先に結論:脊柱起立筋の解剖

  • 脊柱起立筋は背骨の両側を縦に走る深い背筋で、外側から腸肋筋・最長筋・棘筋の3つからなります
  • 背骨を伸ばす・横に曲げる働きがあり、支配神経は脊髄神経の後枝です
  • CTでは多裂筋の外側にある大きな筋肉の塊として見え、サルコペニアや腰痛に伴う萎縮・脂肪変性の評価にも使われます

脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん:erector spinae)は、背部深層筋群のうち縦方向に長く走行する筋群であり、姿勢保持と脊柱伸展に中心的な役割を担う。

背中全体にわたる筋肉は、大きく分けて表層、中層、深層の筋肉が存在しますが、脊柱起立筋はこのうち多裂筋とともに深層に位置します。

脊柱起立筋のCT、MRI画像の解剖

腹部のCTやMRI画像を読む上で脊柱起立筋がどの場所にあるのか解剖をチェックしましょう。

解剖がよく理解できるように腹部の実際のCT画像の脊柱起立筋に色を付けてみました。

CTの横断像では以下の場所に脊柱起立筋があります。

脊柱起立筋は、固有背筋のうち中間層をなす筋群であり、腸肋筋(iliocostalis)、最長筋(longissimus)、棘筋(spinalis)の3列から構成されます。一般に、外側から腸肋筋、中央に最長筋、最内側に棘筋が位置します。(上のCT画像には脊柱起立筋にまとめて色をつけています。)

ただし、CT読影で最も問題になるのは腰椎レベルで、この部位では棘筋は明瞭でないことが多いです。そのため、実際の画像上は脊柱起立筋=主として最長筋+腸肋筋として認識し、その内側に多裂筋が接する構図で理解するとわかりやすいです。

多裂筋はより内側・深部にあり、棘突起や椎弓に密着する一方、脊柱起立筋はその外側にまとまった筋腹として存在します。

自分でCT画像をスクロールしてコロコロ連続画像で見たい方はこちら→脊柱起立筋(erector spinae)のCT画像の解剖

脊柱起立筋の全体的な起始と停止

脊柱起立筋全体は、下位では共通腱を介して広く起始する。代表的な起始部は以下である。

  • 仙骨後面
  • 腸骨稜後部
  • 胸腰筋膜
  • 腰椎・仙椎棘突起周囲
  • 仙腸靱帯周囲

そこから上方へ走行し、肋骨角、椎骨横突起、椎骨棘突起、さらに頸部から頭蓋に至る。すなわち、脊柱起立筋は「骨盤と仙骨から起こり、肋骨と脊柱を順次たどりながら頭側へ連なる長大な筋群」である。

各構成筋の解剖と起始停止

1.腸肋筋(iliocostalis)

腸肋筋は脊柱起立筋の最外側を走る。名称の通り、腸骨から肋骨へ連なる性格が強い筋である。さらに、腸肋筋腰部、腸肋筋胸部、腸肋筋頸部に分けられる。

腸肋筋腰部(iliocostalis lumborum)
  • 起始:腸骨稜後部、共通腱、胸腰筋膜
  • 停止:下位肋骨角(主として第6〜12肋骨)、上位腰椎の肋骨突起・横突起周辺

腰椎CTでは、脊柱起立筋のうちより外側の筋腹として認識される。Bogdukの古典的解剖学的研究では、腰椎レベルで最長筋と腸肋筋は筋膜性構造により区別され、腸肋筋は腰椎の肋骨要素側へ付着することが示されている。MacintoshとBogdukは、腰部の脊柱起立筋を腸肋筋腰部と最長筋胸部の2筋とし、それぞれに胸部線維(胸郭から分節的に起こり、長い尾側腱で脊柱起立筋腱膜をつくる)と腰部線維(腰椎の副突起・L1〜4横突起から起こり腸骨に付く)があると整理している。腰部線維、とくに腸肋筋の腰部線維は従来あまり記載されてこなかったが、腰椎に直接作用する筋量のかなりの部分を占める。

腸肋筋胸部(iliocostalis thoracis)
  • 起始:下位6肋骨角付近
  • 停止:上位6肋骨角、C7横突起
腸肋筋頸部(iliocostalis cervicis)
  • 起始:第3〜6肋骨角
  • 停止:C4〜C6横突起後結節

2.最長筋(longissimus)

最長筋は脊柱起立筋の中央列をなす。腰椎レベルでは、多裂筋の外側、腸肋筋の内側に位置し、脊柱起立筋の主成分として見えることが多い。さらに、最長筋胸部、最長筋頸部、最長筋頭部に分けられる。

最長筋胸部(longissimus thoracis)
  • 起始:共通腱、腸骨、腰椎横突起・副突起周囲、筋膜性停止部
  • 停止:胸椎横突起、肋骨(結節と角の間)

腰椎部では、Bogdukの報告の通り、最長筋線維は腸骨および腰部筋間腱膜から起こり、腰椎副突起や横突起近位部に付着する。したがって、CTで横突起のすぐ外側から後方に接する筋塊として把握すると理解しやすい。

最長筋頸部(longissimus cervicis)
  • 起始:T1〜T5付近の横突起
  • 停止:C2〜C6横突起後結節
最長筋頭部(longissimus capitis)
  • 起始:C4〜T4横突起
  • 停止:乳様突起

3.棘筋(spinalis)

棘筋は脊柱起立筋の最内側に位置するが、発達は比較的弱く、個体差も大きい。胸椎上部から頸椎にかけては同定しうるが、腰椎CTで独立して明瞭に見分けることは容易ではない。

棘筋胸部(spinalis thoracis)
  • 起始:T11〜L2棘突起
  • 停止:上位胸椎棘突起
棘筋頸部(spinalis cervicis)
  • 起始:項靱帯、C7棘突起
  • 停止:軸椎およびC3〜C4棘突起

腰椎読影の実用上は、棘筋を細かく分けて考えるより、棘突起直外側は多裂筋、そのさらに外側が最長筋主体の脊柱起立筋という認識の方が有用である。

脊柱起立筋の作用

  • 両側性収縮:脊柱伸展、姿勢保持
  • 片側性収縮:同側側屈
  • 頭頸部成分:頭部・頸部伸展、一部回旋補助

また、体幹前屈時には重力による前方屈曲を制御する働きも重要である。単なる「伸展筋」ではなく、立位・座位を支える持続的な抗重力筋群として理解すべきである。

神経支配

脊柱起立筋は固有背筋であり、脊髄神経後枝に支配される。腰椎レベルでは、腸肋筋は後枝外側枝、最長筋は後枝中間枝から支配されると整理される。これは外科的侵襲後の筋萎縮や除神経変化を考えるうえでも重要である。

関連記事:

【腹部CT読影用】骨盤・大腿部周辺の筋肉解剖まとめ

背部・背中の筋肉の大まかな分類とCT画像の解剖まとめ

参考文献

  1. Bogduk N. A reappraisal of the anatomy of the human lumbar erector spinae. J Anat. 1980;131(Pt 3):525-540.
  2. Henson B, et al. Anatomy, Back, Muscles. StatPearls Publishing; updated 2023.
  3. Sassack B, et al. Anatomy, Back, Lumbar Spine. StatPearls Publishing; updated 2023.
  4. Vialle R, et al. Anatomical study of the paraspinal approach to the lumbar spine. Eur Spine J. 2005;14(4):366-371.
  5. Deng X, et al. CT and MRI determination of intermuscular space within lumbar paraspinal muscles at different intervertebral disc levels. PLoS One. 2015;10(10):e0140315.
  6. Krkoska P, et al. Assessment of lumbar paraspinal muscle morphology using mDixon Quant magnetic resonance imaging (MRI): a cross-sectional study in healthy subjects. Quant Imaging Med Surg. 2024;14(8):6015-6035.
  7. Sollmann N, et al. Assessment of paraspinal muscle characteristics, lumbar BMD, and their associations in routine multi-detector CT of patients with and without osteoporotic vertebral fractures. Eur J Radiol. 2020;125:108867.
  8. Kalichman L, et al. The Association between Imaging Parameters of the Paraspinal Muscles, Spinal Degeneration, and Low Back Pain. Biomed Res Int. 2017;2017:2562957.
  9. Macintosh JE, Bogduk N. 1987 Volvo award in basic science. The morphology of the lumbar erector spinae. Spine (Phila Pa 1976). 1987;12(7):658-668. PubMed
  10. Macintosh JE, Bogduk N. The attachments of the lumbar erector spinae. Spine (Phila Pa 1976). 1991;16(7):783-792. PubMed

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →