先に結論:膵鉤部癌の特徴

  • 膵鉤部(すいこうぶ)は、膵頭部の下から左へかぎ(鉤)のように回り込み、上腸間膜動静脈(SMA・SMV)の後ろに入り込む部分です
  • ここにできた膵がんは、胆管・主膵管から離れているため黄疸や膵管の拡張が出にくく、見つかりにくいのが特徴です。一方で、すぐ下の十二指腸(水平部)に広がって通過障害(嘔吐)を起こしたり、SMAのまわりの神経叢・腸間膜に広がりやすかったりします
  • 造影CTでは膵鉤部の造影の弱い(黒っぽい)腫瘤として見え、SMA・SMVとの接し方(浸潤の程度)が手術できるかどうかの判断に重要です。限局した慢性膵炎や自己免疫性膵炎との区別も必要です

膵鉤部癌

・膵鉤部は腹側膵由来。uncus1

・直接十二指腸水平脚の上壁と接しているため、下方の十二指腸水平脚に容易に浸潤し、十二指腸狭窄による嘔吐で発症することがある。

・また、小腸間膜を走るSMAやSMVにも近く、SMA周囲神経叢浸潤、腸間膜浸潤の頻度が高い。

uncus2

・CBDやMPDへの浸潤は膵頭部まで浸潤しないと生じないため、閉塞性黄疸や膵炎の症状は認められないことが多い。MDCTで鉤部癌と鉤部以外の膵頭部癌を比べた検討でも、鉤部癌では総胆管・主膵管の拡張や黄疸が有意に少なく、SMAの全周性浸潤(encasement)と神経周囲浸潤が有意に多くみられました(Padilla-Thornton 2012)。

uncus3

・鑑別診断は、膵鉤部に限局した慢性膵炎(腫瘤形成性膵炎)、線維化を伴う慢性膵炎、限局性腫瘤を形成するIgG4関連の自己免疫性膵炎など。早期の膵癌は、周囲膵と同程度の濃度・小ささ・鉤部という見えにくい位置のためにCTで見逃されることがあると指摘されています(Elbanna 2020)。胆管・膵管の拡張がなくても、鉤部の輪郭のふくらみやSMA周囲脂肪の濃度上昇を意識して読むことが大切です。

参考)画像診断2010年11月 膵管癌の画像診断 金沢大学 蒲田敏文先生

実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの腹部CTの正常解剖ツールで、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。全体の見方は腹部CTの解剖にまとめています。

あわせて読みたい:膵頭部外側縁突出(膵頭部の分葉の亜型、形状異型)と膵尾部の形状変異のCT、MRI画像所見、groove領域とは?膵頭部と十二指腸の間のCT画像とgroove膵癌・groove膵炎

参考文献

  1. Padilla-Thornton AE, Willmann JK, Jeffrey RB. Adenocarcinoma of the uncinate process of the pancreas: MDCT patterns of local invasion and clinical features at presentation. Eur Radiol. 2012;22(5):1067-1074. PubMed
  2. Al-Hawary MM, Francis IR, Chari ST, et al. Pancreatic ductal adenocarcinoma radiology reporting template: consensus statement of the Society of Abdominal Radiology and the American Pancreatic Association. Radiology. 2014;270(1):248-260. PubMed
  3. Elbanna KY, Jang HJ, Kim TK. Imaging diagnosis and staging of pancreatic ductal adenocarcinoma: a comprehensive review. Insights Imaging. 2020;11(1):58. PubMed
  4. Deshmukh SD, Willmann JK, Jeffrey RB. Pathways of extrapancreatic perineural invasion by pancreatic adenocarcinoma: evaluation with 3D volume-rendered MDCT imaging. AJR Am J Roentgenol. 2010;194(3):668-74. PubMed

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →