先に結論:両肺に広がるすりガラス影・浸潤影の考え方

  • 両側びまん性のすりガラス影・浸潤影は、大きく①感染症(ニューモシスチス・ウイルス・非定型肺炎など)、②水や血液(肺水腫・肺胞出血)、③腫瘍(浸潤性粘液性腺癌・リンパ腫)、④その他(薬剤性・過敏性肺炎・好酸球性肺炎・ARDS・間質性肺炎の急性増悪・肺胞蛋白症)に分けて考えます
  • すりガラス影は血管や気管支の壁が透けて見える淡い濃度上昇、浸潤影は血管が見えなくなるほど濃い影です(Hansell 2008)
  • 発症の速さ・免疫状態(HIV・抗がん剤・ステロイド)・薬歴・心不全の有無・血痰などの臨床情報が絞り込みに欠かせません
  • 考える順番は①経過の速さ(急性か慢性か) → ②分布(中枢側か末梢か、上か下か) → ③随伴所見(胸水・小葉間隔壁の肥厚・嚢胞・エアトラッピングなど)です(Cozzi 2021)。下の「考える順番」の節にパターン別の早見表があります
  • 急速に進む場合は命にかかわることが多く、気管支鏡(BAL)などで早く原因を確かめます

浸潤影とすりガラス影の違い

すりガラス影(GGO) 浸潤影(consolidation)
見え方 淡い濃度上昇で、中の血管・気管支の壁は見える 中の血管・気管支の壁が見えなくなる
肺の中で起きていること 肺胞の一部が液体・細胞で埋まる、肺胞壁・間質が厚くなる、肺胞がつぶれる 肺胞の空気が液体・細胞などに置き換わる

定義はFleischner学会の用語集によります(Hansell 2008)。軽いすりガラス影は胸部X線(レントゲン)では見つけにくく、鑑別は主にHRCTで行い、まず急性か慢性かで分けて考えます(Cozzi 2021)。「びまん性」は影が両肺に広く分布していることを指します。

びまん性浸潤影・すりガラス影を来す疾患

感染症

※これらの感染症が常に両側びまん性になるわけではありません。たとえばレジオネラ肺炎311例のCTでは区域性のパターンが最も多く(Pulsipher 2026)、オウム病69例では片側の病変が65.2%でした(Li 2026)。

血管性
腫瘍性
その他
  • 肺胞蛋白症、
  • ARDS/AIP/IPF急性増悪
  • 好酸球性肺炎(AEP/CEP)
  • 特発性器質化肺炎(COP)
  • 過敏性肺炎(HP)
    なお2020年のATS/JRS/ALATガイドラインでは、過敏性肺炎は線維化のない「非線維性」と「線維性」に分けて扱われ、非線維性では気管支肺胞洗浄(BAL)のリンパ球分画の測定が推奨されています。びまん性すりガラス影の鑑別で過敏性肺炎を疑うときは、抗原曝露の詳しい問診とBALが手がかりになります。
  • 薬剤性肺障害

考える順番:経過の速さ → 分布 → 随伴所見

疾患名を思い出すより先に、次の3段階で絞ると整理しやすくなります(Cozzi 2021)。

①経過の速さ
  • 症状が出てからおおむね7〜10日以内のものを急性、10〜30日のものを亜急性として扱います(Cozzi 2021)
  • 急性のすりガラス影の原因は、感染症、肺水腫、出血、既存の間質性肺疾患の急性増悪が代表です(Cozzi 2021)
  • 亜急性〜慢性では、過敏性肺炎、非特異性間質性肺炎(NSIP)、剥離性間質性肺炎(DIP)、器質化肺炎、薬剤性などが候補になります(Cozzi 2021)
  • 呼気で撮ったCTや、モザイク状の血流の差(モザイク灌流)は、本物のすりガラス影に見えることがあるので、最初に除外します(Cozzi 2021)
②分布と③随伴所見の早見表
見つけたパターン まず考えること
肺門周囲・中枢側優位のすりガラス影に、胸水、なめらかな小葉間隔壁の肥厚、心拡大、気管支周囲のカフ像(peribronchial cuffing) 心原性(静水圧性)肺水腫。広範なすりガラス影の原因として最も多いとされ、すりガラス影が最も早く出る変化です(Cozzi 2021)
融合傾向が強く濃く、重力に沿った分布にならず、小葉間隔壁の肥厚は目立たない 血管内皮の透過性が上がる非心原性の水腫(誤嚥・敗血症・外傷・脂肪塞栓・薬物など)。びまん性肺胞傷害(DAD)・ARDSにつながります(Cozzi 2021)
下肺・背側優位で、すりガラス影と浸潤影が混在 誤嚥性肺炎、リポイド肺炎。嚥下障害や認知症、油性の薬の長期使用などの背景を確かめます(Cozzi 2021)
肺尖側に出る 脳損傷に伴う神経原性肺水腫では上肺野に陰影が出るとされます(Cozzi 2021)
両側の斑状のすりガラス影(肺門周囲を含む)、上肺〜肺門周囲優位、crazy-paving、嚢胞 ニューモシスチス肺炎(PJP)。免疫が低下した人で、HRCTで最も多い所見はびまん性のすりガラス影です(Kanne 2012、Cozzi 2021)
小葉中心性とランダム分布が混ざる微小結節 サイトメガロウイルス肺炎。PJPと重なる所見が多く、早期の区別は難しいとされます(Cozzi 2021)
末梢・胸膜下・両側・下肺優位 COVID-19をはじめとするウイルス性肺炎(Cozzi 2021)
片側の限局した影 外傷や処置後の出血など。血管炎・抗凝固療法・コカインによる出血はびまん性になりやすい(Cozzi 2021)
上〜中肺野優位で、小葉間隔壁の肥厚と胸水を伴う 急性好酸球性肺炎。血液や肺胞洗浄液の好酸球増加が手がかりです(Cozzi 2021)
気管支血管束に沿う多発性の影、reversed halo sign(環状に取り囲む形) 器質化肺炎(OP)。ただしreversed halo signが見られるのは約2割とされます(Cozzi 2021)
上〜中肺野の小葉中心性のすりガラス影結節に、エアトラッピング 非線維性の過敏性肺炎。呼気CTで確かめます(Cozzi 2021)
線維化のある肺を背景に、両側びまん性のすりガラス影 特発性肺線維症などの急性増悪。感染や心不全、肺塞栓などの原因を除いて診断します(Cozzi 2021)
crazy-paving、びまん性・両側性で、無症状のこともある(約3分の1) 肺胞蛋白症。BALが診断にも治療にも役立ちます(Cozzi 2021)

どのパターンも、免疫状態、薬歴、心不全や腎機能の異常、血痰、喫煙歴といった臨床情報と合わせて初めて意味を持ちます。画像だけで1つに決めようとせず、候補を2〜3個に絞って、検査(BALなど)につなげるのが実際の進め方です。肺胞性陰影と間質性陰影の見分け方は胸部レントゲンの肺胞性陰影と間質性陰影の見分け方、息切れで受診した人の最初の画像の見方は息切れ・呼吸困難の胸部画像も参考にしてください。

症例 20歳代男性 喀血

びまん性肺胞出血 CT 横断像(肺野条件)
引用:Radiopaedia(Diffuse alveolar hemorrhage – Goodpasture syndrome)

両肺の背側を中心に広範な浸潤影があり、その前方にはすりガラス影が広がっています。肺胞内が血液で満たされたことによる変化で、生検で抗GBM抗体病(Goodpasture症候群)によるびまん性肺胞出血と診断されました。1週間後の胸部X線では陰影の大部分が消えています。

びまん性すりガラス影でよくある疑問(Q&A)

Q. すりガラス影だけで病名は決まりますか?
いいえ。すりガラス影は特定の病気に限られない所見で、急性・亜急性・慢性のいずれの病気でも現れます。経過、病歴、分布、随伴所見を合わせて仮説を立てます(Cozzi 2021)。

Q. 肺水腫とウイルス性肺炎はどう見分けますか?
肺水腫(心原性)では、肺門周囲・中枢側に偏ったすりガラス影に、胸水、なめらかな小葉間隔壁の肥厚、心拡大、肺尖側への血管の再分布を伴います。COVID-19の急性期は末梢・胸膜下・下肺優位が典型で、胸水はまれです(Cozzi 2021)。

Q. 胸部X線が正常でもCTを撮る理由は?
軽いすりガラス影はX線では見つけにくいためです(Cozzi 2021)。免疫が低下した人で肺炎が疑われるのにX線が正常のときは、HRCTが検討されます(Kanne 2012)。

Q. 息苦しさが急に強くなったときは?
急に進む呼吸困難や血痰、発熱を伴う息切れは、原因の確認を急ぐ状態のことがあります。気になる症状があるときは、早めに医療機関を受診してください。

あわせて読みたい:びまん性(瀰漫性)とは?意味と読み方、胸部画像のびまん性陰影の定義

参考文献

  1. Cozzi D, Cavigli E, Moroni C, et al. Ground-glass opacity (GGO): a review of the differential diagnosis in the era of COVID-19. Jpn J Radiol. 2021;39(8):721-732. PubMed
  2. Lynch DA, Travis WD, Müller NL, et al. Idiopathic interstitial pneumonias: CT features. Radiology. 2005;236(1):10-21. PubMed
  3. Raghu G, Remy-Jardin M, Ryerson CJ, et al. Diagnosis of Hypersensitivity Pneumonitis in Adults. An Official ATS/JRS/ALAT Clinical Practice Guideline. Am J Respir Crit Care Med. 2020;202(3):e36-e69. PubMed
  4. Collard HR, Ryerson CJ, Corte TJ, et al. Acute Exacerbation of Idiopathic Pulmonary Fibrosis. An International Working Group Report. Am J Respir Crit Care Med. 2016;194(3):265-75. PubMed
  5. Hansell DM, Bankier AA, MacMahon H, et al. Fleischner Society: glossary of terms for thoracic imaging. Radiology. 2008;246(3):697-722. PubMed
  6. Pulsipher AM, Khattar G, Patel R, et al. Chest Computed Tomography Manifestations of Legionella Pneumonia in a Large Multihospital Cohort of Immunocompromised and Immunocompetent Patients. J Thorac Imaging. 2026. PubMed
  7. Li Y, Zhu H, Li G, et al. Computed tomography findings and severity scores in Chlamydia psittaci pneumonia: a retrospective study of 69 cases with clinical correlation. BMC Infect Dis. 2026;26(1). PubMed
  8. Kanne JP, Yandow DR, Meyer CA. Pneumocystis jiroveci pneumonia: high-resolution CT findings in patients with and without HIV infection. AJR Am J Roentgenol. 2012;198(6):W555-61. PubMed

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