先に結論:腹直筋の解剖

  • 腹直筋は恥骨(恥骨結合・恥骨稜)から起こり、第5〜7肋軟骨と剣状突起に付く、腹壁の正中前方を縦に走る筋肉です
  • 腱画で区切られ、腹直筋鞘に包まれ、左右は白線で連結しています。腹直筋鞘の後ろの壁は弓状線より下では欠けているのが特徴です
  • 腹直筋鞘血腫(抗凝固薬内服中の高齢者など)や、腹直筋離開・白線ヘルニアの評価に、CTでの位置関係が役立ちます

腹直筋(ふくちょくきん:rectus abdominis muscle)は、腹壁の中央部を縦方向に走行する筋肉で、体幹の屈曲や腹圧の調整、内臓の保護に重要な役割を果たします。

腹直筋は腹壁筋群を構成する筋肉の1つで、腹壁の正中前方に位置します。

腹直筋のCT、MRI画像の解剖

腹部のCTやMRI画像を読む上で腹直筋がどの場所にあるのか解剖をチェックしましょう。

解剖がよく理解できるように腹部の実際のCT画像の腹直筋に色を付けてみました。

CTの横断像では以下の場所に腹直筋があります。

腹直筋は、CT横断像で腹壁の中央部を左右対称に確認できる筋肉です。

楕円形または帯状の筋肉として観察され白線を挟んで左右対称に存在します。

自分でCT画像をスクロールしてコロコロ連続画像で見たい方はこちら→腹直筋(Rectus abdominis muscle)のCT画像の解剖

腹直筋の起始

  • 恥骨:恥骨結合とその周囲の領域から起始します。
  • 恥骨稜:恥骨上縁の稜線部分。

腹直筋の停止

  • 第5~第7肋軟骨:胸骨下部に近い肋骨の軟骨部分。
  • 剣状突起:胸骨の最下端部に付着。

腹直筋の機能

  • 体幹の屈曲:両側が収縮することで、体幹を前方に屈曲(前屈)させる。例:腹筋運動。
  • 腹圧の調整:他の腹筋と連動して腹腔内圧を高める。排便、排尿、嘔吐、分娩時に寄与。
  • 内臓の保護:腹腔内臓器を外部からの衝撃から守る。
  • 呼吸の補助:強制呼気時に胸郭を引き下げる。

腹直筋の構造的特徴

  • 筋腹:腹直筋は、筋線維が縦方向に走行する長い筋肉。筋腹が腱画(tendinous intersection)で区切られ、6~8つの筋腹(シックスパック)として観察される。
  • 腹直筋鞘:腹直筋は腹直筋鞘という筋膜に包まれており、表層・深層の筋膜が筋肉を囲んでいます。
  • 白線:正中線で左右の腹直筋鞘が合流する結合組織。

腹直筋鞘・白線・弓状線はどこ?

  • 腹直筋鞘:外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋の腱膜がつくる「さや」で、腹直筋を前後から包みます。
  • 弓状線:へそより下の高さで、腹直筋鞘の後ろの壁(後葉)が終わる線です。これより下では3つの腱膜がすべて腹直筋の前を通るため、腹直筋の後ろは薄い横筋筋膜と腹膜だけになります。
  • 白線:剣状突起から恥骨結合まで、左右の腹直筋鞘が正中で合わさった結合組織の帯です。CTでは左右の腹直筋の間の細い線として見えます。

出産経験のない女性150人を超音波で調べた検討では、白線の幅の正常上限は剣状突起で15mm、へその3cm上で22mm、へその2cm下で16mmでした(Beer 2009)。これより広い場合は腹直筋離開を考えるひとつの目安になります。

腹筋群の起始と停止の一覧

筋 起始 停止
腹直筋 恥骨結合・恥骨稜 第5〜7肋軟骨・剣状突起
外腹斜筋 下位の肋骨の外面 腸骨稜・鼡径靱帯・腹直筋鞘(白線)
内腹斜筋 胸腰筋膜・腸骨稜・鼡径靱帯 下位の肋骨・腹直筋鞘(白線)
腹横筋 下位の肋軟骨の内面・胸腰筋膜・腸骨稜・鼡径靱帯 腹直筋鞘(白線)・恥骨

CTでは、前方中央に腹直筋、その外側に外側から外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋の3層が重なって見えます。

ストーマと腹直筋(CTで見るポイント)

ストーマ(人工肛門)の腸を腹直筋を貫いて出す方法と腹直筋の外側から出す方法を比べた系統的レビューでは、傍ストーマヘルニアの起こりやすさに明らかな差は示されず、根拠の質も低いと結論されています(Hardt 2019)。CTでは、ストーマの腸管と腹直筋の位置関係や、傍ストーマヘルニアの有無を確認します。

腹直筋の臨床的意義

  • 筋力低下:腹直筋が弱くなると、姿勢不良や腰痛が生じる可能性がある。
  • 腹壁ヘルニア:白線の脆弱化によるヘルニアの発生リスク。腹直筋鞘血腫は外傷や抗凝固療法と強く関連し、誤診すると不要な開腹術につながることがあるため、腹痛・腹壁腫瘤をみたら鑑別に挙げます。腹直筋鞘血腫はCTでの広がりによる分類(Berná分類)がよく使われ、TypeⅠは軽症で入院を要さず、TypeⅡ(中等症)とTypeⅢ(重症)は入院が必要とされます。原著ではTypeⅢの全例が抗凝固療法中で、急性腹症として発症し輸血を要していました。
  • スポーツや運動:腹直筋の強化は、体幹安定性やパフォーマンス向上に寄与。

関連記事:外ヘルニアとは?分類・症状は?内ヘルニアとの違いは?

腹直筋は、恥骨結合・恥骨稜から起始し、第5~第7肋軟骨・剣状突起に停止する腹壁の中央に位置する筋肉です。体幹の屈曲、腹圧の調整、内臓保護など、多岐にわたる役割を果たします。腹直筋鞘に包まれ、白線で左右が連結されている構造は、腹部の安定性に重要です。腹直筋の強化は姿勢維持や運動能力向上に直結するため、トレーニングやリハビリの観点からも注目される筋肉です。

関連記事:非外傷性腹直筋血腫とは?CT画像所見は?

 

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参考文献

  1. Aguirre DA, Santosa AC, Casola G, et al. Abdominal wall hernias: imaging features, complications, and diagnostic pitfalls at multi-detector row CT. Radiographics. 2005;25(6):1501-1520. PubMed
  2. Hatjipetrou A, Anyfantakis D, Kastanakis M. Rectus sheath hematoma: a review of the literature. Int J Surg. 2015;13:267-271. PubMed
  3. Berná JD, Garcia-Medina V, Guirao J, et al. Rectus sheath hematoma: diagnostic classification by CT. Abdom Imaging. 1996;21(1):62-4. PubMed
  4. Matalon SA, Askari R, Gates JD, et al. Don’t Forget the Abdominal Wall: Imaging Spectrum of Abdominal Wall Injuries after Nonpenetrating Trauma. Radiographics. 2017;37(4):1218-1235. PubMed
  5. Ballard DH, Mazaheri P, Oppenheimer DC, et al. Imaging of Abdominal Wall Masses, Masslike Lesions, and Diffuse Processes. Radiographics. 2020;40(3):684-706. PubMed
  6. Beer GM, Schuster A, Seifert B, et al. The normal width of the linea alba in nulliparous women. Clin Anat. 2009;22(6):706-11. PubMed
  7. Hardt J, Meerpohl JJ, Metzendorf MI, et al. Lateral pararectal versus transrectal stoma placement for prevention of parastomal herniation. Cochrane Database Syst Rev. 2019;4(4):CD009487. PubMed

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