先に結論:脊髄(脊椎)硬膜外血腫と硬膜外腔(硬膜上腔)
- 脊髄硬膜外血腫は突然の強い頸部・背部痛に続いて、手足の麻痺・しびれ・膀胱直腸障害が急に進む病気です。約3割は原因不明で、抗凝固薬・外傷・手術や硬膜外麻酔の後なども原因になります
- 頭蓋内では硬膜が骨に密着していますが、脊柱管では硬膜と骨の間にすき間(硬膜外腔)があり、脂肪と静脈叢があります。そのため血腫は硬膜外腔に沿って縦に長く広がり、多くは背側にできて脊髄を圧迫します
- 脳梗塞(片麻痺のとき)や大動脈解離と間違えやすいため、首や背中の痛みを伴う急な麻痺では本症を疑い、MRIで確認します。MRIでは硬膜外の背側にレンズ状・紡錘状の腫瘤として見え、時期により信号が変わります。CTでは急性期に髄液より高吸収に見えますが、小さいものは矢状断でないと見逃されやすいです
- 早期の除圧手術が基本ですが、急速に回復する場合は保存的治療も考えます
※突然の首や背中の激痛に続いて手足の力が入らなくなったときは、すぐに救急車を呼んでください。
脊髄硬膜外血腫(spinal epidural hematoma)とは?
- 脊柱管の中(硬膜の外側)に出血して脊髄・神経を圧迫する状態。
- 強い疼痛とともに急激な神経根症状、知覚・馬尾神経障害で発症する。
- 約3割(29.7%)は原因不明(特発性)で、次いで抗凝固療法、血管奇形に関連するものが多い(Kreppel 2003)。その他、外傷、凝固異常、脊椎術後、脊椎麻酔・硬膜外麻酔後などに見られる。
- 下部頚椎〜上位胸椎、下部胸椎〜上部腰椎レベルが好発部位(Kreppel 2003)。
- 55〜70歳に多いが、全年齢に認める(Kreppel 2003)。
- 男性に多い(脊髄の血腫全体の63.9%:Kreppel 2003)。
- 血腫は硬膜嚢の背側に存在することが多い(Kreppel 2003)が、腹側のこともある(Holtås 1996)。
- 四肢への放散痛を伴った突然の背部痛で発症し、血腫の増大とともに運動障害、感覚障害、膀胱直腸障害などが生じる。
- 治療は手術(除圧)が基本であるが、症状が軽い例や早期に改善する例では保存的治療も考慮される。
- 特発性脊椎硬膜外血腫741例の個別患者データメタ解析では、術前の神経症状が比較的軽い(Frankel C以上)こと、抗凝固薬を使用していないこと、圧迫が馬尾のみであること、血腫の範囲が3〜4椎体であることが良好な転帰と関連し、出血源は静脈由来を示唆する所見が多かった(Bakker 2015)。
- 小児では、Guillain-Barré症候群と(Kondo 2019)、成人では、大動脈解離(Inaba 2023)や、片麻痺を伴うと脳卒中(Shima 2012)と誤診されることがある。
- 多くは静脈性出血と考えられており、腹圧や胸腔内圧の上昇により弁のない硬膜外静脈叢の圧が上がり、弱い部分が破綻して生じるとされる(Kreppel 2003, Al-Mutair 2010)。そのほか血管奇形からの出血も出血源となる。
硬膜外腔(硬膜上腔、epidural space)とは?血腫が縦に長く広がる理由
- 頭蓋内では硬膜の内層、外層は頭蓋骨に密着しており、間隙は存在しない。
- 硬膜は大後頭孔のレベルで骨から離れるため、脊柱管内では硬膜(脊髄硬膜)と脊柱管の骨・靱帯の間に間隙が存在し、これを硬膜上腔(硬膜外腔、epidural space)と呼び、内部には脂肪などの疎性組織と静脈叢が存在する。
- 脊柱管内の硬膜外血腫は硬膜上腔に進展するため、縦長に広がる。

硬膜外腔(硬膜上腔)はどこ?解剖の要点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 位置 | 脊髄を包む硬膜の外側と、脊柱管の壁(椎体・椎間板の後面、後縦靱帯、椎弓、黄色靱帯)の間 |
| 範囲 | 上は大後頭孔から、下は仙骨裂孔まで |
| 中身 | 脂肪、硬膜外静脈叢(内椎骨静脈叢)、細い動脈、神経根 |
硬膜外静脈叢(内椎骨静脈叢)は硬膜外腔の前後に網目状に広がる静脈で、弁がなく、胸腔や腹腔の圧の影響を受けます。特発性の血腫は、弱い部分にこの静脈叢の圧の上昇が加わって起こると考えられています(Kreppel 2003)。
特発性脊椎硬膜外血腫(SSEH)の要点
特発性脊椎硬膜外血腫は、外傷がないか軽微な外傷で起こるまれな病態で、危険因子はよく分かっていない。永続的な神経障害が残る危険があるため、緊急の外科的治療が必要とされる。背部痛に続いて神経症状が出たときに疑い、危険因子がなくてもMRIなどの画像検査を行う。
誘因と臨床像
- 直接経口抗凝固薬(DOAC)に関連した特発性脊椎硬膜外血腫21例の系統的レビュー(Ghosh 2026)では、リバーロキサバンとアピキサバンが多く、急な頸部痛・背部痛のあとに急速に進む神経症状で発症していた。
- 同レビューでは、最初は急性期脳卒中に似た症状を示した例が複数あった。
- 多くは除圧術で治療され、保存的治療は4例であった。21例中18例で神経症状の回復(一部回復を含む)が報告された。
硬膜外血腫のCT所見
- CTでは急性期の場合、髄液よりも高吸収を呈する頭尾方向に伸びる紡錘状、三日月状の血腫として認める。サイズが小さい場合、矢状断などで観察しないと、見逃されやすい。
- 診断の第一選択はMRIだが(Kreppel 2003)、CTはすばやく撮れ、首の痛みに急な麻痺を伴う患者のふるい分けに役立つ(Shima 2012)。MRIの前にCTで発見されることもある。
硬膜外血腫のMRI所見
- 硬膜外の背側領域優位に、頭尾方向に長い両凸レンズ状(紡錘状)・三日月状および多房性の腫瘤を呈する。T1強調像が特に有用で、血腫は早期には脊髄と等信号、その後の時期には高信号へと変化する。T1強調像で脊髄と等信号でも、急性発症の経過と硬膜外の形から本症を疑う。
- 造影MRIで血腫に増強効果を認めることがあり、特に出血傾向のある例では活動性の出血を示し、早い対応が必要とされる(Chang 2003)。
- 硬膜外腔には脂肪があるため、硬膜外腔に液体がたまると硬膜外脂肪が持ち上げられて浮いたように見えることがある。腰椎穿刺後の小児の硬膜外液体貯留25例の検討で報告された所見である(Koch 2007)。

硬膜外血腫は上のように硬膜上腔(上の解剖の節)に沿って広がる。
動画症例:80歳代男性 外傷はなし。Th12を中心に硬膜外血腫あり。
症例 50歳代男性 急性の対麻痺(ワルファリン内服中)

引用:Radiopaedia(Spinal epidural hematoma)
頸椎のT2強調矢状断像で、脊柱管内の脊髄の背側に、上下に長く広がる紡錘形の硬膜外病変(血腫)があり、脊髄を前方へ圧排しています。報告では血腫はC3からT4まで連続しています。抗凝固療法中の患者に生じた脊髄硬膜外血腫の症例です。
鑑別と落とし穴(硬膜下血腫・穿刺後の液体貯留)
- 脊椎硬膜下血腫は、MRIで硬膜外血腫とよく似て見えることがある。硬膜外血腫と報告された例で、手術時に硬膜下血腫と判明した報告がある(Altunbi 2026)。
- 腰椎穿刺後の硬膜外液体貯留は脳脊髄液と同じ信号のことが多く、血腫より脳脊髄液の漏出として振る舞う。穿刺歴を確認する。
- DOACの使用が増えており、まれだが一刻を争う合併症として臨床医が本症を知っておくことが重要とされている。
脊髄硬膜外血腫の予後
- 613例の検討では後遺症なく回復したのは39.6%で、術前の症状が軽いほど、除圧手術が早いほど回復しやすいとされます(Kreppel 2003)。
- 一方、手術を受けた14例では、術前の麻痺が強い例や手術が遅れた例を含め13例が6か月後に良好な回復を示しました(Baeesa 2019)。
脊髄硬膜外血腫でよくある疑問(Q&A)
Q. どんな症状で始まりますか?
A. 血腫の場所に突然の強い痛みが出て、数分〜数日のうちにその高さより下の麻痺が進むのが典型です(Kreppel 2003)。頸椎の例をまとめた51例では35例に首の痛みや違和感があり、21例は最初に脳梗塞と診断されていました(Hu 2023)。
Q. 硬膜外腔と硬膜下腔・くも膜下腔の違いは?
A. 外側から硬膜外腔(硬膜の外)、硬膜下腔(硬膜とくも膜の間)、くも膜下腔(脳脊髄液がある腔)の順です。
Q. 硬膜下血腫とはどう見分けますか?
A. 脊柱管の血腫は硬膜外・硬膜下・くも膜下・脊髄内に分けられ、硬膜との位置関係で見分けます(Pierce 2018)。硬膜外血腫は硬膜の外側で硬膜嚢を外から押しますが、MRIでも区別が難しいことがあります(Braun 2007)。
Q. CTで異常がなければ否定できますか?
A. 小さい血腫はCTで見逃されやすいため、症状から疑うときはMRIで確認します。
※急な首や背中の痛みに続いて手足の力が入らない・しびれるなどの症状が出たときは、すぐに医療機関を受診してください。
あわせて読みたい:脊髄損傷のCT・MRI画像診断のポイント
あわせて読みたい:脊髄硬膜外膿瘍のMRI
参考文献
- Kreppel D, Antoniadis G, Seeling W. Spinal hematoma: a literature survey with meta-analysis of 613 patients. Neurosurg Rev. 2003;26(1):1-49. PubMed
- Ismail R, Zaghrini E, Hitti E. Spontaneous Spinal Epidural Hematoma in a Patient on Rivaroxaban: Case Report and Literature Review. J Emerg Med. 2017;53(4):536-539. PubMed
- Ghosh S, Shine A, Sundaralingam M. Spontaneous Spinal Epidural Haematoma Associated With Direct Oral Anticoagulants: A Descriptive Systematic Review. Cureus. 2026;18(7):e112438. PubMed
- Koch BL, Moosbrugger EA, Egelhoff JC. Symptomatic spinal epidural collections after lumbar puncture in children. AJNR Am J Neuroradiol. 2007;28(9):1811-6. PubMed
- Altunbi B, Ashaolu O, Rahim L, et al. Cauda Equina Syndrome Due to Spinal Subdural Hematoma Mimicking Epidural Hematoma: The “Tense Bluish Dura” Intraoperative Clue. Cureus. 2026;18(7):e113446. PubMed
- Hu Y, Su J, Cui X, et al. How to Avoid Misdiagnosing Spontaneous Cervical Spinal Epidural Hematoma as Ischemic Stroke: 3 Case Reports and Literature Review. Cerebrovasc Dis. 2023;52(5):597-606. PubMed
- すぐ役立つ救急のCT・MRI 改訂第2版 P110-111
- 画像診断 Vol.32 No.7 2012 P665-666
- Holtås S, Heiling M, Lönntoft M. Spontaneous spinal epidural hematoma: findings at MR imaging and clinical correlation. Radiology. 1996;199(2):409-13. PubMed
- Baeesa S, Jarzem P, Mansi M, et al. Spontaneous Spinal Epidural Hematoma: Correlation of Timing of Surgical Decompression and MRI Findings with Functional Neurological Outcome. World Neurosurg. 2019;122:e241-e247. PubMed
- Bakker NA, Veeger NJ, Vergeer RA, et al. Prognosis after spinal cord and cauda compression in spontaneous spinal epidural hematomas. Neurology. 2015;84(18):1894-903. PubMed
- Al-Mutair A, Bednar DA. Spinal epidural hematoma. J Am Acad Orthop Surg. 2010;18(8):494-502. PubMed
- Kondo A, Yamaguchi H, Ishida Y, et al. Spontaneous spinal epidural hematoma mimicking Guillain-Barre Syndrome. Brain Dev. 2019;41(4):392-395. PubMed
- Inaba S, Okumura H, Kobayashi A, et al. Three layers in spinal canal. J Gen Fam Med. 2023;24(5):311-312. PubMed
- Shima H, Yasuda M, Nomura M, et al. A spinal epidural hematoma with symptoms mimicking cerebral stroke. Nagoya J Med Sci. 2012;74(1-2):207-10. PubMed
- Chang FC, Lirng JF, Chen SS, et al. Contrast enhancement patterns of acute spinal epidural hematomas: a report of two cases. AJNR Am J Neuroradiol. 2003;24(3):366-9. PubMed
- Braun P, Kazmi K, Nogués-Meléndez P, et al. MRI findings in spinal subdural and epidural hematomas. Eur J Radiol. 2007;64(1):119-25. PubMed
- Pierce JL, Donahue JH, Nacey NC, et al. Spinal Hematomas: What a Radiologist Needs to Know. Radiographics. 2018;38(5):1516-1535. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
