首の骨のうち、第3頸椎(C3)から第7頸椎(C7)までを下位頸椎(subaxial cervical spine)と呼びます。C1(環椎)・C2(軸椎)の上位頸椎とは形も壊れ方も違い、交通事故・転落・飛び込みなどで椎間関節の脱臼、涙滴骨折、中心性頸髄損傷などが起こります。
この記事では、下位頸椎の損傷をCTとMRIでどう読むかを、SLIC分類(Subaxial Injury Classification)の考え方に沿って、実際の画像とともに解説します。脊髄損傷そのものの所見は脊髄損傷のCT・MRI画像診断、上位頸椎の骨折(ジェファーソン骨折・ハングマン骨折)は脊椎・脊髄外傷の画像診断で扱っています。
先に結論:下位頸椎損傷のCT・MRIの読み方
- CTが入り口:強い外傷ではX線よりCT。骨折の形(圧迫・破裂・伸延・回旋/並進)を決めます
- 椎間関節を左右1つずつ:矢状断で上下の関節突起が向かい合っているか。乗り上げ(perched)・かみ込み(locked)は不安定な損傷です
- 椎間板靱帯複合体(DLC):椎間板・後縦靱帯・椎間関節包・棘間靱帯の損傷は、CTの間接所見とMRIで評価します
- SLICは3本柱:形態・DLC・神経症状を点数化し、合計で保存か手術かの目安にします
- 骨折がなくても脊髄損傷はある:脊柱管が狭い高齢者の過伸展では、中心性頸髄損傷がCTで異常なく起こります
- 血管と強直脊椎:脱臼・亜脱臼を伴う骨折では椎骨動脈損傷を、強直した背骨では軽い外傷での骨折を考えます
下位頸椎の損傷とは?
下位頸椎はよく動き、固い胸椎とのつなぎ目に近いため損傷を受けやすい部位です。頸椎骨折の65%、脊椎全体の脱臼の75%以上がこの部位に起こるとまとめられています(Cirillo 2025)。
損傷の起こり方は、首が強く曲がる(屈曲)、反る(伸展)、上から押しつぶされる(軸圧)、ねじれる(回旋)の組み合わせで、壊れ方が決まります。
- 屈曲・伸延:後方の靱帯が引き裂かれ、椎間関節が前方へずれて脱臼します
- 屈曲・圧迫:椎体の前下角がちぎれる涙滴(teardrop)骨折。椎体の後ろの部分が脊柱管へずれます
- 軸圧:椎体が上下からつぶれる圧迫骨折・破裂骨折(圧迫骨折と破裂骨折の違い)
- 伸展:前縦靱帯・椎間板の前方が裂け、脊柱管の狭い人では骨折なしに脊髄損傷が起こります(脊椎の過伸展と過屈曲による骨折)
画像の見方
X線とCTの使い分け
頸椎損傷を見つける感度は、X線52%に対してCT98%で、意識障害がある人など高リスクの外傷ではCTを最初の検査にすべきとされています(Holmes 2005)。X線で見る場合の基本は頸椎レントゲンの見方、正常像は頸椎の場所と正常なレントゲン・CT画像を参照してください。
CTでどこを見るか
- アライメント(矢状断):椎体前縁・後縁・椎弓板の線(spinolaminar line)がなめらかにつながるか。前後のずれ(すべり)や局所の後弯
- 椎間関節(左右の傍矢状断):上の椎の下関節突起が、下の椎の上関節突起の後ろに正しく乗っているか。「離れている→乗り上げ→かみ込み」と進むほど不安定です
- 椎体:前方の楔状変形(圧迫)、後壁の破綻と骨片の脊柱管内への突出(破裂)、前下角の三角形の骨片(涙滴)
- 椎間板腔と棘突起の間隔:上下と比べて前方が開く、あるいは棘突起の間が開くのは靱帯損傷の間接所見です
- 横突孔:骨折線が横突孔(椎骨動脈の通り道)に及ぶか

引用:Wang et al. Front Surg 2025(Figure 2)
頸椎CTの傍矢状断像で、椎間関節の並びを示しています。(1)関節が離れている、(2)乗り上げ(perched)、(3)かみ込み(locked)、(4)骨折を伴う乗り上げ。右上の枠内に関節突起の形を青で示しています。(出典:Wang et al. Front Surg 2025, Figure 2, CC BY 4.0)
涙滴(teardrop)骨折は2種類
同じ「涙滴」でも、屈曲型と伸展型で重症度がまったく違います。
- 屈曲型の涙滴骨折:椎体の前下角の骨片に加えて、椎体の残りが後方へずれ(後方すべり)、前後の靱帯と椎間板がともに断裂する不安定な損傷です。C5に最も多く(最大74%)、大きな報告では半数以上に神経障害がみられます(Cirillo 2025)
- 伸展型の涙滴骨折:C2の前下角に多い小さな裂離骨折で、多くは安定し保存的に治療されます(Cirillo 2025)

引用:Cirillo et al. EFORT Open Rev 2025(Figure 1)
C5の涙滴骨折です。(A)矢状断、(B)横断、(C)冠状断のCT。(D)T1強調、(E)T2強調のMRI矢状断で、同じ病変に脊髄の信号変化と、椎間板後方・後縦靱帯の断裂がみられます。(出典:Cirillo et al. EFORT Open Rev 2025, Figure 1, CC BY 4.0)
MRIで見る椎間板靱帯複合体(DLC)と脊髄
DLCは椎間板、前縦靱帯・後縦靱帯、椎間関節包、黄色靱帯、棘間・棘上靱帯からなり、骨が折れていなくても損傷すると不安定になります。MRIでは次を確認します。
- STIR・脂肪抑制T2強調像:棘間靱帯の高信号、椎間関節の液体、前縦靱帯・後縦靱帯の途切れ
- 外傷性椎間板ヘルニア:脱臼の整復前後で脊髄を圧迫していないか
- 脊髄:T2強調像の高信号(浮腫)の長さ、出血を示す低信号
- 硬膜外血腫:頸椎損傷に伴う血腫も少なくありません(脊髄硬膜外血腫)

引用:Wang et al. Front Surg 2025(Figure 3)
頸椎脱臼骨折での椎間板損傷の型を、T2強調矢状断像で示しています。(1)上の椎体の後縁に引いた線より椎間板が後ろに出ている外傷性ヘルニア、(2)線を越えないもの、(3)椎間板が椎体の後ろへ移動した脱出(白矢印)、(4)脱出を伴わない突出(白矢印)。(出典:Wang et al. Front Surg 2025, Figure 3, CC BY 4.0)
CTで異常がない人に追加のMRIで何がみつかるかを調べたメタ解析では、23研究5,286人のうち、経過で不安定な損傷とされたのは16件でした(Malhotra 2017)。CTが正常でも神経症状がある、痛みが強く首を動かせないといった場合にMRIを追加するのが一般的な考え方です。
SLIC分類の考え方
SLICは、下位頸椎の損傷を形態(morphology)・椎間板靱帯複合体(DLC)・神経症状の3つで点数化し、合計点を治療の目安にする分類です。20人の脊椎外科医による評価で、評価者間の一致は神経症状が最も高く(級内相関係数0.87)、DLCが最も低い(0.49)結果でした。点数による治療の推奨には93.3%の症例で評価者が同意しています(Vaccaro 2007)。
おおまかな点数の付け方は次のとおりです(Joaquim 2014)。
- 形態:異常なし(孤立した棘突起骨折・椎弓板骨折・小さな転位のない椎間関節骨折を含む)0点、圧迫骨折1点、破裂骨折2点、伸延損傷3点、回旋・並進損傷4点
- DLC:正常0点、判定できない1点、断裂2点
- 神経症状:正常0点、完全損傷2点、不完全損傷3点、神経症状がありながら脊髄の圧迫が続いていれば+1点
- 合計:1〜3点は保存的治療、4点は保存・手術のどちらも、5点以上は手術(整復・除圧・固定)が勧められます
たとえば、神経症状のない破裂骨折でもDLCが断裂していれば4点になります。伸延損傷・回旋損傷はDLCの断裂を伴うため、神経症状にかかわらず手術の群に入ります(Joaquim 2014)。読影レポートでは、形態と靱帯の所見を点数がつけられる言葉で書くことが、治療方針の決定に直結します。
骨折がない脊髄損傷:中心性頸髄損傷
外傷性の中心性頸髄損傷は、最も多い不完全脊髄損傷で、足より腕の力が強く落ちるのが特徴です。患者の半数近くは生まれつき、あるいは加齢で脊柱管が狭く、首を反らせるけがで起こります。半数以上で運動麻痺は自然に回復します(Aarabi 2008)。SLICでは、頸椎症に伴う中心性頸髄損傷で椎間板ヘルニアがない場合、形態0点・DLC 0点・神経症状3+1点の合計4点となります(Joaquim 2014)。
CTでは骨折も脱臼もなく、骨棘・後縦靱帯骨化症(OPLLのCT・MRI画像所見)・黄色靱帯の肥厚による脊柱管狭窄だけが目立ちます。MRIで脊髄の中心部の高信号を確認します(脊柱管狭窄は脊柱管狭窄症とは)。

引用:Piperas et al. Cureus 2026(Figure 2)
外傷性中心性頸髄損傷のCTとMRIです。(A)CT矢状断で骨折はなくアライメントは保たれていますが、C2〜C7の変性と靱帯の骨化(赤:前縦靱帯側の骨増殖、黄:後縦靱帯骨化)で脊柱管が狭くなっています。(B)T2強調矢状断像でC2〜C6に脊髄中心部の浮腫(赤枠)があり、狭窄はC4-C5で最も強くなっています。(C)T2強調横断像で脊髄中心部の浮腫がみえます。(出典:Piperas et al. Cureus 2026, Figure 2。原図はGuan 2022, CC BY-NC-SA 3.0で、著者が色の注釈を追加)
見逃しやすい点・合併損傷
椎骨動脈損傷
頸椎骨折でCTアンギオグラフィによるスクリーニングを受けた453人では、30%に鈍的脳血管損傷があり、椎骨動脈損傷は26%でした。骨折の型で危険が高かったのは脱臼・亜脱臼を伴う骨折(オッズ比3.8)でした(Du 2024)。頸椎脱臼骨折96人をMRIで調べた検討でも18.75%に椎骨動脈損傷があり、その72%は椎間関節の脱臼を伴っていました(Hasan 2024)。横突孔に及ぶ骨折や脱臼をみたら、血管の評価も考えます(椎骨動脈解離のCT・MRI)。
強直した背骨(強直性脊椎炎・DISH)
背骨が骨で固まった人は、軽い外傷でも骨折しやすく、頸椎が最も多い部位です。診断の遅れが多く、受診時に神経症状があったのは強直性脊椎炎で67.2%、DISHで40.0%でした(Westerveld 2009)。目立たない骨折線を、CTの矢状断・冠状断で上下にたどって探します(強直性脊椎炎の画像診断、DISHの画像所見と骨折の注意点)。
そのほか
- 頸胸椎移行部:C7〜T1は肩と重なりX線で写りにくく、CTの範囲に入っているか確認します
- 小さな棘突起骨折:単独なら安定ですが、脱臼の目印のことがあります(バルソニー病など骨片に似たものとの区別も)
- 変性と区別する:骨棘・椎間板の狭小化・すべり症は外傷前からあることが多い所見です(変形性脊椎症)。周囲の軟部の腫れや骨髄の浮腫があるかで新しい損傷かを考えます
治療方針に関わる所見
治療方針は、骨折の形、靱帯の損傷、神経症状、脊髄の圧迫が続いているかで決まり、SLICの点数がその目安になります。読影で押さえるべき所見を並べると次のとおりです。
- 椎体のずれ(前後・回旋)と局所の後弯の程度
- 椎間関節が乗り上げているか・かみ込んでいるか(左右それぞれ)
- 椎体後壁の骨片や外傷性椎間板ヘルニアによる脊柱管の狭窄
- MRIでのDLCの断裂の有無
- 脊髄の信号変化の範囲と、圧迫が続いているか
- 横突孔の骨折・脱臼(椎骨動脈の評価の要否)
下位頸椎の損傷でよくある疑問(Q&A)
Q. CTで骨折はないと言われましたが、腕のしびれと力が入りません。
A. 首を反らすけがでは、脊柱管が狭い人に骨折なしで脊髄損傷が起こることがあり、腕の症状が目立つのが特徴です(Aarabi 2008)。MRIで脊髄の状態を確認します。
Q. 椎間関節の脱臼とはどういう状態ですか?
A. 上の頸椎の関節突起が、下の頸椎の関節突起を乗り越えて前にずれた状態です。片側だけのことも両側のこともあり、CTの傍矢状断で左右を確認します。SLICでは回旋・並進や伸延の損傷として高い点数になります(Joaquim 2014)。
Q. 首の骨折で血管の検査も必要と言われたのはなぜですか?
A. 頸椎の横突孔の中を椎骨動脈が通るため、脱臼や亜脱臼を伴う骨折では椎骨動脈が傷ついていることがあるからです(Du 2024、Hasan 2024)。
※首のけがのあとに手足のしびれ・力が入らない・首が動かせないほどの痛みがあるなど、気になる症状があれば医療機関(整形外科・救急)を受診してください。
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参考文献
- Vaccaro AR, Hulbert RJ, Patel AA, et al. The subaxial cervical spine injury classification system: a novel approach to recognize the importance of morphology, neurology, and integrity of the disco-ligamentous complex. Spine (Phila Pa 1976). 2007;32(21):2365-74. PubMed
- Joaquim AF, Patel AA, Vaccaro AR. Cervical injuries scored according to the Subaxial Injury Classification system: An analysis of the literature. J Craniovertebr Junction Spine. 2014;5(2):65-70. PubMed
- Cirillo I, Blanco S, Cabello S, et al. Flexion teardrop fracture of the cervical spine: a narrative review. EFORT Open Rev. 2025;10(10):806-814. PubMed
- Holmes JF, Akkinepalli R. Computed tomography versus plain radiography to screen for cervical spine injury: a meta-analysis. J Trauma. 2005;58(5):902-5. PubMed
- Malhotra A, Wu X, Kalra VB, et al. Utility of MRI for cervical spine clearance after blunt traumatic injury: a meta-analysis. Eur Radiol. 2017;27(3):1148-1160. PubMed
- Aarabi B, Koltz M, Ibrahimi D. Hyperextension cervical spine injuries and traumatic central cord syndrome. Neurosurg Focus. 2008;25(5):E9. PubMed
- Du PZ, Christopher ND, Ganapathy V. Association between cervical fracture patterns and blunt cerebrovascular injury when screened with computed tomographic angiography. Spine J. 2024;24(2):310-316. PubMed
- Hasan MZ, Sangondimath GM, Alam MS, et al. Vertebral Artery Injury in Cervical Spine Fracture Dislocation: An Observational Study in a Tertiary Care Center. Cureus. 2024;16(4):e57774. PubMed
- Westerveld LA, Verlaan JJ, Oner FC. Spinal fractures in patients with ankylosing spinal disorders: a systematic review of the literature on treatment, neurological status and complications. Eur Spine J. 2009;18(2):145-56. PubMed
- Wang S, Yao R, Gong X, et al. Optimizing surgical strategies for subaxial cervical fracture-dislocation: a facet and disc injury-based approach. Front Surg. 2025;12:1718134. PubMed
- Piperas G, Benetos IS, Kaspiris A, et al. Central Cord Syndrome: Surgical vs Conservative Management. Cureus. 2026;18(9):e115812. PubMed
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