先に結論:サイトメガロウイルス肺炎のCT

  • サイトメガロウイルス(CMV)肺炎は、多くの人の体に潜んでいるウイルスが免疫が弱ったときに再び活動して起こる肺炎で、とくに造血幹細胞移植・臓器移植の後に問題になります
  • CTでは両肺のすりガラス影が主で、小葉中心性の小結節・浸潤影・小葉間隔壁の肥厚などが混ざります。ニューモシスチス肺炎などほかの日和見感染と画像だけで区別するのは難しいことがあります
  • 診断はCMV抗原血症検査・PCR・気管支肺胞洗浄などと組み合わせて行い、抗ウイルス薬(ガンシクロビルなど)で治療します

サイトメガロウイルス肺炎(Cytomegalovirus pneumonia)

  • ニューモシスチス肺炎同様、免疫不全状態の患者に発生する重要な日和見感染症。
  • ヘルペスウイルス科に属するDNAウイルス。
  • 多くの人がすでに感染しており(日本の妊婦7,074人では69.1%が抗体陽性、Shigemi 2015)、ほとんどは不顕性感染でウイルス抗体陽性となっている。
  • 健常人での初感染では、一過性の急性肝障害や伝染性単核球症を引き起こす。
  • 発症機序は幼児期の潜伏感染の再活性化。
  • 主として移植患者(通常造血幹細胞移植、臓器移植患者)に発症することが多い。
  • 臓器移植では、ドナーとレシピエントの抗体の組み合わせでリスクが変わるため、移植前に両者の抗体(IgG)を調べる(Razonable 2019)。造血幹細胞移植では、レシピエントが抗体陽性であること自体が生存に不利な因子と報告されている(5年生存率 陰性64% vs 陽性40%、Broers 2000)。
  • 骨髄移植や造血幹細胞移植では、移植後早期の合併症として問題になる。
  • 発熱、乾性咳嗽、呼吸困難、低酸素血症が見られる。
  • 検査法にはCMV antigenemia法、shell vial法、PCR法など。

画像所見

▶CT所見:

  • 画像所見は多様。下肺野中心の広範なすりガラス影、浸潤影、結節影の混在が最も高頻度。片側性の陰影は特別な理由がない限り珍しい。
  • 結節は小葉中心性 and/or (血行散布性に)ランダム分布をする。※ニューモシスチス肺炎と比べて結節影の頻度が多いことが特徴。またより画像所見は多彩。
  • 胸水を伴うこともある。AIDS以外の免疫不全患者32例(骨髄移植25例など)の薄層CTでは、全例が両側性で、すりガラス影66%、多発結節59%、浸潤影59%がみられ、胸水は7例でした。すりガラス影のみ・結節のみの例は少なく、これらが混在するパターンが典型です。
  • 臨床的に、びまん性すりガラス影や無秩序に分布する多発性結節影、またはそれらの組み合わせが見られる場合は、サイトメガロウイルス肺炎の可能性を考慮する必要があり

ニューモシスチス肺炎とサイトメガロウイルス肺炎の鑑別

  • ともにびまん性のすりガラス影主体の陰影で非常に似ている。
  • PCPはモザイク状の陰影の頻度が高い、またすりガラス影は比較的均一。HIV陰性の免疫不全患者での比較では、上肺野優位の分布・モザイクパターン・均一なすりガラス影はPCPに多く、小結節や境界不明瞭なすりガラス影・浸潤影はCMV肺炎に多くみられました。一方、胸膜下のsparing・浸潤影・小葉間隔壁肥厚は両者で同程度にみられ、鑑別点になりません。
  • CMV肺炎は結節影の頻度が高い。特に小葉中心性に認められる点が鑑別に役立つ。(より粒粒なのがサイトメガロ)

症例 20歳代男性 骨髄移植後90日目。

引用:Radiopaedia

両側肺に散在する広範囲のすりガラス影があり、特に右中葉および両側下葉で顕著です。

結節影は認めていません。

サイトメガロウイルス肺炎(Cytomegalovirus pneumonia)と診断されました。

サイトメガロウイルス肺炎の診断と治療(Q&A)

Q. どの検査で診断しますか?
A. 血液の抗原血症検査やPCRに、気管支肺胞洗浄液などの検査を組み合わせます。2017年改訂の移植患者向けの定義では「疑い(probable)」の区分が加わり、ウイルス量の定量検査も取り入れられました(Ljungman 2017)。

Q. 治療と予防は?
A. 臓器移植のガイドラインでは、バルガンシクロビルと静注ガンシクロビルが選択薬で、予防は「予防投与」と「ウイルスが増えた時点で始める先制治療」が二本柱です(Razonable 2019)。

関連記事:サイトメガロウイルス腸炎のCT画像所見

あわせて読みたい:免疫不全の肺炎の画像診断の特徴は?

参考文献

  1. Kang EY, Patz EF Jr, Müller NL. Cytomegalovirus pneumonia in transplant patients: CT findings. J Comput Assist Tomogr. 1996;20(2):295-9. PubMed
  2. Vogel MN, Brodoefel H, Hierl T, et al. Differences and similarities of cytomegalovirus and pneumocystis pneumonia in HIV-negative immunocompromised patients thin section CT morphology in the early phase of the disease. Br J Radiol. 2007;80(955):516-23. PubMed
  3. Franquet T, Lee KS, Müller NL. Thin-section CT findings in 32 immunocompromised patients with cytomegalovirus pneumonia who do not have AIDS. AJR Am J Roentgenol. 2003;181(4):1059-63. PubMed
  4. Ljungman P, Boeckh M, Hirsch HH, et al. Definitions of Cytomegalovirus Infection and Disease in Transplant Patients for Use in Clinical Trials. Clin Infect Dis. 2017;64(1):87-91. PubMed
  5. Shigemi D, Yamaguchi S, Otsuka T, et al. Seroprevalence of cytomegalovirus IgG antibodies among pregnant women in Japan from 2009-2014. Am J Infect Control. 2015;43(11):1218-21. PubMed
  6. Razonable RR, Humar A. Cytomegalovirus in solid organ transplant recipients-Guidelines of the American Society of Transplantation Infectious Diseases Community of Practice. Clin Transplant. 2019;33(9):e13512. PubMed
  7. Broers AE, van Der Holt R, van Esser JW, et al. Increased transplant-related morbidity and mortality in CMV-seropositive patients despite highly effective prevention of CMV disease after allogeneic T-cell-depleted stem cell transplantation. Blood. 2000;95(7):2240-5. PubMed

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →