器質化肺炎(OP:organizing pneumonia)を起こす原因とCT画像診断についてまとめました。
中でも原因不明なのが、特発性器質化肺炎(COP)です。
器質化肺炎(OP:organizing pneumonia)
- 細菌性肺炎と第一に鑑別が必要となる疾患。
- 組織学的に末梢細気管支〜肺胞道〜肺胞腔内を主座に幼弱な線維芽細胞が増殖しMasson小体と呼ばれるポリープ状構造を形成するのが特徴。つまり末梢気腔内への器質化した線維化。
- 原因不明のものを特発性器質化肺炎:COPという。COPのCはcryptogenic=原因不明の。
- 何らかの原因や既存疾患を有するもの=secondary OPという。こちらが3〜4割。
OPを来しうる疾患
- 膠原病関連(PM/DM, RA ,SjS)
- 感染症(細菌、マイコプラズマ、ウイルスなど)
- 誤嚥
- 乳癌に対する放射線治療後
- 移植後(肺、骨髄)
- 薬剤
- 血液悪性疾患
- 炎症性腸疾患関連肺疾患
- その他
特発性器質化肺炎(COP:cryptogenic organizing pneumonia)
- 通常は亜急性経過(2-3ヶ月程度)の間質性肺炎。時に急速に進行して、高度の呼吸不全をきたす事がある。
- 以前はBOOPの呼称。
- 臨床的には、咳、白色〜透明痰、間欠的発熱などを呈し得るが症状は多彩(UIPと異なる点。)。
- 抗生剤不応の肺炎がキーワード。細菌性肺炎と第一に鑑別が必要となる疾患。
- 画像所見は、特発性、2次性で変わりはない。
- 確定診断は肺生検だが、なかなか実際は行われない事が多い。
- 治療は副腎皮質ステロイド。抗生剤は効かないので、抗生剤不応の肺炎にはこの疾患を鑑別にあげる。
COPの画像所見:(NSIP以上にvariationに富む)
- 下肺野優位に、末梢胸膜側優位、浸潤影主体の多発病変+周囲にすりガラス影。
※通常の肺炎では説明がつかない経過をたどり、多発性のconsolidationやGGOを呈した場合は本疾患を疑う。 - 軽度の気管支拡張を伴うことが多い。
- 大葉性肺炎と比較して、気管支透亮像が末梢まで見える事が多い。(大葉性肺炎の場合は、中枢側のみの事が多い。)
- 経過での自然消退・新病変出現を繰り返す。移動性陰影(遊走肺炎:wandering pneumonia)あり。
※陰影が移動して見えるのは、COPと慢性好酸球性肺炎(CEP)が有名。
→血液データや、気管支鏡肺胞洗浄液(BALF)の所見を参考に鑑別する。 - 軽度の収縮性変化:葉間胸膜の偏位、容積減少。気管支透亮像には軽度拡張が見られる。
- 浮腫性変化に富む。しばしば淡いすりガラス影を伴い境界不明瞭。小葉辺縁構造の顕在化(perilobular pattern)。
- Reversed-halo sign(GGOが濃い帯状高吸収で囲まれる)は特徴的所見の1つ。
症例 60歳代男性
両側肺底部背側に気管支透亮像を伴う斑状の浸潤影あり。
COP疑いと診断されました。
症例 60歳代男性 上行結腸癌術後
両側肺野末梢にreversed halo signを疑う浸潤影が多発しています。
好酸球の増多などは認めず、薬剤に伴うOPと診断されました。
薬剤休止により画像所見は軽減しました(改善後の画像は非提示)。
perilobular pattern
- 小葉辺縁構造の顕在化および、小葉辺縁優位の帯状陰影。
≒小葉間隔壁の肥厚+masson小体+周囲の浮腫、炎症 - OPの60%程度に見られる。
- 組織学的には、小葉辺縁部肺実質部のOP&虚脱、浮腫性変化を反映した肺静脈&リンパ路拡張所見。
COP診断のpitfall
- 一見OPパターンに近い画像を呈するものの中には、慢性好酸球性肺炎も含まれるため、OP/EPパターンと表現。
- このパターンであっても急速進行性の経過を呈するもの、つまりALI/DADに近いものが存在するので、短期間で増悪傾向が目立つ場合は要注意。
- 画像は腫瘍が疑わしいときに、TBLBでは病理はOPだったという場合に、癌の辺縁にOPがあることもあるので、それだけで癌は否定できない。それだけで、癌ではなかったと思わずに、画像を信じて組織再検や短期での経過観察を勧める。
- 癌以外にも、NSIP、過敏性肺炎、結核などの一部の組織学的なOPが存在しうる。
- また免疫抑制患者のクリプトッカス感染症では、OP様の陰影をきたすことがあるので、要注意。この場合、ステロイドを投与すると、クリプトッカス髄膜炎を起こす可能性があるため。
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