tungtrongchitr N. Lemmel syndrome, a rare cause of obstructive jaundice by periampullary duodenal diverticulum: Case report and review of the literature. J Clin Imaging Sci. 2023;13:11. PubMed
- Ergüder E, Demir S, Süer MS, et al. Lemmel syndrome: A single-center cohort and diagnostic considerations. Turk J Surg. 2026;42(2):214-219. PubMed
- Love JS, Yellen M, Melitas C, et al. Diagnosis and Management of Lemmel Syndrome: An Unusual Presentation and Literature Review. Case Rep Gastroenterol. 2022;16(3):663-674. PubMed
- Gong JW, Luo TY, Zhang J, et al. Clinical and computed tomography characteristics of high-risk periampullary diverticulum. Quant Imaging Med Surg. 2025;15(9):8239-8249. PubMed
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