先に結論:梨状筋の解剖
- 梨状筋はお尻の奥(大殿筋の深く)にあり、仙骨の前面から起こり、大坐骨孔を通って大転子に付く筋肉です
- 大坐骨孔を梨状筋上孔・下孔に分け、坐骨神経は多くは梨状筋の下を通ります(変異あり)
- 梨状筋症候群(坐骨神経の圧迫)や、骨盤の腫瘍・膿瘍が大坐骨孔を通って殿部へ広がる経路を理解するうえで重要です
梨状筋(りじょうきん:piriformis muscle)は、仙骨前面から起こり、大坐骨孔を通過して大腿骨大転子上縁へ停止する筋です。
殿部深層に位置する股関節外旋筋群(深層外旋六筋)の代表的な筋であり、股関節外旋および外転補助に関与します。また坐骨神経との位置関係が重要であり、梨状筋周囲の解剖理解は殿部痛や坐骨神経痛の評価において重要です。
骨盤CT、股関節CT、MRIでは仙骨外側から大転子方向へ斜めに走行する筋として描出され、殿部深部病変、筋内血腫、感染、腫瘍、外傷などの評価において重要なランドマークとなります。
梨状筋のCT、MRI画像の解剖
骨盤CTやMRI画像を読む上で梨状筋がどの場所にあるのか解剖をチェックしましょう。
CTの横断像では以下の場所に梨状筋があります。

梨状筋は仙骨外側から大坐骨孔を通過して大転子へ向かう斜走筋として描出されます。
内側には仙骨、外側には大腿骨大転子が位置します。前方には骨盤腔、後方には大殿筋が、下方には上双子筋、下双子筋、内閉鎖筋、大腿方形筋などの深層外旋筋群が位置します。
梨状筋は大坐骨孔を上下に分けるランドマークとしても重要であり、上方を梨状筋上孔、下方を梨状筋下孔と呼ぶ。上殿神経・上殿動静脈は梨状筋上孔を、坐骨神経や下殿神経・下殿動静脈は梨状筋下孔を通過します。ただし、坐骨神経が分かれずに梨状筋の下を通る典型例は約90%で、残りでは神経(あるいはその一部)が梨状筋を貫いたり上を通ったりする変異があり、東アジア人で多いと報告されています。こうした変異は梨状筋症候群の鑑別でも考慮されます。
梨状筋はどこ?
梨状筋は大殿筋の深いところで、仙骨の外側縁と大転子を結ぶ線にほぼ沿って横たわる深部の筋肉です。
CTで坐骨神経の走行を追うコツ
坐骨神経は、梨状筋の前面にある仙骨神経叢から始まり、梨状筋下孔から殿部へ出て、双子筋・内閉鎖筋・大腿方形筋の後ろを大転子と坐骨結節の間で下へ追うと見つけやすいです。
MRIで神経根と梨状筋の関係を調べた100人(200対)の検討では、S1神経根は99.5%で梨状筋の上を通り、S2神経根は75%、S3神経根は97%で梨状筋を貫いていました。梨状筋の太さは0.8〜3.2cm(平均1.9cm)で、19%の人に3mmを超える左右差がありました(Russell 2008)。
CT画像をスクロールしてコロコロ連続画像で見たい方はこちら→梨状筋(piriformis muscle) のCT画像の解剖
梨状筋の起始と停止
起始
- 仙骨前面(第2〜第4仙骨前孔付近)
- 仙結節靱帯
- 大坐骨孔周囲
停止
- 大腿骨大転子上縁
実用上は、梨状筋は仙骨前面から起こり、大坐骨孔を通過して外側へ走行し、大転子上縁へ停止する筋と整理すると理解しやすい。
梨状筋の線維走行の特徴
梨状筋の線維は仙骨前面から外側へ向かって走行し、大坐骨孔を通過して殿部へ出る。
その後、大腿骨大転子へ向かって斜め外側へ走行する。
CTでは仙骨外側から大転子方向へ斜走する細長い筋として観察されることが多い。
MRIでは坐骨神経との位置関係を評価する際に重要な筋であり、梨状筋肥厚や炎症を評価する際のランドマークとなる。
梨状筋の作用
- 股関節外旋
- 股関節外転(屈曲位)
- 股関節安定化
梨状筋の主作用は股関節外旋であるが、股関節屈曲位では外転作用も示す。また股関節深層外旋筋群の一つとして、股関節安定化にも関与する。
神経支配
梨状筋は梨状筋神経に支配される。
神経根レベルは一般にS1〜S2とされる。
梨状筋症候群のMRI
梨状筋症候群は、梨状筋のところで坐骨神経が刺激・圧迫され、お尻から脚に痛みやしびれが出る状態です。従来の診断・治療で良くならなかった坐骨神経痛239人にMRニューログラフィーを行った検討では、梨状筋の左右差と、坐骨切痕での坐骨神経の高信号の組み合わせが、梨状筋症候群を特異度93%・感度64%で見分けました(Filler 2005)。
一方で、症状のない人でも梨状筋の左右差は珍しくありません(Russell 2008)。梨状筋の大きさの左右差だけで梨状筋症候群とは言えないため、坐骨神経の信号や症状と合わせて判断します。お尻から脚への痛みやしびれが続くときは、医療機関を受診してください。
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参考文献:
- Standring S. Gray’s Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice. 42nd ed.
- Moore KL, Dalley AF, Agur AM. Clinically Oriented Anatomy. 8th ed.
- StatPearls. Anatomy, Bony Pelvis and Lower Limb, Piriformis Muscle.
- Boyajian-O’Neill LA, et al. Diagnosis and management of piriformis syndrome: an osteopathic approach. J Am Osteopath Assoc. 2008;108(11):657-664.
- Hopayian K, et al. The clinical features of the piriformis syndrome: a systematic review. Eur Spine J. 2010;19(12):2095-2109.
- Poutoglidou F, Piagkou M, Totlis T, et al. Sciatic Nerve Variants and the Piriformis Muscle: A Systematic Review and Meta-Analysis. Cureus. 2020;12(11):e11531. PubMed
- Filler AG, Haynes J, Jordan SE, et al. Sciatica of nondisc origin and piriformis syndrome: diagnosis by magnetic resonance neurography and interventional magnetic resonance imaging with outcome study of resulting treatment. J Neurosurg Spine. 2005;2(2):99-115. PubMed
- Russell JM, Kransdorf MJ, Bancroft LW, et al. Magnetic resonance imaging of the sacral plexus and piriformis muscles. Skeletal Radiol. 2008;37(8):709-13. PubMed
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