腹横筋(ふくおうきん:transversus abdominis muscle)は、外腹斜筋や内腹斜筋と同様に腹壁を構成する筋肉の1つです。
腹壁の最内層に位置する筋肉で、体幹の安定、腹圧の調整、内臓の保護に重要な役割を果たします。
腹横筋のCT、MRI画像の解剖
胸部のCTやMRI画像を読む上で腹横筋がどの場所にあるのか解剖をチェックしましょう。
解剖がよく理解できるように胸部(縦隔条件)の実際のCT画像の腹横筋に色を付けてみました。
CTの横断像では以下の場所に腹横筋があります。
腹横筋は、CT横断像で腹壁の最内層に位置する薄い筋肉として確認されます。
自分でCT画像をスクロールしてコロコロ連続画像で見たい方はこちら→腹横筋(transversus abdominis muscle)のCT画像の解剖
腹横筋の起始
- 胸腰筋膜:腰部の後面を覆う強靭な膜状構造。
- 第7~12肋骨の肋軟骨内側面:下部の肋骨に付着。
- 腸骨稜:骨盤の外側上部の稜線。
- 鼠径靭帯:恥骨と腸骨稜を結ぶ靭帯の外側1/3。
腹横筋の停止
- 腹直筋鞘:腹直筋を包む筋膜を形成し、正中部の白線に合流。
- 白線:正中部で左右の筋膜が交わる結合部。
- 恥骨櫛:恥骨の櫛状突起。
腹横筋の機能
- 腹圧の調整:腹腔内圧を高めることで、排便、排尿、分娩、嘔吐などを助ける。
- 体幹の安定:腰椎や骨盤の安定を確保し、姿勢保持や運動時の安定性を高める。
- 内臓の保護:腹腔内臓器を外部の衝撃から守る。
- 呼気の補助:強制呼気時に横隔膜を押し上げ、空気を排出する。
- 体幹の運動補助:他の腹壁筋と連動して前屈や回旋をサポート。
腹横筋の神経支配
- 肋間神経(T7~T12)
- 腸骨下腹神経(L1)
- 腸骨鼡径神経(L1)
腹横筋の特徴
- 繊維走行:水平に走行し、腹壁を横断する形状を持つ(「腹横筋」の名前の由来)。
- 腹壁の最内層:外腹斜筋、内腹斜筋の深層に位置し、腹腔に最も近い層を形成。
- 筋膜構造:停止部では腹直筋鞘を形成し、白線に合流。
腹横筋は、胸腰筋膜、第7~12肋骨、腸骨稜、鼠径靭帯から起始し、腹直筋鞘、白線、恥骨櫛に停止する筋肉です。体幹の安定、腹圧の調整、内臓保護を主な役割とし、腹壁の最内層を形成します。水平な筋繊維の走行と、腹部の安定性を高める重要な機能から、スポーツや姿勢維持、リハビリなど幅広い分野で注目される筋肉です。