腹部CTを読影している際、筋肉内に脂肪腫や嚢胞、血腫、膿瘍などの偶発的病変に遭遇することがあります。
そんなとき、
「あ、この筋肉の解剖名は何だったか?」
「臀部や大腿部の筋肉名までは覚えられない・・・。」
「解剖の本も近くにないし、パッと調べられないだろうか・・・」
「もういいや、右臀部の筋肉内にとお茶を濁そう・・・・」
と思って迷うことってありますよね。
そこで今回は、CT読影時のリファレンスとして活用できるよう、腹部・骨盤・大腿部周辺の主要な筋肉を系統的に分類し、それぞれの解剖学的位置と画像上での同定ポイントを解説します。
1. 体幹部(腹部・背部・後腹壁)の筋肉
腹部CTの基本となるスライスで頻繁に目にする筋肉群である。後腹膜病変や脊椎疾患の波及を評価する際にも重要となる。
- 腹直筋 (Rectus abdominis)
- 外腹斜筋 (External oblique)
- 内腹斜筋 (Internal oblique)
- 腹横筋 (Transversus abdominis)
- 腰方形筋 (Quadratus lumborum)
- 広背筋 (Latissimus dorsi)
- 脊柱起立筋 (Erector spinae)
- 多裂筋 (Multifidus)
腹直筋 (Rectus abdominis)

腹部前面の正中を縦走する。CTでは白線で左右に分かれ、前腹壁の最前面に位置する。
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外腹斜筋 (External oblique)

側腹壁の最表層を構成する筋肉。下位肋骨から起始し、前下方に向かって斜走する。CTでは側腹部の皮下脂肪直下に観察される。
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内腹斜筋 (Internal oblique)

側腹壁の中間層を構成する筋肉。腸骨稜などから起始し、前上方へ向かう。外腹斜筋と腹横筋の間に挟まれるように位置する。
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腹横筋 (Transversus abdominis)

側腹壁の最深層を水平に走行する筋肉。腹腔(腹膜外脂肪組織)に最も近い層として観察され、これら外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋の3層が側腹部で重なり合う層構造(側腹筋群)を形成している。
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腰方形筋 (Quadratus lumborum)

後腹壁を形成する長方形の筋。大腰筋の後外側に位置し、腎臓の背側に接する。
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広背筋 (Latissimus dorsi)

背部の浅層を広く覆う巨大な筋。下部胸椎〜腰椎レベルのCTでは、背側の皮下脂肪直下に薄く広がる層として観察される。
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脊柱起立筋 (Erector spinae)

脊椎の棘突起から横突起の背側に位置する巨大な筋群(腸肋筋・最長筋・棘筋の総称)。背部の最表層〜中間層を占める。
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多裂筋 (Multifidus)

脊柱起立筋のさらに深層に位置し、脊椎の棘突起と横突起の間の溝を埋めるように縦走する筋肉である。CTでは脊椎の背側正中付近に左右一対で観察される。加齢による脂肪変性を来しやすい部位でもあり、脂肪腫との鑑別や変性具合の把握においてしばしば注目される。
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2. 腸腰筋群と骨盤底筋
腹部から骨盤への移行部を理解する上で、ランドマークとなる筋肉群である。
- 大腰筋 (Psoas major)
- 腸骨筋 (Iliacus)
- 肛門挙筋 (Levator ani)
大腰筋 (Psoas major)

脊椎椎体の前外側を走行する。腹部CTにおいて最も見慣れた筋肉であり、下方で腸骨筋と合流する。
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腸骨筋 (Iliacus)

腸骨窩(骨盤の内側)を広く覆うように起始し、大腰筋の外側に寄り添うように走行する。
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肛門挙筋 (Levator ani)

骨盤底を形成するハンモック状の筋肉(恥骨尾骨筋、腸骨尾骨筋などの総称)。直腸や前立腺/子宮の尾側スライスで、骨盤腔の底を塞ぐように薄く観察される。
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3. 殿部の筋肉(表層・中層・深層)
殿部は筋肉の層構造が重なり合っており、筋肉内脂肪腫などが好発する部位でもある。大腿骨大転子に向かって付着するため、股関節レベルでの同定が鍵となる。
- 大殿筋 (Gluteus maximus)
- 中殿筋 (Gluteus medius)
- 小殿筋 (Gluteus minimus)
- 大腿筋膜張筋 (Tensor fasciae latae)
大殿筋 (Gluteus maximus)

殿部の最表層を覆う最大の筋肉。骨盤後方から大腿骨後方にかけて広がり、CTでも皮下脂肪の深部で非常に大きな面積を占める。
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中殿筋 (Gluteus medius)

腸骨翼の外面に付着し、大殿筋の深層・頭側に位置する。大転子の上部に停止するため、骨盤上部のスライスでは腸骨の外側を大きく覆っている。
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小殿筋 (Gluteus minimus)

中殿筋のさらに深層、腸骨の直上に位置する。関節包の直上を走行し大転子前面に停止する。
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大腿筋膜張筋 (Tensor fasciae latae)

骨盤の前外側(上前腸骨棘の付近)から起始し、大腿外側を下行する。大殿筋の前縁と連続するように位置し、腸脛靭帯へと移行する。
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4. 深層外旋六筋(股関節の深部)
骨盤から大腿骨にかけて、股関節の安定性を保つ小さな筋肉群。坐骨神経痛の起因(梨状筋症候群など)となることでも知られる。
- 梨状筋 (Piriformis)
- 内閉鎖筋 (Obturator internus)
- 外閉鎖筋 (Obturator externus)
- 大腿方形筋 (Quadratus femoris)
梨状筋 (Piriformis)

仙骨前面から起始し、大坐骨孔を通って骨盤外へ抜け、大転子に停止する。仙骨レベルの横断像で、骨盤腔内から外へ向かう筋肉として同定しやすい。
自分でCT画像をスクロールして連続画像で見たい方はこちら→梨状筋(piriformis muscle) のCT画像の解剖
内閉鎖筋 (Obturator internus)

閉鎖孔の内面から起始し、小坐骨孔を通って後方に回り込む。骨盤内の坐骨直腸窩の外側壁を形成する。
自分でCT画像をスクロールして連続画像で見たい方はこちら→内閉鎖筋(obturator internus) のCT画像の解剖
外閉鎖筋 (Obturator externus)

閉鎖孔の外面から起始し、大腿骨の転子窩へ向かう。股関節直下のスライスで、恥骨・坐骨の腹側〜外側に位置する。
自分でCT画像をスクロールして連続画像で見たい方はこちら→外閉鎖筋(obturator externus) のCT画像の解剖
大腿方形筋 (Quadratus femoris)

坐骨結節から大腿骨の転子間稜へと横走する四角い筋肉。大転子レベルよりやや尾側のスライスで、坐骨と大腿骨の間を水平に結ぶように見える。
自分でCT画像をスクロールして連続画像で見たい方はこちら→大腿方形筋(Quadratus femoris muscle)のCT画像の解剖
5. 大腿前面(大腿四頭筋群・伸筋群)
大腿部を輪切りにした際、前方〜外側を占める巨大な筋肉群である。
- 縫工筋 (Sartorius)
- 大腿直筋 (Rectus femoris)
- 外側広筋 (Vastus lateralis)
- 中間広筋 (Vastus intermedius)
縫工筋 (Sartorius)

人体で最も長い筋肉。上前腸骨棘から起始し、大腿の前斜め内側を横切るように走行する。CTでは大腿前面の浅層に独立した細い筋束として確認できる。
自分でCT画像をスクロールして連続画像で見たい方はこちら→縫工筋(sartorius muscle) のCT画像の解剖
大腿部のMRI画像→縫工筋のMRI画像の解剖
大腿直筋 (Rectus femoris)

大腿前面の中央・表層を縦走する。大腿四頭筋の中で唯一、骨盤(下前腸骨棘)から起始する二関節筋である。
自分でCT画像をスクロールして連続画像で見たい方はこちら→大腿直筋(rectus femoris)のCT画像の解剖
大腿部のMRI画像→大腿直筋(rectus femoris)のMRI画像の解剖
外側広筋 (Vastus lateralis)

大腿四頭筋のうち、大腿の外側面に大きく広がる筋肉。大腿骨外側を分厚く覆う。
自分でCT画像をスクロールして連続画像で見たい方はこちら→外側広筋(vastus lateralis) のCT画像の解剖
大腿部のMRI画像→外側広筋(vastus lateralis)のMRI画像の解剖
中間広筋 (Vastus intermedius)

大腿直筋の深層、大腿骨の前面に直接張り付くように位置する筋肉。
自分でCT画像をスクロールして連続画像で見たい方はこちら→中間広筋(vastus intermedius)のCT画像の解剖
大腿部のMRI画像→中間広筋(vastus intermedius)のMRI画像の解剖
6. 大腿内側(内転筋群)
大腿の主要な血管(大腿動静脈)の内側〜後方に位置し、恥骨から起始する筋肉群。層構造をなしている。
- 恥骨筋 (Pectineus)
- 長内転筋 (Adductor longus)
- 短内転筋 (Adductor brevis)
- 大内転筋・小内転筋 (Adductor magnus / Adductor minimus)
恥骨筋 (Pectineus)

恥骨から大腿骨後面の恥骨筋線に向かう。大腿上部のスライスにおいて、腸腰筋の内側、大腿動静脈の深背側に位置する。
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大腿部のMRI画像→恥骨筋(pectineus muscle)のMRI画像の解剖
長内転筋 (Adductor longus)

恥骨結節の下方から起始する。内転筋群の中で最も表層(前方)に位置する。
自分でCT画像をスクロールして連続画像で見たい方はこちら→長内転筋(Adductor longus muscle)のCT画像の解剖
大腿部のMRI画像→長内転筋(adductor longus)のMRI画像の解剖
短内転筋 (Adductor brevis)

恥骨下枝から起始し、恥骨筋および長内転筋の深層(背側)に位置する。
自分でCT画像をスクロールして連続画像で見たい方はこちら→短内転筋(Adductor brevis) のCT画像の解剖
大腿部のMRI画像→短内転筋(adductor brevis)のMRI画像の解剖
大内転筋・小内転筋 (Adductor magnus / Adductor minimus)

内転筋群の中で最大かつ最も深層(後方)に位置する。大内転筋の上部線維束を独立して小内転筋と呼ぶことがある。坐骨結節から大腿骨粗線まで広大に付着し、大腿の後面を構成するハムストリングスと隣接する。
自分でCT画像をスクロールして連続画像で見たい方はこちら→大内転筋(Adductor magnus)、小内転筋(Adductor minimus) のCT画像の解剖
大腿部のMRI画像→大内転筋(adductor magnus)のMRI画像の解剖
出典・参考文献
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- Standring S. Gray’s Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice. 42nd ed. Elsevier; 2020.
- Netter FH. Atlas of Human Anatomy. 7th ed. Elsevier; 2018.
- Munk PL, et al. “Imaging of the muscles of the pelvis and appendicular skeleton.” Radiographics. (筋骨格系の画像診断における標準的リファレンス)
- Drake RL, et al. Gray’s Anatomy for Students. 4th ed. Elsevier; 2019.
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めちゃくちゃありがたいです!そしてわかりやすいです!
アトラス調べてうーーんとなる事もあり、アトラスが無い場所だと調べにくい…
重宝させていただきます
コメントありがとうございます。
アトラスがないところで是非検索してみてください。
みやすくわかりやすく頭にスッと入ってくる図をありがとうございます。
コメントありがとうございます。
お役に立ててよかったです!
手の画像診断
解剖、症例をお願い致します
コメントありがとうございます。
手ですか・・・。CTよりMRIですかね。今後自分が困るようなことがあれば作成を検討してみます!