先に結論:びまん性肺胞出血(DAH)

  • びまん性肺胞出血は、肺の毛細血管が傷ついて肺胞の中に広く出血する状態で、息切れ・血痰・貧血の進行がみられます(血痰が出ないこともあります)。原因はANCA関連血管炎・SLE・抗GBM抗体病が代表で、薬剤・感染・心臓病(僧帽弁狭窄症)などもあります
  • CTでは両肺に広がるすりガラス影・浸潤影が主で、陰影の間に正常な部分が残ることがあります。経過とともに像が変わり、吸収期には網目状の陰影が重なります
  • 診断は気管支肺胞洗浄でだんだん赤くなる洗浄液で確かめ、腎臓の病気(急速進行性糸球体腎炎)の合併の有無も確認します。命にかかわることがあり、原因に応じてステロイド・免疫抑制薬などで早く治療します

※血痰と急な息切れがあるときは、すぐに受診してください。

びまん性肺胞出血(DAH:Diffuse alveolar hemorrhage)の原因

  • 膠原病
  • 感染
  • 薬剤
  • その他

に大きく分けられる。

膠原病性

症例 60歳代女性 MPA

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右上葉優位に両側広範なすりガラス影あり。一部で牽引性気管支拡張あり。

気管支鏡による肺胞洗浄で肺胞出血と診断された。

感染性

  • 免疫不全者の感染症(サイトメガロウイルス、アスペルギルスなど)
  • 免疫が正常な人の感染症(インフルエンザA(H1N1)、レプトスピラ症など)

感染によるDAHはまれですが、治療が変わるため鑑別に入れます(von Ranke 2013)。

薬剤性

その他

  • ARDS
  • 特発性肺ヘモシデローシス
  • 僧帽弁の病気(僧帽弁狭窄症など)
  • 骨髄移植(移植を受けた人の約5〜20%、Park 2013)

びまん性肺胞出血(DAH:Diffuse alveolar hemorrhage)のCT画像所見

  • びまん性のすりガラス影、浸潤影を主体とし、浸潤影とすりガラス影の間に正常な部分が残ることがある(Park 2013)。ただし画像所見は他の肺胞性病変と似て非特異的で、血痰も最大3分の1の症例でみられないため、診断には気管支肺胞洗浄(BAL)が必要となることが多い(Lara 2010)。経過とともに像は変化し、吸収期にはすりガラス影に小葉間隔壁の肥厚が重なるcrazy-paving patternを呈する。DAHはSLEの約2〜5%、ANCA関連血管炎では最大55%に生じ、死亡率は20〜80%と報告されている(Dutta 2026)。

原因を絞り込む手がかり

手がかり 考える原因
急性の糸球体腎炎(血尿・腎機能低下)を伴う ANCA関連血管炎、抗GBM抗体病、SLE(肺腎症候群)
副鼻腔の病変、肺の結節・空洞、PR3-ANCA陽性 多発血管炎性肉芽腫症(GPA)
腎炎・皮膚症状、MPO-ANCA陽性 顕微鏡的多発血管炎(MPA)
喘息・好酸球増多 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)

(Park 2013)

びまん性肺胞出血でよくある疑問(Q&A)

Q. 肺炎とはどう見分けますか?
A. CTだけでは難しく(Lara 2010)、気管支鏡で同じ場所を数回洗い、回収液の赤血球が回ごとに増えればDAHと診断し、同時に感染症も調べます(Park 2013)。

Q. 治療と予後は?
A. 膠原病・血管炎によるDAHでは、ステロイド大量投与にシクロホスファミドやリツキシマブを組み合わせる治療が第一選択です。回復後も出血の再発や肺の線維化に注意します(Dutta 2026)。

関連記事:【胸部CT】びまん性浸潤影・すりガラス影を来す疾患の鑑別診断

参考文献

  1. Lara AR, Schwarz MI. Diffuse alveolar hemorrhage. Chest. 2010;137(5):1164-71. PubMed
  2. Lichtenberger JP, Digumarthy SR, Abbott GF, et al. Diffuse pulmonary hemorrhage: clues to the diagnosis. Curr Probl Diagn Radiol. 2014;43(3):128-39. PubMed
  3. Reisman S, Chung M, Bernheim A. A Review of Clinical and Imaging Features of Diffuse Pulmonary Hemorrhage. AJR Am J Roentgenol. 2021;216(6):1500-1509. PubMed
  4. Dutta N, Patil H, Gopinath V, et al. Diffuse alveolar hemorrhage in rheumatic diseases: Clinical features, diagnosis, and management. Rheumatol Immunol Res. 2026;7(1):1-13. PubMed
  5. Park MS. Diffuse alveolar hemorrhage. Tuberc Respir Dis (Seoul). 2013;74(4):151-62. PubMed
  6. von Ranke FM, Zanetti G, Hochhegger B, et al. Infectious diseases causing diffuse alveolar hemorrhage in immunocompetent patients: a state-of-the-art review. Lung. 2013;191(1):9-18. PubMed

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