ウイルス肺炎(総論)
- インフルエンザ、麻疹、水痘、アデノ、respiratory syncytial(RS)ウイルス、コロナウイルスなどが原因となる。
- 細菌性肺炎を合併することも多く、混合感染の可能性は常に念頭に置く必要あり。
- 病理学的には細気管支炎とびまん性肺胞損傷(DAD)の共存。
こちらにも詳しくまとめました→ウイルス性肺炎まとめ!種類から症状、診断、治療まで!
各ウイルスの特徴
- インフルエンザ肺炎とコロナウイルス肺炎(いわゆるSARS:severe acute respiratory syndrome)ではARDSへの移行が報告されている。
- RSウイルスでは気道を侵す所見が強調され、air trappingから過膨張の所見を示すことが多い。また小児では、感染後に閉塞性細気管支炎を来すこともある。
- 水痘ウイルスでは、散在する小結節影(小葉中心性分布ではない)が特徴とされる。
画像所見
▶CT所見(ウイルス全般)
- 気道周囲の結節影(すりガラス影として吸収値の淡い結節もしばしば)および浸潤影を主体とした気管支肺炎/感染性細気管支炎。
- 気管支肺動脈束の腫大
- すりガラス影・浸潤影
- 粒状・結節影、斑状影
- crazy-paving pattern
インフルエンザウイルス肺炎
- 症状としては、悪寒、高熱、関節筋肉痛などの全身症状→咽頭痛などの上気道炎の症状が出現。
- 心・肺に慢性の基礎疾患を有する患者、腎不全、DM、高齢者、妊婦などがハイリスク群。これらの人は、純粋なインフルエンザ肺炎に加えて細菌感染を合併し重症化しやすい。
- ウイルスによる広汎な肺実質傷害により成人呼吸促迫症候群(ARDS)が引き起こされる劇症型を呈することがある。
- 発症から2日程度できわめて急速に重篤な呼吸不全状態となり、致死率が高い。
- 治療は抗ウイルス薬。特に36時間以内で有効とされており、早期診断と早期治療が大事。
インフルエンザウイルス肺炎のCT所見
- 気管支肺炎のパターン。合併する。比較的中枢の気管が侵されることも多い。
- 淡いすりガラス影、濃厚浸潤影、小葉中心性結節、分岐線状陰影が認められる。
- 両側広範なGGA:時にcrazy-paving appearance
- 牽引性気管支拡張を伴うGGAや両側広範なconsolidation : DADを反映。
- 胸水は比較的少ない。
症例 70歳代女性
両側上葉に区域性に広がるすりガラス影を認めています。
この症例の実際の画像を見てみる→インフルエンザウイルス肺炎のCT画像所見
水痘帯状疱疹ウイルス肺炎
- 水痘の皮疹に引き続いて肺炎が発症するため、診断は比較的容易。
- 成人では重篤な肺炎の原因となる。
水痘帯状疱疹ウイルス肺炎のCT所見
- 血行散布ゆえ両側にランダムパターン。びまん性の境界不鮮明な粒状影、結節陰影が見られる。
- 単発よりも多発することが多い。
- しばしば石灰化をきたす。