サイトメガロウイルス肺炎(Cytomegalovirus pneumonia)
- ニューモシスチス肺炎同様、免疫不全状態の患者に発生する重要な日和見感染症。
- ヘルペスウイルス科に属するDNAウイルス。
- 日本人は成人までに90〜95%の人が罹患しているが、ほとんどは不顕性感染でウイルス抗体陽性となっている。
- 健常人での初感染では、一過性の急性肝障害や伝染性単核球症を引き起こす。
- 発症機序は幼児期の潜行感染の再活性化。
- 主として移植患者(通常造血幹細胞移植、臓器移植患者)に発症することが多い。
- 臓器移植では、ウイルス陽性のドナーから陰性のレシピエントへの感染で発症リスクが高くなる。一方、骨髄移植ではドナーがウイルス陰性でレシピエントが陽性の場合、特に感染症のリスクが高まる、これはドナーの骨髄細胞がレシピエントのものに置き換わるため。
- 意外にもAIDS患者はまれ。CD4+細胞数が極端に減少した場合には例外。
- 骨髄移植や造血幹細胞移植では、移植後およそ30〜100日の間の早期合併症として発症する場合が多い。
- 発熱、乾性咳嗽、呼吸困難、低酸素血症が見られる。
- 検査法にはCMV antigenemia法、shell vial法、PCR法など。
画像所見
▶CT所見:
- 画像所見は多様。下肺野中心の広範なすりガラス影、浸潤影、結節影の混在が最も高頻度。片側性の陰影は特別な理由がない限り珍しい。
- 結節は小葉中心性 and/or (血行散布性に)ランダム分布をする。※ニューモシスチス肺炎と比べて結節影の頻度が多いことが特徴。またより画像所見は多彩。
- リンパ節腫大や胸水を伴うこともある。
- 臨床的に、びまん性すりガラス影や無秩序に分布する多発性結節影、またはそれらの組み合わせが見られる場合は、サイトメガロウイルス肺炎の可能性を考慮する必要があり
ニューモシスチス肺炎とサイトメガロウイルス肺炎の鑑別
- ともにびまん性のすりガラス影主体の陰影で非常に似ている。
- PCPはモザイク状の陰影の頻度が高い、またすりガラス影は比較的均一。
- CMV肺炎は結節影の頻度が高い。特に小葉中心性に認められる点が鑑別に役立つ。(より粒粒なのがサイトメガロ)
- PCPで微細粒状影を伴うものは、治癒が遷延しやすく、その場合は、CMV肺炎の合併を考える。
症例 20歳代男性 骨髄移植後90日目。
引用:radiopedia
両側肺に散在する広範囲のすりガラス影があり、特に右中葉および両側下葉で顕著です。
結節影は認めていません。
サイトメガロウイルス肺炎(Cytomegalovirus pneumonia)と診断されました。