薬剤性肺障害/薬剤性肺炎(drug-induced lung injury)とは

  • 薬剤投与中に発症した呼吸器系の障害の中で薬剤と関連があるもの。
  • 薬剤性間質性肺炎、喘息発作、咳嗽、CO2ナルコーシスがこれに含まれる。
  • 薬剤投与開始から数周〜数ヶ月で見られるものが多い。
  • リスク因子として、60歳以上、既存の肺病変(特に慢性線維化性間質性肺炎)、肺手術後、呼吸機能低下、肺への放射線照射、抗悪性腫瘍剤の多剤療法など。
  • 血液生化学・免疫学的検査では、好酸球増加、肝機能障害、血清KL-6/SP-D/SP-A/LDH/CRPの上昇を認める。
  • 確定診断が困難であり、病理学的な分類が報告者によって異なる。
  • 薬剤性肺炎は、薬剤投与中の変化という、外因に基づく分類であり、その病態は症例により様々である。このため、薬剤性肺炎の画像所見は多岐にわたる。
  • 類似する(特発性)びまん性肺疾患のパターンに基づき分類される。
  • 薬剤によって特徴的な反応パターンをとるものも存在するが、同一の薬剤でも異な る反応を呈しうるため、画像からの診断は困難な場合も多い。
  • 画像的には,薬剤性肺炎以外の病態(感染症、原疾患増悪)などの除外診断も重要である。
  • DAD類似型は治療反応性に乏しく予後不良であるが、その他は薬剤の中止やステロイド投与で改善することが多い。

薬剤性肺障害のCT画像パターン

薬剤性肺障害のCT画像所見

  • 両肺野広範なGGAおよびconsolidation、非特異的な所見。
  • 小葉性陰影、小葉中心性陰影をきたすことは少ないが、抗生剤によるものでは、起こる事もある。
  • 急性発症は、非心原性肺水腫、HP、DADの臨床像、慢性発症はNSIP、COPの臨床像を示すことが多い。
  • CT所見から類推した病理所見と実際の病理の一致率は45%と低い。なので、病理所見を類推することはあまり意味がない。=画像パターンが病理所見を示すのではない。
  • CT所見では、HP > NSIP > DADパターンが多い。

特殊な薬剤による肺障害の画像所見

  • アミオダロン:ヨードを含むため、コンソリデーションが高吸収で肝の吸収値が上がる
  • 肺癌に対する分子標的薬であるチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI):DADが多い。日本人に多い。
  • mTOR阻害薬:肺障害の頻度が30-50%と非常に高いが、臨床症状を欠くgrade1の症例が多い。HP類似型やNSIP類似型が多い。
  • メトトレキサート(MTX)肺障害:関節リウマチに用いられ、HP類似型だが、ニューモシスチス肺炎との鑑別が難しいことがある。

関連記事:関節リウマチに伴う肺病変のCT所見

症例 50歳代男性 呼吸苦

両側上下葉に広汎な斑状のすりガラス影あり。

漢方による過敏性肺臓炎(HP)類似型の薬剤性肺炎と診断されました。

症例 50歳代女性

両側下葉優位に広汎な斑状のすりガラス影あり。

アミオダロン(アンカロン)による過敏性肺臓炎(HP)類似型の薬剤性肺炎と診断されました。

また肝臓は著明に高吸収でCT値は平均92HUと高値を認め、アミオダロン肝と診断されました。

症例 70歳代男性

右上下葉に気管支血管束周囲を中心としたすりガラス影を認めており、抗癌剤による非特異性間質性肺炎(NSIP)類似型の薬剤性肺炎と診断されました。

症例 70歳代男性

右上葉および両側下葉末梢にすりガラス影〜コンソリデーションを認めており、糖尿病薬による器質化肺炎(OP)類似型の薬剤性肺炎と診断されました。

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